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それでも彼女に踏まれたい。  作者: おしぼり
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最終回「最終決戦、目覚めの時」その1

 ヘリから下を見下ろすと、そこには巨大な黒い生き物がいた。

 樹齢何百年の大木よりも遥かに太い四肢を順番に動かし、長い7本の首を揺らしながら少しずつ前に進んでいる。

 その先には街が見えるが、そこにたどり着くにはもう少し時間がかかりそうだ。

 仮称『オロチ』と名付けられたその怪物の進行速度が遅いのは、それを囲む白い集団によるものだろう。

 特殊部隊『アイボリー』の隊員たちは、上空からでも目立つ真っ白な服を泥で汚しながら銃火器を斉射する。

 オロチに対してそれは有効打にはなってはいないようだが、オロチもそれが鬱陶しいようであまり前に進めていない。

 戦闘ヘリや戦車を口から吐き出す火炎によって焼き尽くしたオロチだが、細かい人間に走り回られると対処に困っている様子だった。


「本当にここからでいいんですか?」

「あぁ大丈夫だ」


 アイボリーの所有する白い輸送ヘリはオロチの頭上を旋回する。

 頭上と言っても7つ頭があるわけだが、ようはその辺ということだ。

 オロチは自身の周りをチョロチョロと走り回るアイボリー隊員に気を取られこちらにはまだ気づいていないようだ。

 レッドナックルは横に立っているアイボリー隊員に親指を立て合図を送ると、その隊員はインカムでヘリのパイロットとやりとりをしている。


「大丈夫です。行けますよ」

「OK、じゃあ行こうか」


 レッドナックルがこちらを見る。彼の後ろには私を含め4人の彼の仲間がスタンバッている。

 私たちはお互いに顔を見合わせるとコクンと頷いた。

 アイボリー隊員が片手を上げる。

 そして「3、2、1、GO」の合図で腕を下ろすと勢いよくレッドナックルがヘリから飛び出していった。

 それに続いて、私たち4人も順番に飛び出していく。

 落下傘はない。

 でも大丈夫。

 それぞれオロチの7本のうち5本の頭に蹴りや拳を打ち込んでいく。

 そして身をひるがえし、地面に着地しこう叫んだ。


「「「「「エターナルファイブ、参上」」」」」


 私たちの後ろで爆発が起きた気がしたが、きっと気のせいだろう。

 

「エターナルファイブが来てくれた。後退しながら援護射撃!」


 地上にいたアイボリー隊員たちが銃を構えながら下がっていく。

 私たちはそれとは逆に、オロチ目掛けて走り出す。

 無事だった首の一つがこちらに顔を近づける。

 しかしその横っ面にブルーソバットの強力な蹴りが突き刺さり吹き飛ぶ。

 さらにもう一本近づいてきた首にはイエローグラップが下をすり抜け顔と首の付け根を抱えると状態をそらし顔を地面へと叩きつける。

 私は先ほど攻撃して地面に寝ている頭に向かって飛び上がると再度踏みつけるがあまり効いている感触はなかった。

 グリーンブレイクは頭をすり抜け胴体へ。

 レッドもジャンプし首の上に乗ると、首の上を駆け抜け胴体へと向かう。

 そしてレッド、グリーンが胴体の上と下から拳を放つ。

 それにより7つの頭が悲鳴を上げる。

 

「効いている。効いてるぞ!」

 

 アイボリー隊員の誰かがそう言った気がした。

 しかしオロチは暴れだし、グリーンは慌てて下から脱出する。

 レッドはバランスを崩し、飛ばされるがブルーとイエローが落下点まで走りキャッチした。

 だが7つの頭が首をくねらせ炎を撒き散らす。

 戦車を溶かす炎は、さすがにエターナルファイブの姿でも無事ではすまない。

 走りながら何とか避けるが、何の法則性もなく無茶苦茶に振り回される首が横薙ぎに飛んできて吹き飛ばされる。

 

「くっ、、、」


 地面に叩きつけられた私は、何とか起き上がろうとするがその瞬間また全身に激痛が走り意識が飛びそうになる。

 遠くではオロチがまだ火を吹きながら暴れている。

 そして少し離れた場所にレッドが倒れているのが見えた。

 レッドナックルこと赤井正義はまだ昨日の傷が完全には癒えていないのだ。

 もしかしたら今のを避けきれずまともにくらって意識を失ってしまったのかもしれない。

 ここまでなのか。

 私たちの力はこうも及ばないのか。

 そう思い、拳を握り締め地面を叩いた。

 その時どこからか声が聞こえた。

 それは女性の声だった。


「立ち上がるのです。彼を救えるのはアナタしかいません」

「彼? いったいどういうこと?」


 頭上を見上げると、宙に浮く7人の光り輝く人の姿があった。


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