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2-3:Aftermath - Epi26

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Wishing you a wonderful holiday season and all the best in the new year

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「寝ぼけてたって、なによ。毎回、毎回、違う女を抱きまくってるから、顔を知らなくても、「ああ、女の胸だ。だったら、抱こう」 なんて考えになるんじゃない」


 亜美は目を覚ましたら覚ますで、また、口うるさいこと。


 キンキンと、さっきからのうるさい叫び声と悲鳴が耳鳴りしていて、クインは面倒臭そうに、そして、あからさまに嫌そうに、長い溜息(ためいき)を吐き出していた。


「寝ぼけてたんだ。意図的じゃない」


 半分寝起きの状態で、クインの体に温かな肌が触れていて、それで、手を動かした先に、ガキだろうと――一人前の女になりつつある――その身体(からだ)が、寝ぼけた頭にでも、女の体だと告げていた。


 だから、寝ぼけたまま、触っただけなのだ。


「ひどいわ」

「うるさい。寝ぼけてただけだろうが。それに、凍死せずに済んで、感謝してないのかよ」

「それは、してるわ。まさか――生き埋めになったまま死んじゃうなんて、考えたことがなかったもの……」


 それで、昨夜の経験を思い出して、ぶるっと、亜美が身震いをした。


 真っ暗で、悲鳴を上げる暇もなく、重い雪に押し潰されて、窒息どころか、あのまま、雪崩(なだれ)の重量で骨が砕けて、押し殺されていたことだろう。


 ツーっと、亜美の涙が真っ直ぐに流れ落ちていった。


「どう……やって、助けて、くれたの?」


 いつでもどこでも口うるさくて、いい加減にうんざり辟易しているクインだったが、まだ高校生の亜美が、自分が生き埋めになって死にそうになった経験を強要されて、怖くならないはずがない。


 それで、仕方なさそうに、クインは流れ落ちていった亜美の涙の跡を、手の平でちょっと(ぬぐ)うようにした。


「運が、良かっただけかもな。生き埋めにされていても、まだ、雪の上の方だったから、掘り起こしても、見つけることができた」

「あのまま死んじゃうかと思った……。お兄ちゃんを見つけてないのに、あんな所で死ねないのにぃ……」


 泣きたくないのに、亜美の瞳には、大粒の涙が次から次に溢れ出てきてしまう。

 目が覚めて、半分死にかけたショック状態が、一気に戻ってきたようだった。


 クインが、突然、また亜美に覆いかぶさってきて、そのまま強く唇を押し当ててきたのだ。

 押さえつけられたまま、強く唇を割るようにキスされて、亜美の目がまん丸である。


 顔を少しだけ上げたクインが、ふっと、笑った。


「もしかして、ファーストキスだったのか?」

「ちょっと、いつまで触ってるのっ! 職権乱用よっ。シツケが、全然、なってないわ。いたいけな女子高生をもて遊ぶなんて、超卑劣男っ!!!」


 キーン――と、頭までぶっ飛びそうなほどの勢いで、またも、亜美が叫んでいた。


「どうせ、俺はシツケもなにもない卑劣男で、下品で、ロクデモナシ男だよ」

「下品とは言ってないじゃない。ロクデモナシ男は、大当たりだけど」

「どれも同じことだろうが」


 クインはそれだけを言って、二人を覆い被せるように巻きつけていた寝袋の裾を持ち上げ、そこからすぐに、ゴロンと出て行ったのだ。


 人肌だろうと、温かな体温が急に亜美の肌から消えて、スーッと、凍りつきそうな冷気が寝袋に入り込み、一気に、亜美は震え上がっていた。


「きゃぁ、さむいっ……!」


 即座に、亜美も自分の上にある寝袋を寄せ集めてしまう。


 この極寒のど真ん中にいるのに、クインは裸のまま、さっさと自分の着替えをし始めだしていた。


 ちらっと、その横目で見えたクインの後ろ姿に――一応、下着だけはつけているクインを見て、全裸じゃなかったことに、つい、亜美も胸を撫で下ろしてしまっていた。



(……二人とも、素っ裸じゃなかったんだ……)



 下着一枚だけつけていようが、裸で抱き合っていた事実には変わりはない。


 だが、亜美の意識を失っている間に、クインが変なことをしたのではないと判って、つい、亜美も胸を撫で下ろしてしまっていたのだった。


「着替えを持ってきたのか?」

「うん」


 クインは亜美の了承も取らず、亜美の大きな四角いバックパックの中を、勝手にあさりだす。


「本当なら、勝手に触らないでよ、って言いたいところだけど、今回はあまりに寒過ぎて仕方がないから、文句を言わないわ」


 だが、しっかり文句を言っているではないか。


 クインは皮肉げに口を曲げながら、バックパックに詰められたものを適当に取り上げ始めた。


 ポーチやら、ネットに入った雑貨やら、携帯用の救急用品やらが出てきて、おまけに、亜美は鉄製の重たいヘアドライヤーまで持ってきているのである。


 クインはそれを手にしながら、すぐに顔をしかめていた。


「ヘアドライヤー?」

「あら、女の子の必需品じゃない」


 ただの旅行をしに、アラスカくんだりやって来たのではないのだ。


 亜美の兄の晃一を探す為に、そして、テロリストに攻撃された可能性を確かめに、危険な場所に飛び込んできたのである。


 それを、この極寒地帯で、一体、いつ、ヘアドライヤーなどと、そんなくだらないものを使う気でいたのか。


「だったら、こっちはなんだ?」

「ヘアストレートナー」


 更にクインは無言。


 亜美のバックパックの中には、プラスチックのスプレーのビンやらなにやら、全くこの場に必要ないものがごっちゃりである。


 クインはすでにそこで更なる追究を諦めて、一番下に丸めてある洋服の塊らしきものを取り出した。

 アラスカに行くから、と説明されて、一応、亜美は寒さを(しの)げる用意はしてきたようだった。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Gracias por leer esta novela

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