戦いの開始は3日後
「えー?ほとんどのメンバーはまだ見つかってない!?」
洋一は、驚いた。
「なにやってるんすか!もう捜索が始まって数時間経ちますよね?政府の力なら簡単じゃないんですか!?」
洋一を捕まえた背の低い中年男、佐藤は首を振った。
「数人に逃げられましてねぇ」
「もしかして、サングラスに黒いスーツで行きました?」
「はぁ、行きました」
「そりゃ、逃げられるでしょう。次から宅急便の格好で行ってください」
佐藤は目を丸くする。
「なるほど!さすが、救世主さま」
洋一は呆れる。
「それくらい、誰だって思いつきますよ!」
洋一と佐藤がしゃべっているのは、都内にある「ホテルリターン」だった。
このホテルは今回、救世主のために貸し切りとされている。
ホテルの最上階、スイートルームのひとつが洋一の部屋となった。
「はぁ~~、どうしようどうしよう」
もともと、落ち着きのない洋一は、さらに落ち着きを失い、部屋を行ったり来たりしていた。
「あっ、友達からのラインに返事しなきゃ。いやっ、親に連絡するのが先か?」
「新橋さん、落ち着いてください。まぁ座って」
佐藤は、ソファに座るように洋一を促す。
「それで、俺はいつ、能力に目覚めるんですか?」
洋一はようやくソファに腰を下ろすと、不安げに佐藤を見つめる。
「救世主たちには、この錠剤を飲んでいただきます」
佐藤は、小さな小瓶を上着の内ポケットから出した。
「宇宙人が言うには、これを飲むと能力に目覚めるらしい」
「やった!じゃあ、後のメンバーが逃げ続ければ、永遠に戦いは始まらないじゃないですか」
「そう甘くないんです。戦いの開始は3日後と決められてしまいました」
「そそそんな。メンバーが集まらなかったら?」
「あなたは一人で闘うことになるでしょうなぁ」
「え~~~~~またまたぁ」
アハハハハハハ、、、、
洋一は信じたくなくて、笑い飛ばす。
だが佐藤は、眉間にシワを寄せ、神妙な顔をし続ける。
「はぁ~ん、そうなんですね~。宇宙人5人と俺一人が闘う?ふぅ~ん」
(ここから逃げる方法はないだろうか?)
洋一は頭をフル回転させていた。
どう考えたって、宇宙人と真っ向から勝負するより、逃げ続けたほうが得策じゃん。
「新橋さん、この錠剤を飲んでしまいませんか?」
佐藤は小瓶を、洋一の目の前のローテーブルに置いた。
小瓶の中には、水色のカプセル状の薬が入っている。
「いや~、まだ心の準備がね」
「早めに飲んで、超能力を操る練習をしなくては!」
「う~ん。ちょっと今、花粉症気味で体調も悪くって」
洋一はなんとか逃れようと苦しい言い訳をした。
能力に目覚めてしまったら、もう戦うしかなくなる!
なんとか先延ばしにしなくては。




