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29 私、とことん修行します!!①

「うわぁ〜本当に寒くないです〜」


 イエティさんの宝珠のお陰で、私は寒さと言う寒さを一切感じなくなっていた。

 なんだか寒さという感覚だけ無くなっちゃったみたい。

 オーネスを越えて私たちは大雪原の向こう側へと渡っていった。

 通例、夜の大雪原に立ち入るのは自殺行為に等しい。

 なぜなら夜になると昼間とは比べ物にならない程危険な敵とエンカウントする恐れがあるからだ。

 そのため可能な限り昼間に到着するように心がけて、絶対に夜間の出入りはしない。

 それがセオリーだったのだが、今回の私は違う。


 私は反省した。

 あのガリング相手に全く手も足も出せなかった自分を。

 心のどこかで慢心していたのだ。

 イチから修行をやり直す意も込めて、私は単身でこの雪山を越えていかなければならない。

 死別回避に差し当たって避けては通れない諸悪の根源との戦闘は、おそらくあんなものではないはずだ。


 ならば尚のことこんなところで立ち止まっていられない。

 しばらく雪道を突き進み、猛吹雪に視界を奪われそうになっている頃、ゆらゆらと揺れ動く青白い光が見えて来た。


「スノーガイストさん……」


 スノーガイストAがあらわれた!

 スノーガイストBがあらわれた!

 スノーガイストCがあらわれた!

 スノーガイストDがあらわれた!

 スノーガイストEがあらわれた!

 スノーガイストFがあらわれた!

 スノーガイストGがあらわれた!

 スノーガイストHがあらわれた!


 私は総勢8体ものスノーガイストさんに囲まれてしまっていた。

 言った端からこの危険度満載の状況である。

 スノーガイストさんは『アンデッド系』に属する夜間限定の強敵である。

 まずアンデッド系の特徴として、物理攻撃が一切通用しない。

 ならばと魔法攻撃をしようにも、この時点で彼らに有効打たりうる『火魔法(フレア)』系は相当進化させていないと全体攻撃にはならない。

 単体魔法でチマチマ撃破しようにも、こいつらは仲間の誰かが倒されると同時にすぐさま仲間を呼ぶという厄介極まりない特性がある。

 そして彼らを危険たらしめる最大の要因として、ひたすら『吹雪』を吐きつけてくる行動パターンがある。

 集団で吹雪なんかかけられようものなら、一瞬でパーティーがシャーベット状態になる。そして無情にも死ぬ。


 このように普通なら二度と顔も見たく無いほどの強敵軍団ではあるが、今の私にとっては全てが美味しい状況であった。


 まずイエティさんの宝珠によって氷属性ダメージは完全に無効。

 「吹雪? 何それ美味しいの?」という状態にまでなれる。

 次に連中のアンデッド耐性だが、これは日本刀によって相殺できる。

 無限に増え続ける習性だが、前述の通り吹雪を無効にできるので最早完封勝ちなのである。

 あとは勝手に補充し続けてくれる敵を倒し続ける事で、とても良い修行になるというわけだ。


 早速この一見圧倒的に不利な状態で戦闘が開始する。

 まず先手を取って来たのはスノーガイストさんだ。

 彼らの素早さはこの時点では異例の「360」だ。

 余程レベル上げをこなしていないかぎり、大抵の場合彼らに先手を取られる。

 それがあの危険な特徴と相まってこいつらを化け物集団たらしめている要因なのだ。


 開幕からいきなりスノーガイストさんの吹雪が吐きつけられる。


 ミス! ミランダはダメージをうけていない!


 なんか本当に無効になっている感じだ。

 この猛吹雪に晒されて服もなにも凍りついていない。

 全く寒さを感じないどころか、このまま目に入れても痛くないほどだ。

 なんなら口を開けて飲み込んでみようかと思ったが、口内に届く前に遮断されているような状態だったので無理だった。残念。


 そうすること次々とスノーガイストさんによる一斉吹雪攻撃が飛んできた。

 無論その全てが私には通用しなかった。

 やばいこれ怖い。

 普通ならとっくに氷漬けになっている風の中にいて、全くなんともない。


 そしてその総攻撃に合わせて、私の『反撃』ブリザード×8が発動する。

 今回反撃をブリザードにしたのは、こいつらをうっかり倒してしまわないようにするためだ。

 案の定彼らはついさっきの私を追体験するように、迫り来る氷の中を嘲笑うように泳ぎ揺蕩っていた。

 それでいい。今は集団で死なれては困る。


 やがて私の攻撃ターンになると、伝家の宝刀・日本刀を抜刀した。

 スノーガイストたちはいつも通り物理攻撃をひらりひらりとかわそうとしていたが、私が軽く素振りをしただけでその肉体は消滅した。

 前回まるで良いところなしだった日本刀だが、今回は大活躍である。

 日本刀の眩い刀身は、幽鬼たるスノーガイストの本来無いはずの肉体をがっちりと掴んで離さない。

 吹雪一閃。過去のトラウマが雪景色と共に消えゆく様は見ていて爽快である。


 スノーガイストBは仲間を呼んだ!

 スノーガイストIがあらわれた!


 先頭が倒されたことを確認すると、スノーガイストさんはすぐさま仲間を補充していった。

 これで当初の目論見通り、際限なく無限に修行を続けられる。


 しかしふと思ったがこいつらはどこから現れているんだろうか。

 個体によっては「今飯食ってたんですけど⁉︎」というようなものもいるんじゃなかろうか。

 それともそういう個体は呼びかけに応じないのだろうか。

 暇な個体が呼び出されて、召喚されていくというのか。


 スノーガイストさん、まさかの暇人説(人じゃ無いが)。


「よーし……やってやるぞ……!」




   ◇ ◇ ◇




 あれからどれほど戦闘が経過しただろう。

 既に65535体目のスノーガイストさん討伐に差し掛かる頃、とうとう個体絶滅でもさせてしまったか、彼らは全く仲間を呼ばなくなってしまった。

 ここで修行は終わりか。仕方ない。


「『竜巻魔法(トルネード)』」


 放たれた大竜巻が、残ったスノーガイストさんたちを巻き込んで白い風となって消えていく。

 対象、全沈黙。私たちの勝利である。


 今回、凄まじい数の敵を撃破したからか、レベルアップのアナウンスがえらいことになっていた。


【ミランダのレベルが上がりました】


【スキルを獲得しました】


【スキルを獲得しました】


【スキルを獲得しました】


「なんかめちゃくちゃ一杯獲得してる……」


 恐る恐る私は鳴り止まぬステータス画面を確認してみた。

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