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1.3:Premonition - Epi10

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 亜美との会話と会話の間に、会話だけ切断しているのは間違いなかった。


 そうなると、オペレーターの側に、誰かが亜美の会話を聞いていることになる。


「そこにいる人にも言ってよ。私は説教を聞く為に、わざわざ電話したんじゃない、って。どうして、国際的な会社? グループ? ――が、お兄ちゃんと関わってるの? お兄ちゃんの失踪が、あなた達に関係あるわけ?」


 予想も外れて、かなり鋭いことばかりを簡単に憶測して、聞き返してくる亜美に、オペレーターの青年は上層部からの返事を待っている。


 一筋縄でいかないガキだ――とのエージェントの苦情が上がっていたが、まさか、その相手を、オペレーターの青年までも相手にしなければならないとは。


「マッケンジーに、彼女を連れ出すよう、指示を」


 中央に座っている背広を着た男が、端的にそれを言いつけていた。


 そういう結論なら、それはそれで、オペレーターには関係ないことだった。


 それで、亜美がどう反応しようが、現場にいるのはエージェントである。

 実際に、今の亜美を扱わなければならないのは、現場に派遣されているエージェントなのだから。


「迎えに来た彼の指示に従ってくれませんか?」


「あのね、お兄ちゃんが捕らわれていて、それで、私に被害が出てくるとか、影響があるとか、安全がおびやかされるとか――って、考えてるんでしょう? じゃあ……、まだ……お兄ちゃんは生きてる……」


 すでに、大好きな兄の命が尽きてしまったのだろうか……と、亜美は眠ることもできず、ここずっと心配し通しだった。


 だが、今、自分で口に出したことを、まるで自分自身に言い聞かせるかのように、それで、その事実を噛み締めるかのように、亜美は電話を握り締めていた。


「お兄ちゃんが――死んでいたら、そうやって家まで誰かが伝えに来るもんね。“迎え” じゃなくて」


 何かの事故で兄が亡くなってしまっていたのなら、そうやって、誰かが家の前に通告しに来たはずだ。


 こんな風に、見知らぬ青年を送り付けてきて、亜美を家から連れ出そうとなどしないはずである。


「だから、お兄ちゃんが生きてる可能性が強いから、私が次に狙われるかもしれないんでしょう? だったら、狙われに行くから。(まと)にされるなら、大通りを歩いて宣伝したっていい。今、いなくなっているコウイチ・サトウの妹が兄を必死で探している――って。それ、されたくないんじゃないの?」


 また、シーンと沈黙が返ってきた。


 それを無視することにして、亜美は更に続けていく。


「私の顔写真と一緒に、私が妹だって、公表したら、マズイの? 心配している身内なら、失踪した身内の写真を張り出して、捜索願いを出すのが普通じゃない。連絡先を残しておくのは当然のことだわ。警察にだって、さっさと通報してる」


「それは、更に状況を悪化することになるので、バカな行動は避けていただきたい」


「心配している身内には、“バカな行動”、なんてことにはならないのよ。自分達の道理がきかないからって、勝手に、そっちの理屈を押し付けないでよ」


 身内がいなくなったら、警察に行方知らずの届けを出し、警察が確認するのを待って。

 それでも、なんの連絡もなかったら、写真を張り出して。


 そんなの常識で、なにも、亜美が異常な行動をしているのではない。


「今じゃ、ブーチューブがあるから、映像を流すのだって、誰にでもできるわ。「この人を見かけませんでしたか? 探しています。連絡ください」 ってね。だから、“バカな行動”呼ばわりするんじゃないわよ」


 亜美の心配をバカ呼ばわりして、勝手に、自分達の屁理屈(へりくつ)を押し付けてくるなど、常識外れもいいところではないか。


 亜美の感情が(たか)ぶり出したのを聞いて、中央に座っている上層部から、それ以上、亜美を刺激するな――と無言でサインが出され、オペレーターの青年が、ほんの微かにだけ顔をしかめてみせた。


 そして、ふう、と聞こえぬ溜息(ためいき)を吐き、亜美との会話に戻っていく。


「あなたの行動がバカな行動だ、と言ったのではありません」


「そう言ったんだから、今更、言い訳は必要ないわ。あなたもさ、そこで聞いている人も、私がね、ただ脅しているだけだと思ったら、大間違いよ。話をする気がないなら、今すぐ、ボタンを押すからね」


「それは何ですか?」

「ブーチューブに映像を流すから」


 亜美の言動が本気と取られないのなら、実行に移すまでである。


「これだけペチャクチャ余計なことを喋ってあげて、迎えの人まで家にいれてあげたんだから、そろそろ、協力体制なのか、助けをみせる誠意なのか、それを見せてよね」


「迎えを寄越したでしょう?」

「このオニイサン、何ができるの? ガキだろうと、人一人の身柄の安全なんて、どうやって守るの?」


「彼はそのように訓練された一員です。あなたの安全は、彼が必ず保証します」

「そう。腕は立つんだ。見かけに寄らず、だね」


 一向に、話のエンドが見えない会話を続けているので、電話のオペレーターも、少々、頭を悩めてしまいそうになる。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Wutrobny dźak, zo sće tutón roman čitał

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