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一なつの恋  作者: 環流 虹向
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12:00

俺は姐さんの家に久しぶりに入り、気持ちを高ぶらせ涼みながら姐さんの支度を待つ。


昨日、夏と仕事終わりにデートをしたからなのか、それとも仕事で疲れていたのか、分からないけど二度寝してしまい出かける準備が出来てないらしい。


そんな姐さんも好きだけど、夏とどんなデートをしたのか気になりすぎて俺は悶々としながら姐さんのベッドではちみつ石鹸の匂いがする布団を嗅いでいると、1つ姐さんの匂いじゃないものが鼻に入ってきた。


さき「あと10分で出来るから。トイレ行きたかったら先行っていいよ。」


一「夏と寝たの?」


俺は夏の淡い香水のような匂いを感じた薄手の毛布にある2人の匂いを確認しながら、ヘアセットが終わった姐さんに聞く。


さき「寝たっていうか、なんというか…。」


と、姐さんは頬を染め始めて昨日のことを思い出してるのか、少し困り顔をしながら唇を噛む。


一「もういいよ。姐さんの中で夏が1番なの知ってるし。」


俺は毛布を投げ捨てて姐さんの匂いだけがあるはずの枕を顔に乗せる。


けど、そこにも夏の匂いが少しあって腹が煮える。


いないはずの存在なのに良くもこんなに腹立たせてくるなと逆に関心を持っていると、俺は急に腹を撫でられたことに驚いて顔から枕を落とすと姐さんが俺の腹をのの字に撫でていた。


さき「…夏くんは私のいろんな好きなこと知ってるけど、私が知ってる夏くんがちゃんと好きなことはオレンジジュースといじめるのしか知らないよ。」


一「いじめる…?」


俺はその言葉が理解出来なくて、姐さんに聞いてしまう。


さき「私…、夏くんにもっと一と話してって言われたから3つまで秘密を話そうって思ってるけど、一はどうしたい?」


と、姐さんは少し怯えながら俺に聞いてきた。


一「夏が俺と話せって言ってくれたの?」


さき「うん。話さないと分からないことあるからって。」


…なんだよ。


なんなんだよ。あいつ。


昨日は俺に喧嘩ふっかけたのに、姐さんの背中は押して俺のアシストしてんじゃん。


本当にあいつの行動が1番分からないし、妬ましく感じる。


一「じゃあ俺も3つ、秘密打ち明けるね。好きな時に使っていいよ。」


さき「…じゃあ、そのおでこの傷のこと聞いてもいい?」


と、姐さんは花火の夜に触れなかった俺の傷について聞いてきた。


やっぱり気になるもんは気になるよな。


一「5歳の時に自分の部屋の窓から落ちてこの傷が出来た。今まではみんなに見せるのが嫌だったけど、奏と音己ねぇと海斗たちが良いって言ってくれたからこの髪型にして俺を見せてる。」


さき「…触ってもいい?」


一「いいよ。」


俺は医者と音己ねぇ以外の人に初めて傷を触れられた。


その手つきは愛しいものを愛でるように撫でる手つきで、音己ねぇがよくする傷を摘み捨てようとする手つきとは全く違った。


さき「いっぱい一緒にいたのに気づかなかった。」


一「隠してたからね。俺も1個、秘密聞いてもいい?」


さき「うん。」


一「夏と昨日どんなデートした?」


俺がそう聞くと姐さんは恥ずかしそうな顔をして俺のおでこを撫でていた手を離し、自分の膝にあるスカートの裾を掴んだ。


さき「…家デート。マッサージしてもらった。」


一「だから夏の匂いがいろんなとこにあるんだ。」


姐さんの体に合法で触れられるのが羨ましいと思っていると、姐さんは両手で顔を隠し口元だけを開けてその続きを話してくれた。


けど、俺はその内容が驚きで言葉を返せない。


さき「…ずっと、お店でしてもらってて、昨日はマッサージだけって思ってたんだけど断り切れなくて。」


一「え…、口えっちって夏のを?」


さき「ううん…。夏くんが私のを。男って言ったじゃん。」


一「夏、彼女いるけど。」


さき「え!?…なんでみんな教えてくれないの。」


姐さんは真っ赤な顔から手を離し、ベッドに顔だけ埋める。


昨日俺が音己ねぇと別れそうになったのに、夏は姐さんと楽しいことしてたなんて…。


俺は少し好きになった夏がまた嫌いになり、夏が寝ていたこのベッドを殴りたくなったけれど、姐さんをこれ以上困惑させてくなくて自分の気持ちを押し殺す。


一「…姐さんの秘密、ヘビーだね。」


さき「一に嫌われたくないから。」


と、俺が嫌いなはずの姐さんは顔を埋めながらそう教えてくれた。


俺はそれが聞けただけで秘密が聞けたことよりも嬉しくなり、夏への怒りがどっかに飛んでいった。


一「あと30分以内にここ出ないと飛行機間に合わないよ?」


さき「…行ってくれるの?」


と、姐さんはベッドと髪の毛の合間から泣きそうな顔で俺を見て言った。


一「行くから俺はここに来たし、どんな秘密知ったって姐さんと行きたいとこ行くの。」


さき「…ありがとう。」


姐さんは俺に優しく微笑んでくれて雨上がりのまつ毛をそっとティッシュで拭い、また準備を始めた。


俺は俺のためにだんだんと可愛くなっていくと思いたい姐さんを見ながら、明日までにこの気持ちを思い出にする準備を俺の中で固めていった。





→ Editorial


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