第三話「転職!? ブラックカンパニー」その1
見覚えのある薄暗い部屋。
硬いベッドの上に今日は座らされている。
エターナルファイブにやられた俺はザーベーイにまた連れてこられたのだ。
体はいつの間にか人間の卯立の姿に戻っていた。
部屋の中には俺以外にザーベーイとロージュがいる。
怪人であるシャーチックの連中は人間ほど顔の筋肉が動かないので、いまいち表情から感情が読み取れないが声のトーンで何となく予想する。
今、目の前にいるロージュは声のトーンが少し高いので興奮しているように感じた。
「これは面白いな」
「何が面白いんだ? ロージュ」
俺の後ろで立っているザーベーイが聞く。
「我々シャーチックの活動にはブラックエネルギーが必要だ。なのでそれらを集めてきて摂取する必要がある。そのために我々ブラックカンパニーは人間どもを襲ってブラックエネルギーを集めてきた」
そうだったんだ。
まずブラックカンパニーが人間を襲う理由がよくわかっていなかった。ここで初めて知る。
「シャーチックとなった卯立もそれは変わらないと思っていたが、まさか自身の中でブラックエネルギーを生成することが出来るとは。元々人間であることでそういうことができるのかもしれないな」
「じゃあ人間の卯立からウーダッツに変身してしまったのは、体内でブラックエネルギーが発生したからですか?」
「つまりはそういうことだな。負の感情を抱えることで体内にブラックエキスが発生する。それをブラックエネルギーに変換してブラック細胞がそれを吸収することで活性化しウーダッツになることが出来る」
「ほう、ならばウーダッツは人を襲うことなく永遠に生きることが出来るということか」
興味深そうにザーベーイがつぶやく。
確かにそう言われると便利な気もするが、、、
「ですがロージュさん。俺がウーダッツになった時、視界がぼやけて体も勝手に動いてたんですけど、あれは、、、?」
「ブラック細胞に操られていたんだろう。本来人間の体とブラック細胞は相容れない存在。今はブラック細胞が弱っていて大人しいから本来の感情が優先されるがブラック細胞が活動し始めるとそちらに身体が乗っ取られるのだろう。おそらく先ほどのエターナルファイブとの戦闘による負傷でブラック細胞のエネルギーを使い果たしたのだと思われる。心配するな、また体内でブラックエネルギーを生成すればウーダッツに戻れるぞ」
別に戻りたいわけじゃないんだけどな。
また感情をコントロールできずに暴れて人を傷つける可能性もある。
そう考えると、もう怖くて表を歩けない。
「ウーダッツの状態で感情をコントロールすることは出来ないんですか?」
「今のところはわからん。何せお主の存在自体が初めてのことだからな。いやぁ先日はお主が無能とか言って申し訳なかったの」
「いえ、そんなことは、、、」
「まぁ気にせず、またウーダッツになり暴れてくれればいいさ。ウーダッツ」
そうザーベーイが俺の肩を叩く。
いやそう言われても、俺は人間相手に暴れる気はぜんぜんないのだが。
「でも人間を襲ってブラックエネルギーを集めているんですよね? 最初はてっきり人類を滅ぼす気なんだと思ってたんですけど。でも人間を滅ぼしちゃったらもうブラックエネルギーを集められなくなってシャーチック自身が生きていけなくなるんじゃないですか?」
「我々ブラックカンパニーの最終目標は人類の滅亡なのだ。人類が滅亡さえすれば我々の存在は必要なくなる。ゆえにブラックエネルギーがその後、手に入る必要はない。但し人類を滅亡させる為にはブラックエネルギーが必要で、それは人類を襲うことで得ることが出来る。人類を滅亡させる為に人類を襲い、その過程で活動に必要なエネルギーを得ることが出来る。実に効率的だろう?」
ザーベーイがドヤ顔で語る。
いやドヤ顔しているかはよくわからないけど。
しかし人類を滅亡させるために存在している。人類が滅亡すれば自分たちは死んでもいいって、ならなぜ彼らが存在するのか。彼らの存在の裏に何かある気がする。
「じゃあ幹部のみなさんで一気に襲えばいいんじゃないですか? 俺が行く必要ないでしょう。それに俺は自分で勝手にブラックエネルギーを生成出来るわけですし」
「実はそれは、今は無理なんじゃよ。先の戦いで我々七幹部は大ダメージを受けてな。我らは今、以前のように満足には戦えんのじゃよ。そしてそれを回復させるにはブラックエネルギーが必要になってくる。人間どもを襲いブラックエネルギーを集める。そしてそれを精製し、より高濃度のブラックエネルギーを浴びることで本来の我らに戻ることが出来る。今は、その精製中に出た残りカスを再利用してブラックシャーインを作り出し、そ奴らに戦わせることでブラックエネルギー集めをしていた。しかしエターナルファイブにジャマされるようになってから上手くいっていなくてな。そこで新たなる手段としてウーダッツを生み出してみたわけじゃよ」
「しかしお前がそれほど乗り気でないなら仕方がない。また新たな人間をさらってきて、シャーチックにする必要があるかもしれないな」
ロージュに続いてザーベーイが恐ろしいことを言う。
また俺のような人が増えるのか。
それはそれで困る話だ。
「わかりました。少し考えさせて下さい」
「キサマに考える余地など本来ないのだがな。まぁいいだろう」
意外と寛容なザーベーイさん。
しかし今、この人たちは手負いの虎ということか。上手くすれば彼らから人類を救うことが出来るかもしれない。
しかしそうなれば、怪人にされてしまった俺はもう、、、
とにかく方法を考えよう。
というか、そういえば俺、会社に行く予定だったのに、、、
思い出し、俺は頭を抱えた。




