4.1 : My Dearest Brother - 01
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「お兄ちゃん……!」
目を覚ましたら、自分の目の前に兄の晃一の姿がなくて、驚いて、寝ていた部屋から飛び出した亜美は、晃一がキッチンにいると言われて、キッチンに駆け込んで来たのだ。
明け方近く、ロシアの国境にたどりついた一行の前には、列車ではなくて、ジェット機が待ち構えていた。
なんとも用意周到なことで……と、更に感心を強めている亜美達を乗せて、すぐにジェットは飛び立っていた。
なんでも、“組織”のヨーロッパ支部がオーストリアにあるらしく、ジェットで飛び乗った一向は、オーストリアにたどり着いていた。
だが、オーストリアに到着しても、男達はジェットから降りることもなく、全員が飛行機内で待機したままだった。
まあ、用意されたジェット機の中は、プライベート用に改装されたものだから、ベッドのついた部屋もあれば、シャワー室もトイレもある。
キッチンまでもついていて、小さな会議室のようなものまで設置されている、とても便利な機体だったので、その機内に留まることに、全く文句はない亜美だった。
「亜美」
キッチンに駆け込んできた亜美を見て、晃一が少し後ろを振り返り、そして、いつもと変わらない優しい微笑みを浮かべてみせる。
その笑顔を見て、ぐしゃっと、亜美の顔がしかんでいく。
「亜美」
晃一は持っていた皿をテーブルに置いて、亜美の元に寄ってくる。すぐに、亜美を抱き寄せて、しっかりと抱きしめていく。
「お兄ちゃん……、もう、起きても、大丈夫……なの?」
「ああ。見た目ほどひどい傷じゃない」
「でも……」
「心配をかけて済まなかったな、亜美」
「お兄ちゃん……」
亜美も腕を伸ばして、ぎゅぅっと、晃一を抱きしめていく。
胸に顔を埋めていくと、涙が止まらなくなってしまうのだ。
そんな亜美をしっかりと抱き締めながら、晃一は亜美の髪の毛を優しく梳いていく。
「心配をかけて済まなかった、亜美」
「そうだよ……。すごい心配したんだからぁ……」
「本当に、済まなかった」
「お兄ちゃんが無事だから……、いいの……」
亜美を一人きりで残してしまい、心配までかけてしまい、さぞ、辛い思いをさせたことだろう。
晃一は夕食前には戻る予定だったのに、大幅にその予定が崩れて、亜美に心配をかけて、危険にまでさらした結果になってしまったのだ。
「ごめんな、亜美……」
「どうして、内緒にしてたのよ……」
晃一は亜美に責められて、ちょっと困ったような顔をする。
大事な妹に嘘をついていたのではないが、テロリストなどという、残虐で卑劣な世界があるなど、大事な大事な妹には知らせたくなかったのだ。
「――お兄ちゃん、どうして、エージェントなんて……?」
「大学の時に、呼び出しがかかってな。優秀な科学者を探している、って言うんで、まあ、話に乗ったんだ。その代わりに、研究費は惜しまなく出してくれたんで、俺の研究には大助かりだった」
「でも、ただの科学者だけじゃないじゃない」
「そうだな。なんだか、話を丸め込まれて、ズルズルとエージェントの仕事もさせられてるって、状態だな。まあ、その分、支払いはしっかりもらっているが」
「――お兄ちゃん……。私のせいで、お兄ちゃん……辛かったの?」
「そんなことあるはずないだろう」
めっと、晃一が亜美を叱るようにして、そして、すぐに優しい微笑みを浮かべていく。
「そんなこと、絶対にあるはずないだろう? 亜美、お前は俺の一番大切なエンジェルなんだから」
「お兄ちゃん……!」
ぎゅうっと、また、亜美は晃一にしっかりとしがみついていった。
兄の晃一自身だって、まだ成人もしていない年頃で、いきなり8歳の妹を引き受けることになり、おまけにその世話もすることになった。
両親が亡くなって、その保険金で生活が可能で、兄の晃一が一言もそんなことを言わないので、亜美は生活費の問題を全く心配したことがなかった。
ただ、兄と一緒で、二人で暮らしていくことになった生活に慣れて、亜美は、一切、自分の生活を心配したことがなかった。
いきなり、子連れとなって、大学に通いながら、小学生の面倒をみる羽目になった晃一には、一体、どれだけの苦労があったのだろうか。
晃一は、一切、そんなことを話さないので、晃一が辛かったのか、苦しかったのか、亜美には、全然、知らないことだった。
「亜美……、ごめんな。お前に心配をかけるつもりはなかったのに……。――そして、なにより、俺の仕事を知らせるつもりなど、なかったのにな」
「どうして?」
晃一は亜美を抱き締めながら、ちょっと悲しそうな顔をした。
テロリストに情けをかけるつもりはない。残虐非道の悪党ばかりである。そんな奴らに情けをかけるつもりは、晃一だって毛頭なかった。
だが、テロリスト排除とは言え、晃一の手を血で染めている事実は、隠しようがないのだ。
「お兄ちゃんは、お兄ちゃんだよ。世界で一番かっこいいお兄ちゃんだよ」
「亜美ぃ!」
感激のあまり、ひしっと、晃一が更に亜美に抱きついていく。
「いつまでやってるんだ。危ない兄妹だな」
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
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