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3.5:Vengeance - Epi61

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 シュッ、シュッ。

 連射された水鉄砲の水が男達を襲い掛かる……といっても、顔から、着ている背広から、ズボンが水浸しになっただけなのだが。


【……なんだ、これはっ!?】


 訳も分からない液体をかけられて、男達も、一瞬、唖然と動きが止まっていた。


 その隙を見逃さず、素早く、一瞬のうちに、クインが一番前の男の前に飛び出していた。

 相手が一瞬の動揺から回復する前に、クインの素早い蹴りが男の胸を蹴り飛ばしていた。

 そして、その反動で、片腕には水鉄砲を抱え、反対の右手で拳銃を取り上げ、トリガーを引く。


 プシュっ、プシュッ――

 後ろにいた二人の男達の眉間のど真ん中に穴が開き、そこから、鈍い錆色の血が吹き飛んでいた。

 その時間、たったの数秒である。


【――うっ……っう――】


 クインに蹴り飛ばされて後ろに吹っ飛んでいた警備の男が、胸を押さえ込みながら、ヨロヨロと、立ち上がっていく。

 だが、その手の拳に浮かぶ薄青い光。背広にも、多少、飛び散った青く光る血の跡。


「てめえか」


 クインはその目を高揚させ、見つけた獲物を捕らえた興奮か、その口端がゆっくりと上がっていた。


「一度ついたら、絶対に二度と消えない、ってな」


 全く、亜美の言う通りである。

 こうも簡単に、手間なく、目的の男がクインの目の前に飛び出してきたのだから。


 ポイッと、クインはサングラスを投げ捨てて、持っている噴射型水鉄砲も投げ捨てていた。


 シュッ――と、瞬時に、身を低めたクインが、男を下から殴り上げていた。

 ナイフで攻撃しかけようとしていた男にそんな暇など与えず、顎が砕け散る音と共に、クインの殴り上げた勢いのまま、男が床に吹っ飛ばされていた。


【――っ……ぅぐわっ……!!】


 倒れこんだ男の喉元を、片足で押し付けるようにクインが立っている。


「簡単に死なせてやると思ったら、大間違いだぜ。てめえには、デカイ借りがあるようだからな」

「さっさと始末しろ――」

「放っておけ」


 隣の男を遮って、ジョンが短く言いつけた。

 クインが投げ捨てたサングラスを床から拾い上げ、それをかけ直して、水鉄砲を噴射させる。

 シュッ――と、もう一度、噴射させた。


 さっと見る限りでは、血痕が残っていないようだったが、ほんの微かに残る、床に落ちた点々とした、カーペットに浮き上がった薄青い小さな斑点。

 ふっ、とジョンが薄く笑っていた。


「なるほど。これはいい」


 すぐに、その跡を追って、ジョンが駆け出した。





 青白い光を頼りに、暗い廊下を駆け抜けていき、廊下の隅にある横道をずれると、古びたドアがあった。

 そこにも、青白い光が光っている。


 突撃部隊の一人が、ドアノブを撃ち抜いていた。ドアを蹴り上げると、薄暗い場所は下に続く階段だけしかない。

 全員が気配を殺しながら、階段を駆け下りて行った。


「サーモセンサーに人影無し」


 手の中にある小さな器械を覗きながら走り込んでいる一人が、それを報告する。

 それは、10m四方を簡単にスキャンできる、サーモセンサー装置だ。


「サーモセンサーに反応あり。人間一人」


 目の前にあるドアも、小汚いお粗末なものだ。ドアのロックと、番号を打ち込む式になっているロックはあるが、それ以外にはなにもないようである。


 そのドアノブを撃ち落とされ、突撃隊の一人がドアを蹴破っていた。

 中に素早く転がっていく突撃隊が拳銃を構えたまま、サッと、周囲を確認するが、敵はいない。


「Clear」


 その合図と共に、全員が部屋の中に飛び込んできた。

 丸裸の水道管のような管が壁に備え付けられていて、そこに手錠で繋がれたままの男がいる。


 ジョンが水鉄砲を隣の仲間に手渡し、壁側まで駆けつけていた。

 ぐったりと意識を失っているような男の顔を上げさせると――探し人の晃一が、その場に捕らえられていた。

 首に指を押し当ててみると、未だ、脈拍は動いている。


「生きている」


 男達が近寄って来て、手錠を撃ち抜き、足を縛り付けている縄を切り落としていた。

 二人の男が、晃一の両脇から支えるようにして、晃一を抱え上げた。

 その動きで怪我に障ったのか、痛みで目が覚めたのか、晃一の瞳が少しだけ開いていた。


「無事のようだな」


 聞き慣れたその声を聞き、晃一が無意識で、ふっと、笑っていた。


「……まあ、な……」

「撤退だ」


 その命令で、無理をさせている体制だが、晃一を両方から担ぎ上げているような体勢の男達が、走り出す。

 全員がその部屋を立ち去り、ジョンが最後に動き出していた。





 男達に(かつ)がれながら集合場所にやって来た兄の晃一を目にして、亜美がその場で立ち尽くしていた。

 ずっと心配していた、探していた兄の晃一が、今、亜美の目の前にいる。


「――随分……、遅い迎え、だな……」

「派手にやられている割には、口が達者だな」

「……気絶、してる方が、楽かと思ってな……」

「いういう」


 両脇を支えられて、今にもそのまま前に倒れこみそうなのに、晃一は見栄を張っているのか、軽口を叩いている。


「サトウ、お前に面会だ」

「……面会……?」


 両脇にいる男達が、晃一を(かつ)ぎ直すようにして、少し肩を上げてみせる。

 その反動で、少しだけ顔を上げた晃一の視界の前に、金髪の女性が立っていた。


 かすれ行く視界の前で、晃一は、じっと、その女性を見ていたが、突然、その瞳が大きく見開いたのだ。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


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