プロローグ 生きる〜アルコール依存症と戦って〜
『生きる ~アルコール依存症と戦って~』というタイトルの文章に興味を持ち、目を向ける人は本人がアルコール依存症か、その家族のどちらかでしょう。
友人の中にアルコール依存症で苦しんでいる者がいたとしても見放せば良いのですから、心の底から心配してくれる友がもしもあなたのそばにいたのならば非常に恵まれているアルコール依存症者だと言えます。
私は2024年3月の某日で満60歳になります。いわゆる還暦というやつです。
男の厄年といわれている42歳前後からの5年間は最悪でした。人生60年のうちのおよそ33年間、アルコールを口にしない日はありませんでした。
20歳の時に受けた健康診断で高血圧症、高脂血症、アルコール性肝炎(Γ:ガンマの値が20歳にして600代)
最初は友人たちよりアルコールが強いだけのただの酒好きだと思っていましたが、時を経てアルコールが私自身を支配していき、自分ではどうにもならなくなって、アルコール専門病院に7回の入退院を繰り返し、今に至ります。
アルコールを一切、口にしなくなって12年以上の時が経ちます。
私をがんじがらめにしていたアルコールの呪縛から逃れて社会復帰。
現在では社会から抹殺された当時よりも年収も、交友関係も多くなっています。
なぜ、酒が辞められなくなったのか?
あれほど呑まずにいられなかったアルコールを12年以上もなぜ辞められているのか?
ここに記述する文章はHOW TO 本ではありません。実際に身に起きた出来事を、時に誇張し、時に削除修正しているプレ・ノンフィクションだと思ってください。
ただ、言える事は、あらゆる依存症者には回復の可能性があります。
そのためには一体、何が必要なのか? 本人はどうすべきか。 家族はどう対処すべきかは小説の中に書かせていただいております。
まずは平成5年6月6日まで時間を戻します。この時点では私はアルコール依存症者ではありませんでした。
単なるアルコール好きの大酒飲みだったと言えるでしょう。
主人公の桑名遼平は現在も生きています。明日に向かって大きな夢を抱き、常にチャレンジしています。
アルコールは辞められます。私以上にアルコールに強い人間に出会った事がないこの酒豪の私が実際にやめて社会復帰したのですから・・・
追記
この長編小説は原稿用紙443枚で書き上げられています。
ある出版大手の新人賞にエントリー致しましたが落選。後日、同出版社より紙媒体による出版のご相談を頂きました。 しかし経費がかかりすぎる事、片手間での再稿に時間が取れない事よりWeb版での公開を先行させる事にいたしました。
しかし、紙によるハードカバー化は諦めていません。 元アルコール依存症者の意地です。
著者 いしかわ もずく