12:00
昼前に海斗はレンタカーを返して先に奏の家にいるみんなに瑠愛くんの無事を報告しに行った。
俺は一眠りした瑠愛くんと悠が起きるを待っていると、夏はなぜか玄関に向かう。
一「家、帰んの?」
夏「ううん。さきさんの携帯返してこようって思って。」
そう言って夏は足早に姐さんの元に行ってしまった。
俺も一緒に行きたかったけど、瑠愛くんは俺にではなくて夏に返してほしいと頼んだから姐さんに会っちゃダメなんだろう。
俺は風呂を借り、静かなリビングで早く誰か来てくれないかなと思いながらソファーに寝転がっていると誰かから電話が来た。
一「もしもし。」
『遊ぼー…。』
と、元気ない永海が俺の耳元で呟いた。
一「んー…と、明日の朝か明後日の夜は?」
明日は集中出来なかったJ ORICONNの絵を完成させて、奏たちとおつかれ会をする予定になっている。
永海『…どっちも。』
一「俺でいいの?」
永海『うん。一がいい…。昨日、悠と暇電しようと思って夜に電話かけたんだけど、珍しく出てくれなくてすごく寂しくなっちゃった。』
…そっか。
昨日何が起こったなんて永海は知らないもんな。
一「まあ、悠は遅刻魔で気まぐれだから寝てたんだろ。そんなに気にしなくていい。」
永海『…そうだね。そう思っておく。』
永海の一言一言がとても寂しく聞こえて、俺は喉が詰まりそうになる。
一「明日、どこ行きたい?」
永海『…お日様に当たりたい。』
一「いいよ。俺、昼からJ ORICONNの絵の仕上げするから学校近くの百瀬公園でもいい?」
永海『そこかぁ…。』
と、永海は若干渋る声で呟いた。
一「…永海はどこがいい?」
永海『いっそのこと、学校の屋上でもいいよ。』
一「分かった。朝一の屋上で待ってる。」
永海『ありがとう。じゃあまた明日ね。』
一「うん。また明日。」
永海が電話を切り、また静かなリビングに戻ってきてしまった俺は永海の寂しさが伝染してしまい心寂しくなっているとどこかの扉が開く音が聞こえた。
「…ぉはよー。」
と、瑠愛くんがリビングに来てくれた。
一「おはよ。保冷剤あるよ。」
俺は替えの保冷剤と冷えピタを渡し、1日でも早く傷を治してもらう。
瑠愛「…一くんはこれから夢衣ちゃんとこ行く?」
一「うん。レオさんが大変だろうし。」
瑠愛「レオくんなら大丈夫。タフだから。」
と瑠愛くんは笑い、俺を安心させてくれる。
瑠愛「きっと『夢衣』って呼んでも大丈夫になってる。レオくんと桃汰ってニコイチだったから全部知ってるんだ。」
一「飯食うだけの仲って言ってたけど…。」
瑠愛「ううん。すっごい仲良し。けどレオくんはしっかり仕事とプライベート分ける人だから、あいつらとはずっと距離置き続けてて今まで何も知らなかったんだ。」
…そうだったのか。
だから長くあそこを続けられたのか。
瑠愛「まあ、レオくんこれから俺のとこで働いてもらうことになったからあそこともおさらばぁ♡」
一「そうなの?」
瑠愛「もともと辞めたいって言ってたし、金稼げればなんだっていいらしいからね。だから今、俺が出れない分やってもらうつもり。」
そう言って瑠愛くんは傷だらけの自分の顔を指す。
一「…目元のバラって桃汰さんと一緒?」
俺は桃汰さんの腹辺りに描かれていた印象的な大きいバラを思い出し、瑠愛くんに聞く。
瑠愛「そうそう。なんか寝てる間に練習台にされてて彫られちゃった。けど、さよならするときに自分の処女作だから返せって取られたんだ。」
一「…え?皮膚だよ?」
瑠愛「そういう次元の奴らじゃないんだよ。まあ、タダで除去出来たからお手軽だよね。」
俺は瑠愛くんの冗談に笑えないでいると、悠が起きてきた。
悠「おはよー。」
一「おはよ。」
瑠愛「おはよっ!もう起きていいの?」
悠「喉乾いた。」
そう言って悠は冷蔵庫にある水を取り、俺たちの元にやってくる。
悠「…あれ?夏くんは?」
一「ああ、姐さんに携帯返しに行った。」
悠「姐さん?」
瑠愛「さきちゃんだよ。」
悠「さきちゃんか。今度ありがとうって言いに行かないと。」
瑠愛「そうだね。」
どこまで俺と同じ知り合いがいるんだろうと思うほど、悠が意外な関係性を持っていて驚いていると夏が帰ってきた。
瑠愛「おかえりー。返しに行ってくれてありがとう。」
夏「ただいま。落ち着いたら顔出してねって言ってたよ。」
瑠愛「そっか!ありがとう!メッセ入れとくぅ。」
…みんな、姐さんと簡単にやり取りが羨ましい。
なんで俺だけ姐さんと交流しちゃダメなのかな。
一「…俺、そろそろ行くね。」
瑠愛「うん!一くんありがとね!」
と、瑠愛くんは俺の肋が潰れそうなほど強く抱きしめてくれる。
一「こっちもありがとう。すごい助かった。」
俺は3人と別れ、レオさんの家にいる夢衣の元に向かった。
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