意外な幕開け
■宇宙人との戦いは、
午前0時から5時のあいだに行われます。
■場所は大東京博物館が指定されました。
■5時までに死亡せず、心臓が動いていればOKとします。
■体がボロボロでも、心臓が動いていれば蘇生OK
■宇宙人のテクノロジーである「ポッド」にはいることで、
次の戦いに備え、肉体の再生を許します。
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「え~っ、そんなルールだったっけ?20年前も」
川田が、驚いたように言う。
「ポッド、ってのは、昔もあった気がする。
もしかして腰痛も治るかもな」
佳代子が、脳天気なことを言った。
桜田は、相変わらず、ソファにふんぞり返ったまま無言である。
洋一はウロウロと室内を歩き回っていた。
「おい!兄ちゃんよぅ!
ウロウロあるき回んな。落ち着かねぇだろうが」
桜田が洋一に怒鳴る。
「あっ、すすすすすみません」
洋一は怯える。
佐藤は、不安そうにみんなに声をかける。
「超能力に目覚めた方は......いますか?」
みんなは、佐藤のほうに注目したが、
すぐに目をそらした。
「えっ、誰も?」
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「こちら大東京博物館前より中継です。
いよいよ、今夜、決戦のときがやってきました
まずは、救世主たちをご紹介しますね」
テレビのリポーターは、5人の等身大のパネルを用意していた。
「いやー、若い女性には川田さんが大人気ですね!
イケメンで、優しそうと評判です」
「朝比奈萌絵さんには、すでにファンクラブができているようです」
リポーターの後ろにはハチマキを巻いた男たちが
「モエピー、生き残ってぇ」と叫んでいる。
「えー、映像は、ドローンにより撮影いたします。
熾烈な戦いが予想されるので、
生身の人間は入らないほうが良いとのことです」
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恐ろしいことに、
洋一たち救世主軍団の誰一人として
能力に目覚めていなかった。
「ちょぃ、ちょぃ、ヤバすぎねーか」
川田がみんなを集める。
「ーッ、、、ハァッ!」
川田が謎の気合を入れ、
両手を前に突き出してみたが、何も起きない。
「まじやばいな」
「錠剤を飲むのがおそすぎたんでしょうか」
「とっ、とりあえず、今夜は逃げまくりませんか?」
洋一が提案する。
「へっ、逃げるのならアタシは得意だわ」
佳代子はそう言い放った。
そんな状態なのに戦いは始まってしまった。
時計は0時を過ぎたのだ。
救世主の5人は、おそろいのコスチュームを着せられていた。
胸の部分に謎のゆるキャラの描かれたTシャツにジャージだった。
腕や背中には、企業のロゴマークも書かれている。
「やっ、やつらが宇宙人か?」
洋一が、前方を指差す。
宇宙人たちは、人間の姿をしてゆったりとした足取りでやってきた。
「宇宙人、なんだか、イケメンじゃねえか」
川田がライバル心を燃やす。
宇宙人の5人は、金髪、白人のイケメン。
それに黒人。
小さな女の子の子ども。
グラマーなアジア系女性。
それに、仙人のような老人の5人だった。
「まず、自己紹介をさせてくれ!」
白人イケメンの宇宙人が言う。
「僕のことはアダムと呼んでくれ」
次に黒人が自己紹介しようとしたときのことだった。
いつの間に、宇宙人の背後に忍び寄ったのか。
桜田が黒人の宇宙人の首をかっ切ったのだ。
「ぐっぐふぅ」
黒人は喉を押さえて喘ぐ。
「戦いはもう始まってんだろ?」
桜田は、血の付いたナイフを振り回す。
「俺には超能力なんて要らねえ」
そういいながら、黒人をめった刺しにし、
首を切り落とした。
宇宙人も地球人もその様子を
思わず無言で見入っていた。




