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一なつの恋  作者: 環流 虹向
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12:00

「んー!昼呑みは最高だねぇ♡」


と、桃汰さんはこれで5本目のシャンパンを呑み終わり、また何を呑むか選び始めた。


それなのに顔色と様子が変わらないのはもうこの人が人ではないからもしれない。


瑠愛「一くん大丈夫?」


瑠愛くんは俺の呑むペースが落ちてきたことに気づき、早めに声をかけてくれる。


一「瑠愛くんは潰れないでね。」


俺は桃汰さんに入れられるまま、強要されるまま、酒を呑まされてこのままだと先に呑み潰れる。


けど、ゲロってすっきりする思い切りは今になってもない。


桃汰「次は…?ウイスキーでも空けとく?」


と、挑発するような笑顔で俺を見てくる桃汰さん。


一「ウイスキーは好き。」


桃汰「いいねー!じゃあダブルストレートで一旦貰っとこっか。」


そう言って桃汰さんはまた3人分の酒を頼み、夢衣にはアイスティー味のカクテルをずっと呑ませ続けている。


しかも、2杯目で夢衣は眠気が襲って来てるのにも関わらず、桃汰さんは5杯目を頼んだ。


夢衣「…桃汰、もういらない。」


桃汰「むぅちゃんと初めてお外で呑めたのにそんなこと言うの?」


夢衣「…だって、味飽きたよ。」


夢衣はずっと同じ酒を呑んでても美味しいといつも言っていたのに、今は嘘をつくほど体に限界が来てるらしい。


桃汰「んー?じゃあスクリューにする?」


夢衣「お茶か水飲みたい。」


桃汰「えぇー…。じゃあ僕と半分こする?」


夢衣「飲めるならなんでもいいよ。」


桃汰「うんっ!じゃあ頼むねー!」


と、言って桃汰さんはちょうど酒を持ってきた店員に頼み、俺と瑠愛くんもすかざす追加する。


桃汰「こんなメンバーで酒が呑めるなんて夢見心地だなぁ。」


瑠愛「そのまま夢に堕ちてもらっていいよ。」


桃汰「俺は堕ち切ったよー。シンジもおいでよ。」


瑠愛「お前たちとは堕ちないよ。」


桃汰「そんなこと言ってられるのも今日までだよ。」


瑠愛くんと桃汰さんが話し始めれば、ずっと一触即発状態。


俺はその横で喧嘩腰の会話を聞いて夢衣と逃げるタイミングを見計らう。


桃汰「明日が楽しみだなぁ♡」


と、言いながら桃汰さんは届いた烏龍茶を口に含んでから夢衣の口に移し、飲ませていく。


夢衣「…自分で飲むよぉ。」


桃汰「飲めるならなんでもいいんでしょ?わがまま言わないで。」


夢衣はまだ桃汰さんのことを拒否するからまだ洗脳が甘い方っぽい。


けど、今日桃汰さんと引き離せなかったら嫌な未来しか想像できない。


俺は今にでも夢衣の手を引いて逃げ出したいのを我慢して、アルコールが回り混濁し始める意識を必死に烏龍茶で醒めさせる。


さっき手元に来たこの烏龍茶1杯が俺の生命線。

その1杯を大切に飲んで酒も呑む。


にしても、こんだけ呑んで1度もトイレに行かない瑠愛くんと桃汰さんはどんな体をしてるんだと考えていると急に桃汰さんは立ち上がった。


桃汰「虹の架け橋見てくるー。」


瑠愛「さっさと行け。」


そう言って桃汰さんはなにも気にする様子もなくトイレに向かった。


瑠愛「一くん、夢衣ちゃん先に逃げてて。」


一「瑠愛くんは?」


瑠愛「お金払ったらタクシー乗ってホテル行くから大丈夫。」


と言って、瑠愛くんは俺たちの背中を押して先に桃汰さんの手から離れさせてくれた。


夢衣「…ひーくん、足重くて走れない。」


一「早歩きでもなんでもいいから離れるぞ!」


俺は足早に車道に行き、タクシーを拾って瑠愛くんが予約してくれたホテルに向かう。


夢衣「…運転手さん。」


「はい?」


夢衣「漏れる…。」


と言って夢衣は息を荒げ始めた。


俺は困惑してる運転手にすぐ止まるように言い、夢衣に外の空気を吸わせる。


一「揺れたりすると漏れそうになるのか?」


俺は夢衣の体の変化をしっかり聞いてこのタクシーを乗り捨てるか決めることにした。


夢衣「…うん。なんか桃汰とすると体がどんどん変になるの。」


一「…そっか。」


夢衣は異変を感じていても、正直に話すタイミングを桃汰さんに奪われ続けて昨日の俺にも言えなかったんだろう。


一「これから俺とホテル行くけどいい?」


夢衣「…でも、彼氏じゃないよ。」


と、夢衣は寂しそうに呟いた。


俺は助けるためにホテルに連れていこうとしていたけど、夢衣はその思考には至ってないらしい。


一「彼氏じゃなくて信頼出来る人としたいって言ってたじゃん。桃汰さんは信頼出来る?」


俺は体も心も限界が来てる夢衣の話に合わせることにした。


夢衣「…分かんない。」


一「俺は信頼できない?」


夢衣「…できる。」


俺は求めていた言葉を貰い、嬉しくて夢衣に抱きつく。


一「俺が夢衣のこと守るから桃汰さんじゃなくて俺の側にいて。」


俺がそう言うと腕の中にいる夢衣は小さく頷いてくれた。


一「タクシーは乗りたくない?」


夢衣「…ホテルまでどのくらい?」


俺は現在地を調べてみるとあと10分で着くところだった。


一「あと10分くらいだけど難しそう?」


夢衣「…ちょっと頑張る。」


一「またダメそうだったら止めてもらうから言って。」


夢衣「うん…。」


俺たちはまたタクシーに乗り、安全なホテルの部屋に向かった。





→ ほころびごっこ

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