◆ 百从名鑑 【登場人物紹介】 第四頁 吠人 篇 ◆
本項「百从名鑑」は、『百从のエデン』に登場するキャラクターのプロフィールをまとめた人名録です。
「獣人」と呼称する本作の登場人物は、地球上に暮らす動物をモチーフとしております。
描写から想像していただければ何よりですが、拙文ではその特徴や魅力を十分に形容し尽くせません。
簡単な紹介とともにモチーフとした動物を記載しますので、予備知識として必要な読者さまはこちらをご覧になった上で本編へお進みください。
紹介文には物語の展開や重要な部分が含まれておりますので、ご不要の方は本項を飛ばして本編をお読みくだされば幸いです。
※モチーフになった動物の画像の掲載されているウィキペディア(英文)のURLを併記しますので、よろしければそちらもご参照ください。
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エデン(Eden):
このお話の主人公である少年。
記憶を持たない状態で目覚め、あてどもなくさまよい歩いていたところを彪人のアシュヴァルに拾われる。
彼のもとで生き方や人としての強さを学び、よく似た姿の持ち主である少女ローカと共に、自身の出自と由来、失われた過去と記憶を取り戻すための旅に出た。
彪人の里を発って幾多の種の暮らす自由市場へとたどり着いたのちは、自らを呪われた血統の持ち主だと語る蹄人の男女ラバンとラヘルのもとに身を寄せる。
ローカと共に自由市場で暮らすうち、世界各地を旅して回る行商人である嘴人のマフタやホカホカ、学ぶ機会を持たない子供たちに学問を教える先生、そして自身やローカとよく似た姿形を有した少女シオンと出会った。
こつぜんと姿を消したローカを連れ戻すため、自由市場を離れてはるか北の大地にあるという人類発祥の地「大伽藍」を目指す旅に出たのち、流浪の楽団シェアスールとの邂逅を果たす。
楽士であり歌姫でもあるマグメルを道連れに加え、「都」と呼ばれる東の大集落を次の目的地に定めて街道を進む。
外見はこの世界に暮らす他の人と大きく異なっており、身体全体を覆う被毛や鋭い牙や爪、角といった器官も持ち合わせていない。
楽団シェアスールの団長であるインボルクから「間人」の呼称を提案されて以降は、稀有の種である自身らをその名で呼んでいる。
温厚な性格で他者への共感性に優れる半面、突然思い立ったように行動する向こう見ずな面も持ち合わせている。
戦うための力や手にした剣を扱う技を持たないが、目の前で誰かが傷つくところを見過ごせずにあらん限りの勇気を振り絞ることも。
彪人の女たちに見立ててもらった旅装に、彪人の里長ラジャンから預かった剣を携える。
伸びた髪はローカの残した紐細工で結わえている。
モチーフになった生物:ヒト
https://en.wikipedia.org/wiki/Human
ローカ(Loka):
このお話のもう一人の主人公である少女。
先生の蔵書の一冊から何らかの情報を知り得てしまい、突然エデンの前から姿を消した。
シオン(Sion):
自由市場の準市民区に暮らしていた学者見習いの少女。
エデンが出会った自身によく似た姿を持つ二人目の少女で、姿を消してしまったローカを追う旅に同行を申し出た。
師であり育ての親でもある先生の意志を継ぎ、世界と人類発祥の地である大伽藍を自らの目で見ることを望んでいる。
冷静で理知的な性格に見えるが、短気で子供っぽい部分も目立つ。
本人は努めて理論家であろうと心掛けてはいるものの、本心を隠し切れずに感情を表に出してしまう場面も少なくない。
幼い頃から学問とともに先生から教えを受けていたため、弓矢の扱いにも長ける。
桂皮や丁子を思わせる褐色の肌と漆黒の髪が特徴。
長く量の多い髪を幾つかの房に分けてくくっており、弓を射る際は動きやすいように後頭部でまとめる。
身を包むのは踝ほども丈のあるだぼっとした長衣と帽子で、意匠は先生とおそろいで色は紫色。
極度に視力が悪いため、視力を矯正するために異種殻を加工して作られた眼鏡を掛けている。
ローカ同様に異形の力の持ち主であり、音の波で構成された空間へと身を置くことで、人や物が持つ固有の音をたどることが可能。
使用時の体力の消耗の度合いがローカよりも激しいのが難点。
マグメル(Magmell):
大陸中を旅して回る吟遊楽団シェアスールの楽士である少女。
エデンの出会った自身によく似た姿を持った三人目の少女で、天真爛漫で溌溂奔放な性格の持ち主。
物怖じしない性格で誰とでもすぐに打ち解ける反面、甘えたがりで我がまま、空気を読まずに何でも口にしてしまう部分もある。
蹄人たちの暮らす村では音楽を通じて打ち解け合った友人との別離を経験したのちは楽団を離れ、「なんとなく」という理由でローカを探す旅に同行する。
毛先の跳ねた短めの髪、色は橙に近い明るい茶色、団栗のようなつり目と八重歯が特徴。
体格は小柄で細身、肩紐付きの半袴をはき、丈の短い筒状の上衣に上着を重ねる。
楽士としては縦笛を担当する他、歌においてもその才覚を遺憾なく発揮する。
軽業師のような身軽さと、二本の短剣を器用に扱う技を有し、異種との戦いでは優れた戦士としての一面も見せた。
幼い頃から他者の過去や心象に触れる異形の力を持つが、ローカやシオンのように自身の意志で操ることはできずにいる。
ユクセル(Yuksel):
優れた戦闘能力をもって異種を討つ狩人であり、幼なじみである四人組の筆頭的存在。
獣人の中でも、吠人と呼ばれる種に属する。
大陸中央部に広がる草原に移動集落を構え、仲間たちと共に暮らしている。
直情的で思ったらすぐに実行に移せる行動力を持つが、短気で頭に血が上りやすいのが欠点でもある。
兄妹同然に育てられたカナンに対して特別な感情を抱いているが、本人はその思いをうまく言葉にできずにいる。
細長く突き出した鼻面と黒く隈取られた顎の上下から伸びる幾本もの尖った牙、直立した三角形の耳と鋭くつり上がった黄金の瞳が特徴。
四人組の中では最も小柄な体格の持ち主で、短く切り詰めた手槍を左右の手で自在に扱い、隙なく攻め立てる戦い方を得意とする。
カナンと同じ意匠の瑠璃色の衣服を身にまとうが、その着こなしは極めて雑。
モチーフになった生物:タイリクオオカミ
https://en.wikipedia.org/wiki/Wolf
ジェスール(Cesur):
優れた戦闘能力をもって異種を討つ狩人であり、幼なじみである四人組の兄貴分。
獣人の中でも、吠人と呼ばれる種に属する。
四人の中では最年長だが、一歩引いて筆頭の役目はユクセルに譲っている。
豪放磊落を絵に描いた性格で、些末な問題ならば笑い飛ばすことのできる度量を持つ。
面倒見がよくユクセルや集落の子供たちを本当の弟のようにかわいがっているが、実の妹のアセナにだけは頭が上がらない一面を持つ。
四人の中では最も大柄な体格を有し、俊敏さを売りにする吠人でありながら剛腕と一対の手斧をもって相手をねじ伏せる戦い方を得意とする。
皆とそろいの瑠璃色の衣服を、右肩をはだける形で身に着けている。
モチーフになった生物:タイリクオオカミ
アルヴィン(Alvin):
優れた戦闘能力をもって異種を討つ狩人であり、ユクセルの悪友的存在。
獣人の中でも、吠人と呼ばれる種に属する。
軽薄で皮肉屋、常に厭世的な口ぶりをしているが、その実ユクセルに負けず劣らず血気にはりやすい側面を有する。
大人子供問わず女性に甘く、男に興味はないとは本人の談だが、幼なじみの四人でいることを何より好む。
類い稀な射手であり、槍や剣よりも弓の扱いに長ける。
四人の中では最も細身であり、長袖の衣服をきっちりと着こなす。
モチーフになった生物:タイリクオオカミ
ルスラーン(Ruslan):
優れた戦闘能力をもって異種を討つ狩人であり、幼なじみである四人組の中では常にいさめ役を務める。
獣人の中でも、吠人と呼ばれる種に属する。
武人気質で寡黙な性格だが、時折放つ一言は真実を突くことも。
草原の出身ではなく、どこか遠くからやって来たらしいが過去を知る者は少ない。
灰褐色の被毛に体表を覆われた他の吠人たちと異なり、赤みの強い毛色が特徴で、顔も幾分か細面。
特殊な形状の曲刀を手に、必殺の斬撃を放つ戦方を得意とする。
ゆったりとした広がりのある袖に懐手をするのが癖。
煙管を手にしているが煙草は吸わない。
モチーフになった生物:ニホンオオカミ
https://en.wikipedia.org/wiki/Japanese_wolf
カナン(Canaan):
優れた戦闘能力をもって異種を討つ狩人。
大陸中央部に広がる草原に移動集落を構える吠人たちと共に暮らしているが、その姿はエデンら間人によく似る。
長イルハンによって育てられた拾い子でありながら、他の子供たちと同様に吠人として育てられ、次期の長と目されるほどの成長を見せた。
吠人であることに誇りを持ってはいるものの、常に自身の存在に懊悩している部分もある。
冷静さと激しさを兼ね備えた根っからの戦士気質。
吠人の戦士である「狩人」が得意とする槍の扱いに長け、素早い身のこなしから繰り出される一撃は異種の外皮を貫くほど。
腰辺りで尻尾のようにくくった灰黒の髪は膝裏まで伸びる。
立襟で左側に合わせのある瑠璃色の衣装を身にまとい、動きやすさを重視するため筒状の下衣の片側には深い切れ込みが入っている。
イルハン(Ilhan):
草原に暮らす吠人たちの長。
獣人の中でも、吠人と呼ばれる種に属する。
現役時代は槍を手に千里を駆けると謳われた異種狩りの英雄であったが、一線を退いてからはカナンとユクセルにすべてを委ね自身は半隠居している。
モチーフになった生物:タイリクオオカミ
アセナ(Asena):
吠人の少女でジェスールの妹。
獣人の中でも、吠人と呼ばれる種に属する。
幼い頃からユクセルを好いており、カナンに対しては複雑な感情を募らせている。
気立てもよく料理も得意だが、嫉妬深いのが玉に瑕。
モチーフになった生物:タイリクオオカミ
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