12:00
「…ん。」
「…い、…くん?」
「…ちゃ…いな…、一くん!」
俺は胸を強めに叩かれ目を覚ます。
一「…瑠愛くん。おはよう。」
朝に仕事を片付けに行った瑠愛くんがホテルに戻ってきたらしく、寝ていた俺の横に立っていた。
一「…ごめん。俺、意識飛ばした。」
そう言って、俺は隣で寝ている夢衣に声をかけたけれど、そこにはまとまった布団があるだけだった。
一「え…、夢衣は?」
瑠愛「いなくなってる。」
一「…え?」
瑠愛「服も靴もカバンもない。…多分、帰っちゃったのかも。」
一「行かないと!」
俺はベッドから飛び起きハンガーに掛けていた服を着て、充電していた携帯を取ると数件メッセージが来ている通知が目に入る。
俺は一応奏たちのところに行っているという淡い気持ちを込めてメッセージを開くと、写真だけが数枚届いていた。
その写真はアイマスクと体を拘束された夢衣が俺の部屋で桃汰さんと交わってる写真だった。
一「…瑠愛くん、やばい。夢衣と桃汰さん一緒にいる。」
俺はその写真を玄関先にいた瑠愛くんに見せて、どうすればいいか聞く。
瑠愛「…あのゴミの性癖、送られてきたんだね。ごめんね。」
瑠愛くんが申し訳なさそうにする必要のない謝罪をすると、突然海斗に電話をし始めた。
瑠愛「海斗くん!急ぎなんだけどレンタカーお願いできる?」
そう言って瑠愛くんは俺の友達たちに指示を振り、携帯をポケットにしまった。
瑠愛「とりあえず、一くんの家に行ってみよう。」
瑠愛くんは足取りの重い俺の手を引いて、タクシーに乗り込み俺の家に行く。
俺は自分の家なのに空き巣のように静かに鍵を開け、中に入ると誰もいない部屋が体液とタバコの臭いで充満していて吐きそうになってしまう。
その様子を見かねて瑠愛くんはすぐに部屋の換気をしてくれて、どこかに電話をかけ始めた。
瑠愛「おい、今どこ?…ふーん。じゃあね。」
と、淡白に電話を終えた瑠愛くんは換気のために開けた窓を閉めてキッチンの換気扇を回した。
瑠愛「今、夢衣ちゃん家で日課してるって言ってたから行くよ。」
瑠愛くんは桃汰さんに電話をしたらしく、また俺の手を引いて待たせていたタクシーに乗り込む。
俺が意識を飛ばしてしまったことに後悔している中、瑠愛くんは携帯でいろんな人に連絡を取り合っているのかずっとメッセージのやり取りをし続けている。
一「…瑠愛くん、迷惑かけてごめん。」
瑠愛「ううん。…俺のせいだから。ごめんね。」
また瑠愛くんは謝った。
瑠愛くんは全く関係ないのにここまでしてくれるのは、俺や俺の友達の夢衣を大切に思ってくれるからなのかな。
俺は瑠愛くんの優しさにたくさん感謝していると、あっという間に夢衣の住んでいるマンションにつきタクシーを降りると奏たちと旅行するときに使ったような車が出入口前に停められていた。
すると、その車に気づいた清算終わりの瑠愛くんが車に駆け寄り、運転手と話し始めたので俺も近寄るとそこには海斗と音己ねぇがいた。
瑠愛「今から俺と一くんが夢衣ちゃん救出するから、音己さんは出てきた夢衣ちゃんを車に連れてって。」
瑠愛くんは作戦を話しながら海斗に自分の携帯画面を見せる。
瑠愛「この住所、ナビに入れといて。夢衣ちゃんと音己さん来たら俺たち置いてそのままレオくん家行って。」
海斗「分かりました。」
海斗は瑠愛くんの携帯を借り、ナビに住所を入れ始める。
一「奏の家じゃないの?」
瑠愛「レオくんだったら色々出来るし、桃汰は消えた存在だから会いたくても会いに行けないから安全圏なんだ。」
そうだったのか…。
だからずっとレオさんと桃汰さんは会えずじまいなのか。
海斗「ありがとうございます。」
そう言って海斗は瑠愛くんに携帯を返し、いつでも行けるとハンドルを握り教えてくれる。
瑠愛「よし!じゃあとりあえず夢衣ちゃん家に入るよ!」
と、瑠愛くんは自信満々に先頭を歩きインターフォン前に立つ。
一「桃汰さんが鍵開けてくれるとは思わないけど…。」
瑠愛「ううん!開けてもらう気、さらさらないよ!」
そう言って瑠愛くんはポケットから夢衣の家の鍵によく似た鍵を取り出した。
瑠愛「オープン・ザ・エスケープロード♡」
瑠愛くんはいつも通りの様子でインターフォン下にある鍵穴にそれを差して1枚目の扉を開けた。
俺と音己ねぇは若干犯罪臭を感じる瑠愛くんの後をついていき、夢衣の部屋の前に到着する。
瑠愛「…じゃあ、音己さんはこのワンピースを夢衣ちゃんに着せたらダッシュでエレベーターに乗ってね。」
音己「分かった。」
瑠愛くんは小声で話しながら、音己ねぇを桃汰さんに見られないように玄関の壁際に隠す。
瑠愛「一くん、準備いい?」
一「今日はいつでもOK。」
瑠愛「うん。じゃあ行くよっ。」
と言って、瑠愛くんは静かに玄関を開けて夢衣と桃汰さんが言葉を絡ませて会話する部屋に音を立てないように近づく。
俺はその桃汰さんの声を聞いて今にも夢衣を引き離したかったが、隙を与えない距離まで近づくのを我慢する。
忍び足で夢衣の元へ行く俺たちは廊下にあるキッチンを抜け、扉1枚向こうにいる2人の様子に耳を傾けてみると、俺の知らない夢衣はずっと辛そうな声を上げていてそれを聞いて桃汰さんは悦んでいる様子。
そ桃汰さんには全く恋人の愛情がない感じで“彼氏”って一体なんなんだろうとこの状況でも思ってしまった。
瑠愛「…行くよ。」
と、瑠愛くんは口パクで俺に伝えてきたので俺は静かに頷き、瑠愛くんが勢いよく開け放った扉から部屋の角にあるベッドに走り、夢衣の上にいる桃汰さんに俺は体全身を使ってど突き強引に夢衣から離れさせる。
夢衣「…ひぃ、くん?」
瑠愛「夢衣ちゃん!立って!」
そう言って瑠愛くんはヨダレと体液まみれの夢衣をベッドから引き上げてそのまま玄関に向かう。
夢衣の救出を見た俺も急いで立ち上がり、玄関に逃げようとすると背中を掴まれ湿ったベッドに叩きつけられる。
桃汰「…お邪魔使いはお仕置きしないと。」
そう言って桃汰さんは躊躇なく俺の口に自分の舌を入れてきた。
一「やめ…」
桃汰「俺、今ガン勃ちだから責任取れよ。」
と、俺が着ていたシャツのボタンを弾き飛ばして強引に服を裂き、ベルトに手をかけてくる。
俺は殴るように腕と脚を使って桃汰さんの体を全力で拒否するが、全く怯む事も痛む表情も見せない。
全く抵抗しきれていない俺は桃汰さんの口と脚で全身が押さえられ、どんなに拒否しても服を脱がされていくだけで恐怖を感じていると桃汰さんが誰かに蹴飛ばされて俺の体から一瞬離れた。
俺はすぐさまベッドから離れて戻ってきてくれた瑠愛くんに駆け寄る。
桃汰「…痛ぇな。」
瑠愛「お前は性欲を貪欲にすり替えられたんだな。」
桃汰「まあ、そんなとこ。」
と、言って体を起こし、ベッドに座り直した桃汰さんを見て俺は驚いた。
その桃汰さんは体にタトゥーのベストを着ていてそのベストには様々な毒々しい色の花たちが刺繍され、腹にはとても大きい薔薇が睡蓮のように花開いていた。
桃汰「これ、どうすればいい?シンジが抜いてくれるの?」
と、全く性欲を抑えきれない桃汰さんが瑠愛くんに聞く。
瑠愛「抜くわけねぇだろ。自分で処理しろ。」
桃汰「えー…?今ここに穴4つもあるのにダメなの?」
瑠愛「テメェの性欲処理する暇あったら客に顔蹴られる方がマシ。」
桃汰「シンジくんっ、お兄さんと似てドM♡」
そう言って桃汰さんは自分で処理し始めた。
瑠愛「一くんは夢衣ちゃんのとこ、先に行って?」
一「でも…」
瑠愛「俺、ちょっとこれにお話あるから。」
瑠愛くんは俺たちをおかずにしている桃汰さんを指し、少し嫌そうな顔をしながら俺にお願いする。
瑠愛「…本当ごめん。もう夢衣ちゃんにも一くんにも近づけないから。」
と言って、瑠愛くんは近場にあった夢衣の服を数着取って俺を玄関に出した。
瑠愛「これ、俺の家の鍵だから好きな服とっていいよ。」
一「…瑠愛くんはいつ帰って来る?」
瑠愛「んー…、後でメッセするね。」
一「…分かった。」
瑠愛くんは俺に微笑みながら玄関の扉を閉じたけれど、その笑顔が別れを感じるような笑顔で俺は後ろ髪を引かれながらも夢衣がいるレオさん家に1度向かった。
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