22:00
明とJ ORICONNのスケジュールやどんなものを作るか考えているとあっという間に夜になってしまって、明は慌てて明後日納期のイラストに取り掛かった。
俺は邪魔をしないため、外に出て会いたい人に会うために電車に乗る。
明日からはJ ORICONNで忙しくなりそうだから姐さんに会いに行こう。
いっぱいBARでお金使って、姐さんの財布を潤して、家に泊まらせてもらおうっと。
俺は上機嫌で学校の最寄駅に降りて姐さんのBARに向かう。
その街並みは毎日見ているのに何故か初めて来たかと錯覚してしまうほど、別の世界だった。
1人でもこんなに街が色鮮やかに見えることは今まであっただろうか。
しかも隣に人がいないのに今も楽しい気持ちが続いているのが不思議だ。
俺は珍しく鼻歌を歌いながら姐さんの店に入り、バーカウンター下にあるカウンターチェアに座る。
「あ!いっくんおはよー。」
今日は珍しく従業員が慌ただしくしていた。
少し忙しいのに姐さんはまだ来てないんだろうか?
一「おはよー。姐さんは?」
「さきちゃんは今日来ないよ?」
一「え!?」
俺は爆音でかかっている音楽をかき消すほどの声を出して驚く。
「うるさい。さきちゃんいつも月曜日いないじゃん。」
一「そうだっけ?」
「いっくん、月曜日あんまり来ないからねー。」
と、笑いながら洗ったグラスを拭いて整理をしている楽しげな従業員。
その様子はいつも笑顔な姐さんイズムを受け継いでるらしい。
一「姐さんの休みの日って月曜日だけ?」
「丸1日は月曜だけ。半休は不定期だね。」
一「えぇー…、ええー!姐さん呼んでよー!」
俺は駄々をこねて姐さんが来てくれるようにねだる。
「さきちゃん先週半休なかったから疲れてるの。無理!」
俺はその回答に大きいため息をつき、カウンターに突っ伏して分かりやすく落ち込む。
「どうするのー?呑むのー?」
一「とりま、ハイボール。」
「はーい。」
これで会えたら俺の人生バラ色だったのに。
姐さんはなんで俺の気分をえぐってくるんだよ。
俺、姐さんに悪いこと何もしてないよ。
彼氏欲しいって言ってる姐さんに何回も告白してるのに冗談のようにかわされちゃう俺ってなんなの。
夏にはあんなに嬉しそうな顔しちゃって、
そんなに好みの顔って大事なの?
俺は姐さんのいないBARで一気に3杯呑み、外に出る。
空きっ腹だったからかアルコールが鎖骨に溜まる。
俺は鎖骨を揉んで気持ち悪いむくみを取り、行き場のない思いをホテル街の向こうにあるバッティングセンターでぶつけようと思ってその道を通り抜けようとすると、たくさんのカップルが行き交いさらに俺の腹が煮え繰り返る。
こんなことだったら来なければ良かったな。
俺は涙袋に水を貯めながらぼやけた視界の中歩いていると、2つ先のホテルから姐さんと似た雰囲気の人と男が出てきた。
俺も姐さんと楽しいことたくさんしたいのにな。
俺は幻を現実にしようとして目を擦り涙を拭いて前を見ると、その人はホテル前で男と別れたのか1人で角を曲がろうとこちらに向かって歩いてくる。
一「姐さん!」
俺は歩いていた姐さんに駆け寄って腕を組む。
幻は現実になっても本物だったことに感激して、俺は組んだ腕に抱きついた。
さき「え…、え?なんでここにいるの?」
一「会いたくて来た。」
さき「…うーん、今日休みなんだけどな。」
俺はノースリーブのタイトめワンピースから出る白肌の腕を触り、姐さんの温もりを感じる。
その腕は冷え性なのにいつもより火照って温かい気がする。
一「…男、出来たの?」
さき「違うよ。マッサージしてもらったの。」
一「そっか。だからもちもちなんだね。」
俺は石鹸の香りがする姐さんの体の匂いをこっそり嗅いでさっきの寂しさを埋める。
さき「呑んでるの?」
一「姐さんのBARで少し。」
さき「ご飯、食べた?」
一「まだ。」
さき「…一緒に食べる?」
一「食べる!」
俺はその言葉で腕に埋めようとしていた顔を上げ、姐さんと手を繋いでテイクアウト出来るケバブ屋に向かう。
そのケバブ屋は姐さんのマンションのお隣さんだから外で立ち食いすることなく、姐さんの家で食べられる。
今日は最高に楽しい日になってくれた。
俺は心高ぶらせながらも、姐さんのベッドで一緒に眠りについた。
→ キミとならいいよ。