メンバーの一人が出頭してきた?
人はいつか死ぬ。
どんなに金持ちでも貧乏人でも、死は平等にやってくる。
(俺は宇宙人に殺されて死ぬのか。そんなことってある?)
(こんなことなら、仕事なんて辞めて実家の埼玉に帰っとけばよかった)
(埼玉県民なら、救世主に選ばれなかったよな?)
(ってか、選ばれるのホントに都内最強の5人なのかよ?)
(宇宙人の有利になるように、俺みたいな虚弱な奴らを選ぶのでは?)
洋一は生まれつき、ひとつのことをじっくり考えることができない。
さきほどまで「逃げ出す方法」を考えようとしていたが、それは長続きしなかった。
「し、新橋さん落ち着いてください。そんなにウロウロされると、落ち着きません」
佐藤は洋一が逃げ出すのを心配しているのだろうか。
洋一の様子を注意深く見守っていた。
部屋のドアの外には例のサングラス男が見張っている。
(俺が自殺するのも心配なんだろうな)
(最上階のスイートルームってのも、実際、逃げにくい環境かも)
洋一はウロウロしながら、テレビのスイッチを付けた。
「えー、こちら、ホテルリターン前です。救世主の一人がこちらに滞在しているとの情報を得ました」
(なにっ!?もうそんな情報が出回っているのか)
洋一は驚いて、窓辺に駆け寄った。
25階。
最上階のスイートルームなので、転落防止のため、窓は大きく開かない。
下の様子はよく見えないが、外をヘリコプターが飛ぶ音がかすかに聞こえる。
(あのヘリは、マスコミなのか!?)
「救世主の一人の情報が入りました!えー、救世主は新橋洋一さん、25歳。繰り返します。新橋洋一さん、25歳」
「うわ!俺の個人情報が......」
洋一は驚いて、テレビのほうに戻る。
高校の卒業アルバムの写真が、テレビにアップで映し出される。
「ちょっ、その写真は無いだろう!」
洋一はテレビに向かってツッコミを入れた。
アルバムの写真は、運悪く、半目になった間抜け面だったのだ。
(くっそ!よりによってあの写真!しかも何年前の写真だよ)
「えー新橋さんは、卒業アルバムにこう書いています。将来の夢は、ニート、何もしないひと......だそうです。スタジオにお返しします」
(やめてくれよぉぉぉう。全国に、生き恥をさらした!)
洋一は、頭を掻きむしった。
そのとき。
佐藤のスマホが鳴った。
「はい佐藤。......うむ。うむ。なにっ!?それを早く言え。わかった」
佐藤はスマホを置くと、洋一の方に視線を向ける。
「新橋さん、朗報です。能力者の一人が出頭しました」
「出頭!?一度は逃げたけど、自分からまた現れたってことですか?」
「そうです。さきほど、朝比奈 萌絵さんという女性が交番に出頭したようです」




