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4.1 : My Dearest Brother - Epi66

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 昨夜の救出作業を終えた男達は、晃一の意識があるうちに、事情の説明を受けていた。


 それで、まだ、男達の仕事は終わっていなく、晃一が発見したもう一つの研究所を叩き潰さなければならない――という、またも状況の急変だったのだ。


 その計画もすでに組み立てられ、本部との連絡を取りながら、また、ロシアに逆戻りなのである。

 負傷している晃一でも、動くことが可能である為、またすぐに、作戦に参加しなくてはならない。


 その間、亜美を支部の一つに残して、晃一は飛び立っていけばよいのだが、一人残された亜美が晃一を心配して、また何をしでかすか判ったものではないので、本当に()()()()ではあるが、晃一の手元に亜美を置いて、作戦を進めることにしたのだ。


 晃一の目の届くところに亜美がいれば、晃一がいつでも亜美を守ることは可能だ。


 一人きりにして、何をされるか判ったものではないと心配をするよりは、本当に、()()()()ではあるが、現状では、亜美は晃一と行動を共にするのが、たぶん一番安全なのだった。


 どうやら、亜美の参加はジョンも反対ではないらしく、むしろ、本当に嫌そうに顔をしかめて亜美の話をした晃一を見ながら、口元が微かに上がっていて、苦悶(くもん)している晃一を見て、笑っているのは間違いなかった。


 亜美は、大切な兄が一緒にいてくれるのなら、別に――テロリストがどうの、(アンチ)テロリストの作戦がどうのとは、あまり気にしていない。


 なにしろ、兄の晃一なら、なにがなんでも亜美も護る為に、全力を出してくれることだろうから。


 もう、兄の晃一が()()を出したなら――世界戦争が勃発しようが、亜美は怖くもなんともない。恐怖心だって上がってこない。


 なんと言ったって、亜美の大好きな兄の晃一は、“世界で一番”の兄なのだから!


 誰よりも頭が良くて、機転が利いて、ハンサムで、優しくて、亜美の自慢する兄なのだから。

 兄の晃一がいれば、完全無敵である。


「私はね、お兄ちゃんが一緒にいてくれるなら、絶対に無敵だと思うよ。だから、全然、怖くなんてないもんね」

「亜美ぃ……。お前は、本当にいい子だな。世界で一番可愛い妹だ!」

「お兄ちゃんも、世界で一番素敵なお兄ちゃんだよ!」

「亜美ぃ……」


 そして、恥もなく、ここまで堂々と兄妹でいちゃついている二人を見て、その場の全員がシーンと無言。


 指摘するだけ疲れをもたらすのか、噂以上の超シスコン・ブラコン兄妹を目にして、げろっ……と、全員が白けているのだ。


「お前ら……信じられない」


 マークが嫌そうに、ボソッと、それをこぼしていた。


「なんで? お兄ちゃんがいれば、百人力どころか、完全無敵だよ。だって、お兄ちゃんなら、私を害するヤツがいれば、地獄の果てまで追いかけて行って、仕返ししてくれるもん」

「当然だ」


「そうだよね、お兄ちゃん」

「当然だ」


「いや、もういい……。お前ら二人は、もう、喋るな」

「いいじゃない。やーっと、お兄ちゃんに会えたのよ。それまで、どれだけ心配したと思ってるのよ……」


「亜美、心配をかけて、本当に済まなかった……」

「だったら、お兄ちゃんも、もう、なんでも内緒にして、勝手に消えるなんてダメだからね?」

「……わかってるよ」


 その返事をもらって、一応は、納得してみせる亜美だ。


「さっき、ブリーフィングだ、って言ってたけど、ご飯食べてから?」


 ギロリと、冷たい目で亜美を睨みつけたジョンは、嫌そうに一度だけ溜息(ためいき)を吐き出す。


「新たな情報によると、アラスカで発見されたテロリストのキャンプは、ほぼDecoy()に近い。ロシアから送られる情報を元に、アメリカに潜入スパイを送り出すだけの、ほぼ、仮小屋として使用されているだけのようだ。そのロシアの送り先が、Solovki(ソロフキ) Islandの一部からだと確定した」

Solovki(ソロフキ) Island、ね。因縁の場所だな」


 亜美には、その場所がどこなのか、さっぱり判らない。

 判らないことは、やっぱり、口に出してしまう性格だ。


「ソロ、フキ? ――アイランド、ってどこ?」

「知らないのか?」


 マークの質問に、亜美も素直に首を横に振る。


Solovki(ソロフキ) Island、というより、Solovki(ソロフキ) Prison(捕虜) Camp(収容所)が有名だな。ソヴィエト時代の、強制収容所だ」

「げっ……」


「反ソヴィエト政府派、無政府派、その他諸々、無実だろうとなんだろうと送り込まれた収容所だ。今は、観光用なのか博物館らしきものに変わってるらしいが、何全・何万と惨殺された場所を巡って、なんの観光になるんだがな」

「げ、ろ……」


 因縁がある場所というよりも、怨念が籠った(いわ)れ付きの場所……と説明された方が、余程、納得するというものだ。


「そこに……本当に、テロリストの隠れ家、みたいなの、あるの?」

「その場所じゃない。昔の収容所から少し隔離された一画にあった修道院跡だと、今の所は確認されている」


 なんで、修道院と強制収容所が関係してくるのか、亜美には謎である。

 その亜美の質問なのか、理解できない苦悩を見て、マークが付け足す。


「元々、Solovki(ソロフキ) Islandは、ロシア正教会Solovki(ソロフキ)修道院が集まった、経済の中心地だった。社会主義派の台頭で、木造建築の破壊、全焼、修道院にいた僧侶達の殺害で、Monastery(修道院)からPrison(捕虜) Camp(収容所)に変わった」



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Grazie per aver letto questo romanzo

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