7:00
俺は首の痛みを感じて目を覚ますと、昨日歩き続けた結果、東京タワーが見える公園まで歩き休憩していたら2人して寝てしまったようだ。
俺は寝ていてもまだ繋ぎっぱなしの手を1度握りしめ、ゆっくり離して俺の頭の支えになっていた音己ねぇの肩を揺する。
一「音己ねぇ、朝来てた。」
音己ねぇは俺が抱き込むように座らせていたけど、俺が寝てもずっとここにいてくれたんだな。
俺は音己ねぇの優しさを感じていると落ちていた頭が急に起き上がり、俺の鼻にクリーンヒットする。
音己「…朝来てる。」
そう言って音己ねぇは鼻を抑えて静かに痛みに耐えてる俺を不思議そうに見てくる。
きっと、なにが起きてるのか分かってないんだろう。
一「牛乳は?」
そんなことよりもいつもの音己ねぇにちゃんと会えたらこう言おうって思ったんだ。
俺の鼻が曲がってもそんなのどうでもいい。
音己「おはよう、だろ。」
そう言った音己ねぇは俺の頬をつねり、怒りながらも朝露に溶けた太陽のように優しく笑ってくれる。
一「おはよう、音己ねぇ。」
音己「おはよう。」
一「牛乳飲む?」
音己「私はサイダー。」
と言って音己ねぇは立ち上がり、その場で背伸びをして太陽を全身で浴びる。
俺も立ち上がり、尻の痛みを和らげるためにストレッチしていると音己ねぇが声をあげる。
一「どうしたの?」
音己「面接すっぽかした。」
一「ニート延長だー。」
音己「まあいいや。生きてるし。」
そう言って携帯に映し出される時間をしっかりと確認して、路線を調べ始める音己ねぇ。
音己「一はこれからどうする?」
一「全部終わらせる。」
俺は音己ねぇの目を見てしっかり気持ちが固まったことを伝える。
音己「私はちゃんと見てるから。あとは一がやるだけ。」
一「うん。ちゃんとやるから見てて。」
そう言うと音己ねぇは俺の前髪を上げ傷を優しく撫でて、今までで知ってる音己ねぇの中で1番の笑顔を見せてくれた。
音己「そういう一がいい。」
そうやって言ってくれる音己ねぇが好き。
俺が悲しい、寂しい、辛いと思ってる時に絶対手を差し伸べてくれるその手が俺の好きなものすべてを守ってくれた。
俺も全部終わらせたら好きな人にちゃんと手を差し伸べられるような人になれるように頑張るから見ててね。
俺は先に駅に向かう音己ねぇの背中に決意を伝え、近場のコンビニで飲み物を買ってからそれぞれの次の予定に向かった。
→ 春を歌にして