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66 私、龍人の神相手に圧勝です!?

「おいおいあれが龍人の神様だと? あんな化け物とどうやって戦えばいいんだよ」


 マックスさんはそびえ立つ五つ首の龍を眺めて額から汗を垂らしていた。

 それまで相対したことのないスケールの怪物で、なおかつ異形で圧倒的な存在感を放つ龍なのだ。

 怖気づく、というのは言い方が悪いが緊張しない方がおかしいだろう。


「なんでやがりますか。びびってんですか」


「へっそんなんじゃねぇよ! むしろ倒し方がありすぎて迷ってるくれぇだ!」


 その剣の震えは武者震いなのか、それとも――

 五つ首の巨龍、『エレメントドラゴン』は多くの属性を備える強敵だ。

 一つ一つの首からは強烈な属性攻撃を放ち、更に一つの首を倒すまでは他の首は狙えない。

 そして各首に付与されている属性ではダメージを与えられない。

 赤は『炎』、青は『氷』と『水』。

 緑は『大地』、白は『光』そして黒は『闇』だ。

 とすれば全首に共通して耐性の存在しない『雷魔法』なんかが有効な攻撃手段となり、おあつらえ向きにそれを習得しているのは勇者たるスラッシュくんなのだ。本来のプレイ状況でなら。

 何を間違ったかこのミランダさんは本来覚えない雷魔法が使えちゃうので、余裕で発動できるのだが。

 今回は出番無しだ。


 さてどうするかというと。

 現在MPは52。

 あと一回マッスルサイクロンがやれるかというところだ。

 首を全て倒すと、最後に怒涛の全首同時出現状態で登場し、開幕『レインボーブレス』という全属性が融合した攻撃、つまり無属性攻撃でこちらを殺しにかかってくる。

 反射も回避もできないので、大ダメージは避けられない。

 が、これを耐えればあとは反撃あるのみ。

 まずは各形態をラッキーダイスの元に沈めるとするか。


 先手を取った私が念じてダイスを天に放つ。


「ダイススタート!」


 転がり落ちたサイコロの出目は『6』だった。

 いやこんなところで当てられても……。

 ダメージ9999から変わんないし。

 ともあれこれで炎の首、撃破だ。

 龍の首が沈むと、仲間たちは戸惑いを隠せない表情だった。


「えっ?」


 驚いている暇もなく、続け様に今度は青の首が顔を出す。

 再び私がラッキーダイスを投下する。

 次の目は「2」だった。

 ちなみに各形態のHPは4500程度なので、最低ダメージ7777のダイス一発ずつで押し通せる。

 赤に合わせて青もダイスをぶつけられて沈み、緑の首が顔を出した。

 そして出現直後に私のチートダイス攻撃が無情にも飛び交う。

 賽の目は「1」。

 しかし余裕の圧殺である。

 ここ本来なら色々苦戦するところではある。

 赤の首は炎や火傷を与えてくる息で攻めてきて、青は氷ブレスや水魔法で、緑は地属性と毒や混乱などの状態異常特化型なのだ。

 次に出てきた白も対策の難しい光属性ブレスで攻撃してくる厄介な首なのだが、それさえも瞬殺した。

 残った闇だが、これはあの憎き猿そして目の前の国王に与えられた闇とは似てるようでちょっと異なる属性だ。

 闇属性の攻撃なんてこの時点で持っているはずもない。

 よって通常攻撃でチマチマ攻めるしかないのだが、それらを無効化されることはない。

 あの鬼畜闇のバリアは存在していないという事である。

 というかあんなもん実装されたら無理ゲーに等しくなる。

 あ、でも勇者さまは攻撃できるんだっけか。

 いけねいけね。ついつい自分基準で考えてしまった。

 飽くまでも私はサポーター、みんなのアイドルヒロインミランダさんなのだ。

 主人公を取って食うことは許されない。

 とまあそれは置いておくにしても、結局この5首連戦は誰の手も借りることなく連勝で圧勝していってしまったのだが。

 ダイス強すぎ問題。

 哀れ五つ首。


 しかしまだ気を引き締めなければならない。

 最後に全ての首が出揃うと、彼らの口から全ての属性が混在した虹色のブレス攻撃が飛んできた。

 レインボーブレスって確か虹になぞらえて777とかいうふざけたダメージ与えてくるんじゃなかったっけ。

 それじゃこの時点では流石に高すぎるか。

 でもなんか事前に防御したまま闇の首を倒しておくと、防御状態を維持したまま全首戦闘に突入するから半減できる……というかこれくらいしか正規レベルでの対策ってなかった気がする。

 初見殺しもいいところだ。

 なので言い方が悪いが、攻撃するメンバーを捨てて、大事な戦力には龍のHPを削り切る段階で防御させ、次のターンに備えるとかやってたような。


 ……ってあっ。


「防御させておくの忘れてましたっ――」


「あああああっ!」


 全員が虹色のブレスの餌食になってしまった。

 HP7000台の私を除いて全員がその場に倒れてしまった。

 オー……。

 ごめんなさいみなさん。私の配慮が至らないばかりに……!

 HPも減ってしまったのでダメージも減ることになるのだが、そんなことは知らぬ。

 みんなを倒された怒り――我が筋肉の洗礼を受けるがいい!


「はいっミラクルーマッスル!」


 やはり筋肉。筋肉は全てにおいて勝る……!

 筋肉の波動を全ての首に受け、4万越えのオーバーキルダメージで一つ残らず死滅した。

 戦闘勝利である。みんなには辛い思いをさせてしまったが。


「大丈夫ですか皆さん!」


「…………み、ミランダ……さ……ん?」


 たった一人で五つ首の化け物を仕留めた私は、仲間からちょっと怖いもの扱いをされてしまった。

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