表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/67

1.2:Absence - Epi04

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。

 結局、兄の晃一は、昨晩、家に戻ってこなかった。連絡なしに家を空けたのは、昨日が初めてである。


 それで、連絡もない、連絡もつかない兄の不在が心配になって、学校には、一応、顔を出してみたものの、全く、勉強だって耳に入らない状態の亜美だった。


 兄の晃一は大人なのだから、一晩くらい、夜明かしすることくらいあっても不思議ではないのだろう。


 だが、亜美の兄は、いつだって、どんな時だって、絶対に亜美に連絡してくれて、自分の居場所を知らせてくるから、いい女がいて、つい、忘れていた――などというトンマな反応をするはずもない。


 それだから、余計に、なんの連絡もない兄の不在が気になって、なにかあったのだろうか。なにか事件に遭ったのだろうか――と、今日は、一日中、心配し通しのままなのだ。


「お兄ちゃん……、どうしたのよ」


 休み時間に兄の携帯に電話をしてみたが、昨夜と同じように、留守電に繋がっただけだった。


「お兄ちゃん、今、どこにいるの? 携帯の電池切れちゃった? ――もう……、すぐ連絡してね」


 そう、留守電にはメッセージを残してはみたものの、兄の晃一からの連絡が、全く入ってこなかった。


 兄の不在が気がかりで、勉強にも集中できない亜美が学校にいても、何の役にも立ちはしない。

 だからと言って、家に帰って一人でうろうろ心配していても、それも、何の役にも立ちはしない。


 はあぁ……と、やるせなさそうに亜美の口から溜め息がこぼれていた。


 連絡のつかない兄には、連絡のつけようがないし、心配して家で待っていても、兄の居場所が判明するのでもないし、今の亜美には、本当にどうしようもない状況だった。


「アーミィ、どうしたのよ。暗いよ」


 授業を終えて、放課後、帰宅する亜美の隣で、親友のキャシーが亜美の顔を覗きこむ。


「どうしたのよ。一日中、溜め息ばっかりじゃない。――あっ、もしかして、アーミィのお兄さんに彼女ができたんでしょう。それで、イジメたくてもイジメられないから、困ってるとか?」


 亜美の超ブラコンは、昔から有名なことである。


「違うよ。そんなんじゃないよ」

「だったら、なによぉ。お兄さんとケンカしたの? それで、困ってるとか?」


 だが、亜美のブラコンの話は昔から有名ではあったが、亜美が兄とケンカするという話は、今まで一度も出てきたことがない。


 それだけに、



「初兄妹ケンカ!」



でもしたのかしら?――なんて考えているキャシーには、亜美の困りどころの問題を、絶対に亜美の兄絡みなのだろうと、毎回のことながら、推測をつけていたのだ。


「ケンカなんかしないよ」

「だったら、なに? 朝からずっと暗いよ。どうしたの?」


「お兄ちゃん……、昨日、帰って来なかったから……」

「えっ? 朝帰り? あのお兄さんが?――うわぁ、やるじゃない。それで、相手はどんな人?」


 (はた)から見ても、超シスコンで通っているあの亜美の兄が朝帰りとあって、キャシーの興味も最大限に引かれてしまう。


「違うって。昨日から――連絡がつかなくて……」


 それで、心配になって、どよーんと落ち込んでしまった亜美を横に、スキャンダルな話ではなかったのだと理解して、キャシーもすぐに真顔に戻る。


「仕事は? 仕事場に連絡してみたら?」

「お兄ちゃんの携帯に連絡したから……」


「でも――もしかしたら、携帯の電池切れ、とかさ? だから、仕事場に連絡してみたら? もしかしたら、研究のし過ぎで、寝過ごしたかもしれないじゃない」

「うん……」


 そうかなぁ……と、あまり信用している様子ではなかったが、それでも、亜美は自分の携帯を取り出して、兄の仕事場のスピードダイヤルを押してみる。


 トゥルルル――と、電話はかかっているのだが、何度もかかっている電話音が、全くさっきから変わらない。



「――はい、コウイチ・サトウです。ただ今、電話にでることができません。メッセージに名前と電話番号を残してください――」



 兄の声が聞こえたので、咄嗟に話し出しかけた亜美は、義務的な仕事用の兄の留守電に繋がってしまったことをすぐに自覚する。


 落ち込んだまま、携帯をしまう亜美を見て、キャシーもちょっと心配そうに覗きこんだままだ。


「いないの?」

「でなかったよ。留守電だったし……。――お兄ちゃん、どうしたのかな……」


 あまりに普段から、親友の亜美には、亜美の兄のことばかり話をされるキャシーだ。おまけに、あきれるほどのブラコンである亜美を知っているキャシーでもある。


 それでも、あの亜美の兄が、こんな風に亜美を心配させるようなことをしたことがないし、するような人にも見えないし、そんな兄でもないことは当の昔から知っている。


 だから、キャシーも、亜美の心配がただの心配しすぎだよ――と、軽く受け流すこともできないのだった。


「お兄さん、どこに行くか、アーミィに言わなかったの?」


 ううん……と、亜美は首を振る。


「どこかに出かけるなんて、一言も言わなかったわよ。そうじゃなかったら、夕食を作って、お兄ちゃんのこと……待ってないもん」

「そうだよねぇ……」


 うーん……と、キャシーも唸ってしまう。


 亜美に連絡なしに姿を消すはずもないあの兄だけに、一晩でも帰ってこないと、一体、どこに行ったのだろうか――という亜美の心配が、キャシーにもすぐに伝わってきてしまう。


「もしかして……、やっぱり、警察とかに知らせないといけないのかな」

「それは――そう、かもしれないけど……。でも、もしかしたら、今日は家に戻ってるかもしれないじゃない?」

「うん……」


 家に戻っているのなら、昨日はゴメンな、と亜美の携帯に電話がかかってきていたことだろう。


 それだけに、キャシーの返答にも、あまり親身さが欠けていた。


「警察は、うーん……と、まだわからないけどさ、もう少し、待ってみたら?」

「事故、だったらどうするの?」

「それは……」


 そんなことを聞かれても、キャシーだって事情が判らないのだから、なんとも言いようがない。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Enkosi ngokufunda le noveli

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングタグ、クリックしていただけたら嬉しいです (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
小説家になろう 勝手にランキング

その他にも、まだまだ楽しめる小説もりだくさん。
Funtoki-ATOps-Title-Illustration
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ