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3.4:Counterattack - 04

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「あのね、後ろでちゃんと待機しているけど、警備室とかのカメラを、不能にできるかも?」

「それは却下だ」


「屋敷を見張っている人を、私の見張りにつけるなら、危ないことだってしないもの」

「却下だ」


「別に、警備室に乗り込んでいく、って言ってないわ。どこにあるのかも判らないし。でもカマをかけても、もしかしたら、電源くらいは見つけられるかも。非常電源だって、結局は、ある程度、決まった配線になってくるだろうから」

「それでも却下だ」


「シャンデリアを落としてくれたら、非常電源が作動して、サブライトが点灯して、その電源場所も判るかもしれないけどなぁ……」

「却下だ」


「でも、メインの場所には、必ずメインの電源装備が組み込まれている、ってお兄ちゃんが言ってたもの。この屋敷の構造で言ったら、本邸で電気が切れても、きっと、お兄ちゃんのいる地下室に、サブライトが接続されているはず。そこの近くに非常電源があるかもよ。――確かめる価値は、あると思うんだけどぉ」

「却下だ」


「だったら、カメラに丸写しになったまま、逃げ切れるの?」

「それも、状況次第だ」


 晃一が地下室に捕獲されている、と確信したのではない。確証したのでもない。

 だが、それを信じて疑わない亜美は、作戦に口を挟みすぎである。


 それが――困ったことに、かなり的を得ているものだから、素人を囮につぎこむことはできないのである。

 やはり、あのマッド・サイエンティストと異名を取る晃一の妹だけはあり、亜美は、電気系統にはかなりの知識があるようだった。


「じゃあ、最後の奥の手がある、って言ったら?」


 ダメ押しで、亜美がそれを口に出した。

 ジョンは冷たい眼差しを亜美に向け、


「それは?」

「赤い線を切ったら、隣室2部屋の電源も落ちました。さて、これはなんでしょう?」

「なに?」


 ジョンが顔をしかめるようにした。


「赤い線を切ったら、隣室2部屋の電源も落ちました。窓の光が一気に暗くなったから、絶対に間違いないわ」

「何が言いたい」


「だから、配線工事が()()()、なの。一体、どこの世界に、シャンデリアを叩き壊して、そのケーブルを切ったくらいで、隣室の電気まで落ちる――って言うのよ。あれだったら、絶対、配線工事がずさんなの。ロシアで大層な金持ちだろうと、配線工事のおっちゃん達まで構ってられないのよ。電気屋が来た時は、どの配線を直しているのか、しっかり、自分のその目で確かめない限り、いつでもぼったくるのが多いんだから」


「なにを――」

「そうやって、お兄ちゃんが言ってたもん。だから、適当に配線を切りまくっても、すぐに、屋敷全体の電源が落ちる可能性が高いでしょう? 絶対、配線まで気を配ってないわよ、あんな男」


 テロリストなのに、なんでシャンデリアなんて置いてあるのよ。バカ臭い。

 いかにも、ぶち壊して武器にしてください、って公表しているようなものだ。


 廊下中が、シャンデリア。

 廊下中が、花瓶だらけ。

 廊下中が、絵画だらけ。

 秘蔵のアートコレクションに火をつけて、燃えてください、って言ってるようなものだ。


 自慢し過ぎ。

 おまけに、趣味が悪過ぎ。


 絨毯(じゅうたん)だってすぐに燃える素材だし、カーテンだって燃焼物。

 火事になったら、屋敷全体、全焼間違いなし。

 消火器も消火栓もなし。


 壁に隠れパネルでもあるのかと思ったけど、そんなものも全然なくて、壁の一角をぶっ壊してみたら、ただの薄っぺらい壁一枚を派手に飾り付けてあるだけ。


「屋敷自体が、全部ずさんなの! 絶対、屋敷の手入れの仕方なんて、知らないんだから。後で工事屋を問い詰めて、遥か彼方(かなた)のシベリア湾に、コンクリート詰めにしたって、屋敷が全焼した後なら、そんなこと、全然、遅いんだから」


 最後の望みをかけた手だけに、亜美はここぞとばかりに、それを一気に喋りこんでいた。


 ジョンは手を額に押し当てるようにして、天井を振り仰いでいた。

 くっ、と亜美の隣にいるマークが吹き出した。そして、くつくつ、くつくつと、激しく肩を揺らしだす。


「――さすが、あのサトウの妹……。――ぶったまげた妹だ」


 切羽詰って、切実な亜美に対して、よく、おもしろおかしく笑えるものだ。


「なによ。こっちだって、必死なんだから」

「いやいや。あのサトウの妹だけはある――」


 くつくつと、激しく肩を揺らしながら、マークは涙を拭く真似をしてみせる。


「これで決まりのようだな。――ハント?」


 ジョンはまだ手を額に押し当てたまま、天井を仰いで何も言わない。


「それ……って、チャンスをくれる、ってこと……?」

「そうだ。アミの護衛は俺がつく。安心しろ。()()()女子高生の一人や二人を守る程度、朝メシ前だ」


 小馬鹿にされようが、最後の最後の手の内をみせて、亜美の参加も許されたとあって、はあ……と、亜美は全身で安堵しきっていたのだ。


「……よかったぁ……」

「まあ、よろしくな、()()()女子高生さんよ」

「私も……差別じゃないから。個人的な好みだし……」

「お前、力のある男を見て、惚れ直すかもよ」

「それはないよ」


 脱力しているくせに、その返答は即行だった。

 マークがちょっと嫌そうに眉を揺らす。


「だって、一番はお兄ちゃんだもん」

「ブラコンだ」

「いいの。お兄ちゃんが一番かっこいいんだから」


 亜美の兄の晃一以外、今の所、いい男なんていないのだったのだから。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


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