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東京タイクーン  作者: ゴルゴンゾーラ
11/18

萌絵と洋一

「救世主どうし、チームプレイが必要となってきます。まずは新橋さんと朝比奈さん。お互い、親睦を深めてください」


佐藤は、萌絵を、洋一のいるスイートルームに連れてきた。

「はじめまして。朝比奈萌絵といいます。物流倉庫で働いています」

萌絵は、洋一に向かって頭を下げた。


洋一は萌絵を見てかなりの衝撃を受けた。

(えっ!なに!?めっちゃ可愛い子、来たーっ)


「えっと、新橋洋一っていいます!洋一って呼んでください。電気屋の店員です」

洋一はドキドキしていた。


めちゃくちゃ、可愛い子じゃん!

目が大きくて髪の毛がサラサラで。

芸能人みたいだった。

こんな可愛い子と救世主同士として、一緒に戦うことになるのかぁ。


フッ

いい冥土の土産ができたってもんだな。


洋一は宇宙人に勝てると微塵も思っていなかった。

自分が選ばれたのは、都内「最弱男」だからに違いない。

宇宙人は自分たちに有利にするために、最弱男を選んだのだろうと考えていた。


「それで、佐藤さん。ほかの救世主は?」

萌絵が佐藤に聞く。

「一人は、もうすぐこのホテルに到着するはずです。内密なのですが、あなたがたには、話したほうがいいでしょう。もうすぐ到着する一人は、犯罪者です」


「えぇえ!?」

洋一が飛び上がる。

「人殺しですか!」

「新橋さん、殺人者だとはひとことも言ってない。

彼は、恐喝罪で捕まって刑務所にいた人間です」

「き、恐喝罪?」


「罪人なんですね。それで、わたしたちに用心するようにと?」

萌絵が落ち着いた声で言う。

「話が早い。そういうことです」

佐藤は萌絵のほうを感心したように見つめる。


「あとは超能力についても教えてほしいんですけど。

一体超能力ってなんなんですか?」

萌絵が尋ねると佐藤は、洋一にした時と同じ説明をした。


「この錠剤を飲めば、能力に目覚めます」


萌絵は錠剤の瓶をじっと見つめていた。

その目は不安そうに見えた。


そうだよな。

こんなの怖くて飲めないよな。

洋一は、萌絵の様子を見て「うんうん」と内心、頷いていた。


しかし


萌絵は瓶から一粒、錠剤を取り出すと、ぐいっと飲み込んだ。


(水無しで!?)


いやいや、驚くのはそこじゃねーわ。

「朝比奈さん、いま薬を飲んだの!?」


萌絵はキョトンとした顔で洋一を見返した。


「えっ?だっていずれ飲まなきゃいけないものでしょう?」

萌絵は、不思議そうに洋一の顔をみている。


「あっ、そうだ。私のことも萌絵って呼んでくれて大丈夫です」

萌絵は洋一に向かって、にっこり微笑んだ。


どうやら朝比奈萌絵は、可愛い顔をして度胸の据わった女のようだった。


----------------------


「それで、私はもう超能力者なんでしょうか」

萌絵は自分の両手を眺めながら言った。

「まったく、実感が無いのですが」


「アメリカからの情報によると、能力の目覚めには個人差があるそうです」


「戦いは3日後とおっしゃいましたよね?間に合うのかな」

萌絵は不安そうだった。


「お、俺も飲みます」

萌絵が飲んだのに、自分だけ逃げ続けるわけにはいかない。

萌絵が来たことで、急に洋一も戦いに前向きになり始めていた。

単純な男である。


洋一も、錠剤入りの瓶に手を伸ばす。

「薬飲みこむの苦手なんですよねー。

なんか、甘いジュースとか?ありませんかね」


傭兵の一人が販売機でオレンジジュースを買ってきてくれた。


(俺もとうとう、超能力者に。

どうしよう、スプーン曲げしかできなかったら)


洋一は錠剤を一粒口に入れると、オレンジジュースで飲み込んだ。

「ゲホッ、ゴホッ」

オレンジジュースが変なところに入りむせたが、なんとか錠剤を飲み込んだ。

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