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一なつの恋  作者: 環流 虹向
8/6
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22:00

暗くなっても俺たちは付近を探したけど、夢衣は見つけられなかった。


しかも1番最初に夢衣を探しに行った将とも連絡が取れなくなり、2人の捜索願いを出そうか玄関先でみんなと話していると遠くから小さい明かりがこちらの別荘に近づいてくるのが見える。


一「夢衣…?」


奏「将かも。」


海斗「2人いるぞ。」


1番目のいい海斗がそう言い、俺たちはその明かりに向かって走ると真っ青だった夏空と満点の星空の今日なのに2人はびしょ濡れで楽しそうに笑い合っていた。


俺は1番に2人に抱きついて謝る。


一「ごめん。俺の自分勝手な言動でたくさん傷つけた。」


そう言うと夢衣と将が俺を潰すように抱きしめてくる。


夢衣「私もごめんなさい。…また、ひーくん傷つけた。」


一「俺がいっぱい夢衣の事、傷つけたんだ。されて当然だ。」


将「それは違うぞ。」


と、将が俺の頭を軽く小突き、顔を見上げさせる。


将「ちゃんと一は夢衣さんに昔のように付き合えないって言ったんだ。それでも夢衣さんが自分の好意を一に押し付けて、それを受け取ってしまう一に甘えてたんだ。…だよな?夢衣さん。」


将は夢衣の目を見て確かめる。


きっと俺たちが2人のことを探している間、俺と夢衣とのことを将は全部聞いたんだろう。


夢衣「…うん。彼氏じゃないのに彼氏って言ってごめんなさい。好きって言ってくれるままのひーくんが欲しかったの。…ごめんなさい。」


夢衣は自分のやろうとしていたことに涙を流し、俺に謝る。


俺は、昔も今も夢衣の所有物にしかなれないらしい。


好きな人ではなくて、愛の言葉を吐いてわがままを聞いてくれるラブドール。

それにしかなれない俺で、俺のことを好きと言ってくれる夢衣が好きなだけだった。


高校生の時、付き合った瞬間からそんなことに気づいていたのになんでここまで複雑に絡んでしまったんだろうな。


一「夢衣の気持ち、全部気づいてたのにそれを自分のために利用して夢衣の好意に俺も甘えてた。その好意が居心地よくて気づかないふりしてたんだ。ごめんな。」


夢衣「…2人でさみしんぼだね。」


一「…だな。」


夢衣の溢れる涙を俺は拭いてあげたかったけど、どうしても拭いてあげられなかった。


その優しさは夢衣には麻薬で幻覚を見させて俺を殺してしまうから。


それは目の前にいる夢衣も一緒で、いつも涙を拭いてくれるその手は俺の背中から離れないように必死に俺のシャツを掴んで離さない。


将「俺たちがいるから寂しくないだろ。」


と、将が俺たち2人の涙を毛の処理が甘い手の甲で雑に拭き取る。


将「ここにいる奴らは2人のこと大切に思ってるから。自分や目の前にいるお前たちだけじゃなくて俺たちを頼れよ。」


だよな?と将が後ろにいるみんなに聞くと、そうだと全員が答えてくれる。


明「夢衣さん。東京帰ったら俺と一緒に服見に行こうね。」


夢衣「うんっ…。」


海斗「一は俺の恋愛教授だからいないと困る。」


一「…頼られてる?」


奏「そうだよ。俺たちのバージンプロデューサー。」


一「他は頼っていい…?」


「「もちろん。」」


俺は海斗と奏の2人の声であの日のことを思い出してまた涙が溢れてくる。


音己「全員で飯。で、雑魚寝する。」


そう言って音己ねぇは俺の涙を拭き取り、夢衣の頭を優しく撫でて手を繋ぎそのまま別荘に向かう。


俺たちもその2人の後ろをついていき、別荘に帰って飯の支度をする。


奏「そういえばなんで将と夢衣さん、びしょ濡れだったの?」


と、風呂上がりの将に奏は聞いた。


将「一緒に滝壺に飛び込んで遊んでた。」


海斗「車で1時間のとこ?」


将「そう。暑かったしちょうどいいなって。」


明「俺も一緒にしたかったぁ。」


笑いながら将はそう言ったけど、夢衣は高い所あんまり好きじゃないし、将は泳ぎがあまり得意じゃないからまた別の理由なんだろう。


笑顔で答える将は水没して使える望みが薄くなった自分と夢衣の携帯を米と一緒にジップロックに入れてみんなで拝む。


そんなことをしながら俺たちが飯の準備を終える頃、夢衣と音己ねぇは飯が用意されたリビングに戻ってきた。


夢衣は目が腫れているけれど音己ねぇと使いたかった入浴剤を使えて満足そうな顔をしている。


音己「今日は豪勢だな。」


奏「昼分もあるからね。お腹いっぱい食べよう。」


一「だな。いただきます。」


「「「いただきます!」」」


このみんなで食う飯はどんなに味が不味くても美味しく感じるのは、思い出のスパイスが効いていて口の上にある脳みそが夕立のようにそのスパイスを散りばめてくれるからなんだろう。


俺は飛びきり不味いソースがかけられてしまった生春巻きと、味の濃すぎる皿うどんを食べながらその美味しさに笑顔が溢れた。





→ 相思相愛

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