提示された第二の手段
常奏市郊外の"裏庭の科学者協会"屋外試験場。
「これは?」
一同が目にしたのは、大砲の発射筒に斜めに別な筒を交互交互に組み合わせた大砲だった。
突貫斉が説明する。
「"大陸間弾道人間大砲"じゃ。多砲身法の原理を使っておってな、主砲身から砲弾が発射されると斜めに繋げている副砲身からも空砲が発射されて推進力を増やし、砲弾の発射エネルギーを分割しているため、砲身の強度を上げずして高い初速を得られるのじゃ」
「今はまだ試作段階とは言え、すでに原寸大の砲と砲弾ができあがっておる」
超軟式パワーアシストスーツを着込んでいた突貫斉が一通り説明を終えると、屋外試験場の倉庫から、布団乾燥機のような物をいくつかと、人一人が寝そべって入れる大きさのコクピットがついたロケットのような物を持ち出してきた。
「こっち-布団乾燥機のような物-は圧縮空気噴出器で、炸薬の代わりに砲弾を撃ち出すのに使う。それで以てこっち-ロケットのような物-が人間大砲の砲弾。こいつにクラッシュダミー人形を入れて、と」
砲弾にクラッシュダミー人形を収めてシートベルトに固定、コクピットを閉めて砲尾から主砲身に収めた。
次いで、圧縮空気噴出器を副砲身の砲尾に装着して、
「発射!」
突貫斉が雄叫びを上げる。
全ての砲身から圧縮空気の噴出音が聞こえて、人間大砲の砲弾が撃ち出された。
「「やったぞ!成功だ!!」」
突貫斉と灰人が快哉を上げる。
一行は数キロ先の着弾地点に向かった。
砲弾は地面に突き刺さっており、突貫斉はコクピットを開けてクラッシュダミー人形を取りす。
「おおっ、これは」
「国さんどうした!?」
灰人が訊いた。
「クラッシュダミー人形は無事だったわい。これで人を乗せても中の人間が発射と着弾のショックで死亡、と言うことはないことも証明されたぞ!」
「良かったなー、国さん」
「あと2,3年もすれば完成するわい」
「は?今なんと?」
突貫斉のつぶやきにマネージャーが反応した。
「これから射角やら何やらを計算し直して、砲身と圧縮空気噴出器を量産して、それぞれをつないで微調整して、試射して、それから発射してじゃろ。いくら儂らでも2,3年はかかるわい」
「それじゃ間に合わないでしょ!」
少女が叫ぶ。
それを受けた突貫斉がいじけて、
「そんなこと言われても……。全く、これだから最近の若いもんは……」
「良くもそんなことが言えるわね!!」
少女が激昂した。
そんな中、一台のコンテナ式大型トラックが一同の前に現れた。
停車したトラックの運転席から一人の老人が降りた。