◆ 百从名鑑 【登場人物紹介】 第三頁 吟遊楽団 篇 ◆
本項「百从名鑑」は、『百从のエデン』に登場するキャラクターのプロフィールをまとめた人名録です。
「獣人」と呼称する本作の登場人物は、地球上に暮らす動物をモチーフとしております。
描写から想像していただければ何よりですが、拙文ではその特徴や魅力を十分に形容し尽くせません。
簡単な紹介とともにモチーフとした動物を記載しますので、予備知識として必要な読者さまはこちらをご覧になった上で本編へお進みください。
紹介文には物語の展開や重要な部分が含まれておりますので、ご不要の方は本項を飛ばして本編をお読みくだされば幸いです。
※モチーフになった動物の画像の掲載されているウィキペディア(英文)のURLを併記しますので、よろしければそちらもご参照ください。
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エデン(Eden):
このお話の主人公。
記憶を持たない状態で目覚め、あてどもなくさまよい歩いていたところを彪人のアシュヴァルに拾われる。
彼の元で生き方や人としての強さを学び、自身の出自と由来、失われた過去と記憶を取り戻すための旅に出た。
彪人の里を発って自由市場へとたどり着いたのちは、蹄人の男女ラバンとラヘルの元に身を寄せる。
ローカと共に自由市場で暮らすうち、行商人である嘴人のマフタやホカホカ、学ぶ機会を持たない子供たちに学問を教える「先生」、そして自身やローカとよく似た姿形を持つ少女シオンとの出会いを果たした。
姿を消したローカを連れ戻すため、自由市場を離れてはるか北の大地を目指す。
外見はこの世界に暮らす他の人と大きく異なっており、身体全体を覆う被毛や鋭い牙や爪、角といった器官も持ち合わせていない。
温厚な性格で他者への共感性に優れる半面、突然思い立ったように行動する向こう見ずな面も持ち合わせている。
戦うための力や手にした剣を扱う技を持たないが、目の前で誰かが傷つくところを見過ごせずに勇気を振り絞ることも。
彪人の女たちに見立ててもらった旅装に、彪人の里長ラジャンから預かった剣を携える。
伸びた髪をローカの残した紐細工で結んでいる。
モチーフとした動物:ヒト
https://en.wikipedia.org/wiki/Human
ローカ(Loka):
このお話のもう一人の主人公。
先生の蔵書の一冊から何らかの情報を知り、突然エデンの前から姿を消した。
シオン(Sion):
自由市場の準市民区に暮らしていた学者見習いの少女。
エデンが出会った自身によく似た姿を持つ二人目の少女で、姿を消したローカを追う旅に同行する。
冷静で理知的な性格に見えるが、短気で子供っぽい部分も目立つ。
本人は努めて理論家であろうと心掛けてはいるものの、本心を隠し切れずに感情を表に出してしまう場面も少なくない。
幼い頃から学問とともに先生から教えを受けていたため、弓矢の扱いにも長ける。
桂皮や丁子を思わせる褐色の肌と漆黒の髪が特徴。
長く量の多い髪を幾つかの房に分けてくくっており、弓を射る際は動きやすいように後頭部でまとめる。
身を包むのは踝ほども丈のあるだぼっとした長衣と帽子で、意匠は先生とおそろいで色は紫色。
極度に目が悪いため、視力を矯正するために異種殻を加工して作られた眼鏡を掛けている。
ローカ同様に異形の力の持ち主であり、音の波で構成された空間へと身を置くことで、人や物が持つ固有の音をたどることが可能。
使用時の体力の消耗の度合いがローカよりも激しいのが難点。
インボルク(Imborc):
歌や演奏を披露しながら大陸中を旅する吟遊楽団「シェアスール」の団長。
蹄人の中でも、桛人と呼ばれる種に属する。
軽佻浮薄を絵に描いた性格の持ち主で、衝動的な行動で団員たちを困らせることも多い。
よく回る舌の持ち主で、ひとたび興が乗ってしゃべり始めるとなかなか止まらない。
所々に白い斑模様の入った赤褐色の被毛と、天に向かって枝別れするように伸びる立派な枝角が特徴。
首元には胸飾りを巻き、袖なし胴衣の上に肩掛け代わりに布を引っ掛けるなど、着こなしは洒脱。
楽器なら何でもござれとは本人の弁だが、中でも手風琴と風笛を得意とする。
モチーフとした動物:アカシカ
https://en.wikipedia.org/wiki/Red_deer
サムハイン(Samhain):
大陸中を旅する吟遊楽団シェアスールの団員であり料理頭。
蹄人の中でも、垈人と呼ばれる種に属する。
裏表のない性格の持ち主であり、世話好きのお節介焼き。
何かと口うるさく小言の多いことから団長であるインボルクと衝突する機会は多いものの、真の部分では誰よりも彼のことを団長として認めている。
食事と酒とをこよなく愛し、団員たちの食事作りを一手に引き受けている。
鼻孔の露出した平坦な鼻先と、下顎から上方に向かって伸びる長い牙、全身を覆う灰褐色の剛毛が特徴。
帯でくくった腰布の余りの片方は肩に掛け、金の留め具を使って固定、頭には鍔なしの帽子。
楽士としては提琴を担当する。
モチーフとした動物:イノシシ
https://en.wikipedia.org/wiki/Central_European_boar
ベルテイン(Beitane):
大陸中を旅する吟遊楽団シェアスールの団員であり車夫。
蹄人の中でも、角人と呼ばれる種に属する。
無口で言葉を発する機会は少ないが、気は優しく誰よりも仲間思い。
怪力無双の偉丈夫であり、団員たちのすみかでもある箱車を牽く車夫としての役目もこなす。
赤みの強い茶褐色の被毛が全身を覆い、中でも頭部の毛は両目を隠すほど毛足が長いため、その表情をうかがい知ることは難しい。
まとうのは腰布一枚だが、大ぶりな金の首飾りを身に着けている。
楽士としては片面太鼓を担当する。
モチーフとした動物:ハイランドキャトル
https://en.wikipedia.org/wiki/Highland_cattle
ルグナサート(Lughnasadh):
大陸中を旅する吟遊楽団シェアスールの団員。
嘴人の中でも、虚人と呼ばれる種に属する。
紳士然とした振る舞いを崩さず、誰にでも敬語を使って話す礼儀正しさを有する。
生来的に視力を失っており、飛行能力を持つ嘴人でありながら空を飛ぶことはない。
濡れたような光沢を放つ青みを帯びた黒色の羽毛と、同じ色の嘴が特徴。
他の団員たちと同じ格子模様の一枚布を長衣のように身にまとう。
弦楽器を得意とし、主に十五弦琴や竪琴を曲調に応じて弾き分ける他、楽団の演奏する楽曲の作曲をこなす。
モチーフとした動物:ワタリガラス
https://en.wikipedia.org/wiki/Common_raven
マグメル(Magmell):
大陸中を旅する吟遊楽団シェアスールの団員。
エデンの出会う、自身によく似た姿を持つ三人目の少女。
天真爛漫で溌溂奔放、物怖じしない性格で誰とでもすぐに打ち解ける。
甘えたがりで我がまま、空気を読まずに何でも口にしてしまう部分もある。
毛先の跳ねた短めの髪、色は橙に近い明るい茶色。
ぱっちりとした大きなつり目と八重歯が特徴。
肩紐付きの半袴を穿き、丈の短い筒状の上衣に袖なしの上着を重ねる。
団員たちとそろいの布は飾り布として腰に巻く。
楽士としては錻笛を担当する。
アリマ(Alima):
山間に位置する蹄人たちの村に暮らす少女。
蹄人の中でも、岨人と呼ばれる種に属する。
村で一軒の酒場を兼ねた宿屋である「林檎亭」の看板娘であり給仕。
純粋で快活、気配り上手ぶりを存分に発揮して宿の仕事をこなしているが、村の外の世界に憧れを抱く一面も。
白色の被毛は全体的に毛足が短く、頭部に生える角は三日月状に湾曲している。
身に着けるのは衣嚢付きの前掛け。
モチーフとした動物:ヤギ
https://en.wikipedia.org/wiki/Goat
宿屋の主人:
林檎亭の主人でツェレンの父親。
蹄人の中でも、岨人と呼ばれる種に属する。
寡黙だが娘同様に気配りのできる人物。
好きなものは珈琲で、その入れる一杯を目当てに林檎亭を訪れる客も。
角はアリマよりも太く、顎下の被毛は髭のように長く伸びる。
モチーフとした動物:ヤギ
ツェレン(Tseleng):
山間に位置する蹄人たちの村に暮らす少女。
蹄人の中でも、穭人と呼ばれる種に属する。
幼い頃からのアリマの友人であり、繁忙時のみ給仕として林檎亭の仕事を手伝っている。
アリマに比べて穏やかな性格で、のんびり屋。
長く柔らかな巻き毛が密生するように頭部から体表までを覆い、渦巻き状に伸びる角を持つ。
モチーフとした動物:ヒツジ
https://en.wikipedia.org/wiki/Sheep
婆様:
山間に位置する蹄人の村の頭役を務める老女。
蹄人の中でも、駘人と呼ばれる種に属する。
老齢のため背中は丸まり、艶を失った被毛は所々が抜け落ちてはいるが、その足取りは矍鑠としている。
小柄な体躯に身の丈以上の杖を携えている。
モチーフとした動物:アジアノロバ
https://en.wikipedia.org/wiki/Onager
斑人の戦士たち:
婆様からの依頼を受けて村に駆け付けた三人の戦士たち。
獣人の中でも、斑人と呼ばれる種に属する。
黄と白の地に黒色の模様は彪人によく似ているが、その身に刻まれているのは稲妻を思わせる縞模様ではなく花弁に似た模様。
身体つきも彪人たちよりもやや小柄で、細身な印象を受ける。
大地に足を着けた戦いを得意とする彪人と異なり、空中からの奇襲に長ける。
異種狩りの中でも、彪人、斑人、鬣人の三種はとりわけ優れた戦士として知られている。
モチーフとした動物:ヒョウ
https://en.wikipedia.org/wiki/Leopard
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