ルール
「あなたの手は冷たい」
そう言ってその人は手を引っ張ってくれた。
「ふう、まだまだですねえ」
私はどの瞬間を切り取っても絵になる木々をみた。山吹色のそれも一つ一つ精工に作られた葉が血管のように広がっている。ここから先はとても長く険しい。私なしなら、、、
「でも驚きましたよ。私なんかを連れてきてくれて」
私はその目を見ずに微笑を浮かべながら言った。
「いやーどうにも私にはもうあなたなしでは生きていけませんよー」
彼は恥ずかしそうで少し名残惜しそうに言った。
そこから先は簡単だった。橋が壊れていようが、クマが襲ってこようが構いやしない!
彼には私がいる私は何がきても彼を成功に導いてやることができるのだ。
私も彼もいい気になっていることだろう、これこそが善だよなあ
けどそこには、どう見ても山に来る格好ではない子供が蹲って泣いてる。
「どうしたの?大丈夫かい」
そいつはそんなことを言って悲しげに声をかける。
「おいおい、早くいかないと日が暮れちまうぜー」
日が沈んだ山ほど恐ろしいものはない。まあ私が日を沈めているのだが、そんなことは奴は知らないんだ。
「おいおい、早くいくぞおー、なんなら俺だけで行っちまうぜい」
私は得意げで意地悪げにそう言う。
「そうか、行けばいいさ」
彼は私を睨んでそう言った。
寝耳に水だった「はあ?お前に何ができる?俺がいねーと何もできないのによー」
そう目を見開きながら詰め言った。
こうすればこいつは「ひいぃ」といってリスのようにおとなしくなるさ、これまでどおりな。
唐突に貧相な顔の子供が私に呟いた。
「あなたは誰?」
夕暮れの澄み渡る空気と黒く陰りかけた紅葉は子供と彼を優しく包んでいた。