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89 私、カジノでやってやります!!!!

「……とまぁこんなふうにどっちが勝つか予想してコインをかけていけばいいんですよ」


 アイスドラゴンが負けたショックから20分あまりその場でカチカチに固まっていた私ではあったが、どうにかナビゲーター風を装うことに成功した。

 勇者くんは無言で次のモンスターリストを眺めていた。


――――――――――――――――――――


モンスターリスト


①ゴールデンメタルマシーン オッズ 1000倍

②シルバーメタルマシーン  オッズ 1000倍

③ブロンズメタルマシーン  オッズ 1000倍


――――――――――――――――――――



 ……あー。

 これはまたえらいのを引いてるな。

 このカードでは3種のメタルマシーン同士の戦闘になるのだが、大抵決着がつかない。

 マシンがマシンを殴り合ったりレーザー攻撃するのだが、全員物理防御9999であり、耐性も完璧という化け物仕様。

 違いって何ですかと言われたらHPと色くらい。

 ゴールデンが一番高く8。シルバーが5、ブロンズが3。

 一見ブロンズが真っ先に倒れて賭け金没収と思われがちだが、最低ダメージ1を必ず引くとは限らない。

 誰にかけても結構な確率で生き残る。

 それでもまあ確率的に言えば確かにHPが一番低いブロンズが先に倒れる可能性が高いのだが。

 お互い相手の耐性など全く考慮できていないおバカAiなのでさっき効果のなかったレーザーをひたすらぶっぱしたりする。

 もちろんこいつらがこの先の冒険で敵として出てくることはあるが、その時ミランダさんはいない。

 いないし、ここまで極端な設定にはなっていない。

 クリティカルごりおしでどうにか倒せるし。

 ともあれ勇者くんは一番強いところのゴールデンに10枚のコインをかけた。

 そうしてマシンたちによる激戦が始まった。

 先手で攻撃したのはゴールデンだった。

 お得意のレーザー攻撃をぶちかますも耐性ありな2名にはまるで通用していなかった。

 しかしそのお返しにとシルバーの方もレーザーを射出する。

 当然ゴールデンもブロンズもどこ吹く風。効いちゃいない。

 前ポンコツ2名の動きを見たからか、最後に行動したブロンズくんだけがシルバー相手に攻撃しにいった。

 が、ダメージを与えている様子はない。

 ちなみにゴールデンが攻撃力255、シルバーが175、そしてブロンズが100である。

 まあ全員物理防御最硬なので意味はないが。

 再び攻撃ターンになったゴールデンは、純金のボディを変形させて大回転切りを放った。

 何かしらのダメージを与えることに成功したようで、マシン2名は大きくひるがえった。

 反撃にシルバーがゴールデンの金ボディにロケットパンチを決めていった。

 ボディに食い込む勢いで銀の剛腕が放たれたが、ダメージを受けている感じはなかった。

 絵的に見ればそれなりに面白い試合だ。

 続いてシルバーの攻撃ターンに差し掛かるが、ここでもまた彼はレーザー攻撃を行っていた。

 そしてさっきまで賢かったブロンズくんまでもがやり返しのレーザーを放った。

 あーもうめちゃくちゃだよ。

 しかしここで本気を出してきたのか、ゴールデンのダブルラリアットがブロンズの機体に直撃。

 倒れ知らずの頑丈な装甲にダメージを与えてブロンズくんが撃沈する。

 シルバーは対象が1人になったことでAiがポンコツ脱却したのか、ダメージ効率の高い連続切りを開始した。

 1ダメージでもこのHPが2桁に届かないスライム以下の体力な連中には積み重なると痛手になる。

 累計3ダメージは食らっただろうか。

 怒りに満ちた(ように見える)ゴールデンが怒涛の爆裂パンチをお見舞いし、シルバーを凄い勢いで後退させた。

 反撃にシルバーが放ったのはレーザーだったのでダメージはなかった。

 そして再びシルバーによる連続切りが発生し、またまた3ダメージもの大打撃を受けてしまう。


「これでゴールデンのHPは2……!」


 久しぶりに手に汗握るゲームだ。

 ちなみにHPは毎度同じというわけではなく、モンスターのその日の体調によるのか80〜100%あたりで微妙に変化する。

 まあこれがあるからさっきみたいなよくない大金星、大番狂わせが発生するのだろうな。

 全くこれだからギャンブルは。

 そしてゴールデンのターンになった時、彼の鉄拳一発によってシルバーはブロンズの後を追うように沈黙していった。


「勝者、①番ゴールデンメタルマシーンです!」


「おおお決着ついちゃいました!」


 すごい。これは大したものだ。

 普段は滅多に攻撃なんて行わないし、行ってもダメージを与えることも少ないのだ。

 勇者くんは名誉のコイン10000枚を手にして帰ってきた。


「……さぁ。これでこの腐った世界から脱却できるな」


 手にしたコインを早急にアイテム交換所に持っていき、ジーカちゃんと自分用のVIP会員証を交換してきた。

 やはり早く先に行きたかったのだろうか。

 もうちょっと遊んでいたかったが、仕方ない。

 そもそも彼の冒険について行かせてもらってる身なのだ。

 うっかりうっかり。

 しかし7000万枚のやつ、まだ諦めてないぞ。

 くっ。こんなことなら金のなる木が成るまで待ってから金で買えばよかった。

 スロットの件はほんと、なんでああなったのか記憶にない。

 ただ追い課金追い課金してたらいつのまにかお金がなくなっていたのだ。

 ギャンブルってこわいね。


「……マックスたちは?」


「そういえば見ませんね……私、探してきます!」


 VIPフロア入り口前階段で待ってくれている勇者くんを背に、私はマックスさんたちを探し求めてカジノに飛び込んでいった。


 その道中、私はまた再び魔の100コインスロットに到着した。してしまった。

 この辺にマックスさんいるかな……。

 いや、いないかもしれない。

 もしかしたらマシーンの中に閉じ込められてしまっているかも……。

 いやありえない。いや、ありえる。

 あの意地汚い悪質なディーラーのことだ。

 仲間をスロットマシーン内に無理やり監禁して「助けたくばスロットを回せ」とか「戦え……戦え……!」とか強要してくるにちがいない。

 くうう。なんて卑劣な。

 そんなことはさせん。そんなことはさせんよ!

 私は台の前の赤い椅子に腰をかけ、コインを再び投入していった。

 待っててねマックスさん、必ず助けてあげますから!

 あとレイブンさんも! 忘れてませんからね!

 おのれ憎きスロットマシーンよ。

 今度こそ白黒はっきりつけようじゃありませんか‼︎




   ◇ ◇ ◇




「アハ!」


 連チャンだ。すごい連チャンバナナだ。

 6800万から当初負けに負けてスロットに舌打ちしていること10分。

 いよいよ登り坂にさしかかってきたぞ。

 ほらみろ。5100万だったコインがもう6000万になってるじゃないか。大儲けだ大儲け。

 この調子で金銀財宝ざっくざく。

 目指すは夢のドリーム777!

 そうやってザクザクコインを投げ入れてるところに、隣で聞き慣れた声が聞こえてきた。


「って! ミランダまたスロットやってるですか! いい加減とっととあの筋肉バカを探しに行くですよ!」


 ちっうるさいのが来やがった。

 今いいところなんだから邪魔しないでよ。

 子供はあっち行ってなさい。

 ほら見なさい。スイカが揃ってますよ。

 花火が、花火が光ってるじゃないですか。


「よーしここは一杯キメるとしますか〜」


 うろついてたバニーさんに冷たい飲み物を注文し、その場で一気にかっくらった。


「ぷへ〜! よしこれで勝つる!」


「何してやがりますか。早く探しに……うっ! 酒臭いです。何注文しやがったんですか!」


 お酒ぇ?

 そんなもん飲むわけないじゃないか。

 ここからは絵柄と絵柄の真剣勝負なんだぞ。

 ひっく。

 揺れ動くスロットくんが呼んでいるんだ。

 私はそこでハッとなった。

 そうだよ。元はといえばこいつらが悪いんだ。

 こいつらが私たちのお金を狡猾な手段で食い荒らし、挙句は私たちの仲間であるところのマックスさん、レイブンさんを閉じ込めてもっと私たちから財を搾り取ろうとしているのだ。

 許すまじ暴漢。品性下劣。野蛮なスロットよ。

 貴様のような危険な悪を、この世にのさばらせておけるか!


「うおろろろろおおお!」


「わーっ! 何やってるですか! スロットがゲロまみれでやがりますよ!」


 頭がガンガンする。

 ぎもづわるい。うるせえガキんちょ。

 こちとらゲロがゲロでゲロゲロゲロ。


「助けてミランダさん!」


「くっ、ミランダ。ここはいい! 早くお前だけでも!」


「レイブンさん! マックスさん!」


 バナナの回る向こう側で彼らがバンバンとクリアケースを叩いている。

 そこに立つは憎きディーラー・ガンブル。

 諸悪の根源。スロットの帝王。

 彼こそが私たちの宿敵、魔王だったのだ。

 スロットに遊ぼうと気軽に踏み込んだ初心者プレイヤーを罠にハメ、スロット内に監禁して脅してくるのだ。


「あ、あのお客様……他のお客様の迷惑になるさかい、その辺で……」


「脅しに屈してたまるかぁーっ‼︎」


「あっぐはぁ!」


 私は戦う。戦って救ってみせる!

 うおおおお! 風景が虹色じゃ!

 これはもしや夢にまで見たフィーバータイム……いや、ジャックポットでは⁉︎


 そう思った矢先――私の視界が突然ブラックアウトしていった。

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