ルール
宇宙人は、「ゲーム」のルールを説明しはじめた。
「ゲームはニューヨークの中だけで行われます」
「地球人5人と我々の星の5人が超能力を使って戦います」
「闘う5人の地球人は、我々が指定したニューヨークに住む人物です」
「他の地球人には危害は加えません」
「戦いの際に壊した建物は、修復します」
「選ばれた5人はニューヨークから出てはいけません。出たらすぐに殺します」
「選ばれた地球人5人全員が死亡したら、いわゆるゲームオーバー」
「ゲームオーバー時には、地球全体を滅ぼすことにします。我々は地球人で言うところの核爆弾を持ってます。地球すべて吹き飛ぶ威力があります」
「5人の抽出はもう済んでいます」
宇宙人が独自に作った「マイルール」
だが地球側はそれをすべて、飲み込むしかなかった。
「さてはじめますか」
宇宙人は、ニッコリと笑った。
「ま、待ってください」
宇宙人との交渉はアメリカ大統領が行っていた。
「超能力とはなんです?5人はどのような基準で選んだのですか?」
「ニューヨークに住むすべての人間のなかで、超能力の値が高い5人を抽出しました。
我々はあなたがたで言うところのDNAデータや個人特性について地球上の全人類のものをすべてデータ化し把握しています」
「なに?我々のデータを。い、いつのまに」
大統領は驚く。
「それを分析、ふるいにかけました。彼らは、まだ開花していませんが、きみたち地球人が言うところの超能力をもっています。それも桁違いの力です」
「我々の選りすぐりの超能力者5人がそちらの超能力者5人と能力のみをつかって戦います。これなら互角の戦いです」
「闘うって、いったいどんな」
大統領がさらに質問を重ねる。
「能力同士の命がけの戦いです。重火器は禁止にします」
「そうだ!あなたがたには、攻撃は効かないじゃないですか!?一体どうなれば我々地球人の勝利となるのです?」
大統領は疑問をぶつけた。
「我々の星の5人も、地球人の人体を合成し、その肉体の中に入ります。人体の脳の部分にコアを入れることにします」
「コア?」
アメリカ大統領は聞き返す。
「そうです。コアが破壊されれば、我が星の5人はデータを破壊され、永遠に復旧されません。バックアップもしてません。つまり、それは死を意味します」
「地球人の能力者によって、我々5人、全員のコアが破壊されれば、地球から退散しますよ。約束します」
宇宙人は「コア」の映像を見せた。
それは球体で、青白い光を発していた。
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選ばれたニューヨーカー5人。
彼らは、宇宙人と立派に戦い抜いた。
戦いは、宇宙人が指定した日の24時になると開催され翌日の5時まで続いた。
「セントラルパーク」や「メトロポリタン美術館」など、さまざまな「戦いの場」が宇宙人により指定され、そこで戦いは繰り広げられた。
定められた戦いの場から逃げ出すことはできなかった。
宇宙人の技術力により、戦いの場の周囲には目に見えない障壁がもうけられていた。
死闘は、テレビ中継され、全世界に放映された。
どちらが勝つか。
5人のうち誰が生きここるか。
賭博が大流行し、あちこちで「賭け事」が行われた。
実は宇宙人の母国でも、ことの顛末が放映され、星に住む宇宙人たちは熱狂し、その戦いを見守っていた。
この闘いの様子は、彼らにとって、最高の娯楽だった。
宇宙人が地球を訪れた目的というのも、最高の娯楽動画を撮ることだったのだ。
いっぽう戦いを見守る地球人も、なんだかんだ楽しんでいた。
(5人全員が死んだら、地球は滅びる)
宇宙人はそう言ったが、なぜか楽観的な地球人が多かった。
「どうせ逃げる場所なんかないし。なら、楽しむしか無いんじゃね?」
そんな意見が大半だったのである。
地球滅亡というと街は荒廃し、略奪者が増えると言ったイメージだが、実際は違った。
地球を救う5人は救世主とあがめられた。
彼らの写真やグッズ、インタビュー記事は売れ、屋台がでて、毎日がお祭りだった。
宇宙人のお面など、さまざまなグッズが売れ、景気はどんどん上向いていった。
地球側の人間が一人、また一人と死亡し、最後の一人になった。
そのときはさすがの地球人も焦りだし、神に祈りを捧げたり変な宗教が流行した。
地下深くにシェルターを構える人が続出した。
結果としてニューヨーカーの救世主、最後の一人。
元、浮浪者でニートの「マイケル」が瞬間移動を使って、宇宙人を打ちのめした。
地球側が勝利したのだ。
浮浪者だったマイケルは今や、億万長者。
両脇に美女をしたがえて、ハリウッドの大邸宅に住んでいる。
彼を題材にした映画やドラマは、数え切れない。
マイケルは瞬間移動と念力の持ち主だったのだが、宇宙人が去ったあと、その能力は消え去ってしまったという。
宇宙人は負けた。
だが、宇宙人は最後に気がかりな言葉を残して地球を去った。
「めっちゃ楽しかったわ。20年後くらいにまた遊びに来ても良い?」




