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一なつの恋  作者: 環流 虹向
8/3
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12:00

少し早めに休憩を入れて、全員で近辺の山をドライブすることになった。


俺はいつも通り助手席に座って海斗を待ってると、運転席になぜか音己ねぇが乗ってきた。


一「音己ねぇ、車もいけんの?」


音己「リムジン乗り回した事ある。」


奏が言う通りなんでも出来るスーパーマンだなと思っていると、一緒に服選びをしていた明と夢衣がやってきた。


夢衣「またひーくんの隣じゃないの?」


夢衣は俺が開けていた窓越しに文句を垂れる。


一「景色見るの好きって言ったじゃん。」


夢衣は唇を突き出し、今日1番の拗ねた顔をした。


夢衣「…行かないっ。」


夢衣はそう言って家に戻ろうと俺に背を向けて歩き始める。


明「夢衣さん!行こうよ?」


夢衣「やだ!」


明の制止を聞かずに夢衣はそのまま家に入ってしまった。


音己「全員で行くんだ。」


一部始終を見ていた音己ねぇもわがままを言う。


一「…けど、俺ここに座りたい。」


音己「全員で山頂の山かけうどん食べに行くんだ。早く呼んでこい。」


一「…分かったよ。」


俺は2人のわがままに呆れながら車を降りて玄関に行くと、ばらけた夢衣のサンダルと靴を脱ごうとしてる奏たちがいた。


奏「なんか夢衣さん、怒ってたけど…。」


一「俺が隣じゃないと嫌だって。」


将「可愛いな。」


海斗「夢衣さんは運転出来るのか?」


一「免許はあるらしいけどゴーカート破壊した事ある。」


その言葉で3人とも無言になる。


一「とりあえず、呼んでくるから俺の席開けといて。」


俺は靴の脱ぎ散らかし、夢衣の部屋に行くがいない。

もしかしてと思い、俺は自分の部屋に行くと夢衣は俺のベッドの上でうつ伏せに寝転がっていた。


一「夢衣、みんなで昼飯食べるぞ。」


俺は夢衣の脚を揺らし、なんとか起きてもらう。


夢衣「…ひーくんの隣がいいの。」


夢衣はうつ伏せのまま、布団と前髪の隙間から俺を見てくる。


一「飯の時は隣になればいい。」


夢衣「車は?」


一「俺の後ろの席にいればいい。」


夢衣「ひーくんの顔見えないっ…。」


一「……今日の夜、一緒に寝るか?」


俺はしょうがなく別の案を出して夢衣の興味を別に惹く。


夢衣「…ダメだって言ってたじゃん。」


一「車の中の数十分と1晩一緒にいるの、どっちがいい?」


俺は夢衣を抱き起こして座らせ、擦れたマスカラを指で拭う。


夢衣「どっちも…。」


一「どっちか。俺は1晩の方がオススメかな。」


俺は俯く夢衣の顔を持ち、唇に軽くキスをするが俺の口元に少し痛みが走る。


一「昨日の続きしよ?」


俺は痛みに耐え、夢衣の目を見つめて最後の一押しをした。


夢衣「…うん♡」


機嫌が直ったら夢衣は嬉しそうに俺の手を引き、車に向かう。


音己「遅い。2人の奢りな。」


夢衣「…お財布忘れた!」


音己「じゃあ、一の奢りな。」


そんな時間をかけた覚えがないがここはしょうがなく、みんなを待たせたお詫びに奢ることにした。


全員乗った車の中では音己ねぇが好きなバンドの曲が大音量で流され、叫ぶように歌う後部座席にいるみんな。


けれど音己ねぇはそんなこと構わずいつも通り鼻歌を歌い、曲を楽しんでる。


俺はその中で時々見える海を見て、心躍らせているとあっという間に目的地のうどん屋に着いた。


俺たちは河原が見えるとても涼しげな席に通されて、品物を注文し終える。


俺は河原が見える1番端のいい席で川の煌めきを見ていると、隣にいる夢衣がテーブルの下で手を繋いできた。


夢衣「こっち向いてよぅ…。」


一「分かったって。」


俺は後ろ髪を引かれながら夢衣を見つめ話していると、驚くスピードで山かけうどんが届いた。


そのうどんは一本一本が綺麗に揃えられて艶めき、俺の背後にある川と同じくらい輝いて見えるような気がした。


俺たちはのど越し最高なうどんを食べ終えて、トイレ後に俺は食事の代金を払おうと店員さんに声をかけると『もう頂きましたよ』と、にこやかに言ってテーブルを片付けに行ってしまった。


俺は驚きながら、先に外で待つ奏と音己ねぇの元に行く。


奏「美味しかったねー。」


音己「毎年来るだけのことはある。」


一「誰が払ってくれたの?」


奏「あれ?一じゃないの?」


一「いや、もう貰ったって言われた。」


奏と一緒に頭の上に?を浮かべていると、トイレを済ませたみんなが戻ってくる。


音己「じゃあ、食後のアイスよろしく。」


と、音己ねぇは外にあるテイクアウト用の売店に向かい、選び始める。

俺は全員に精算のことを聞いたが誰も知らないらしく、店員にもう1度確認すると1番最初に店を出た女性が払っていったと教えてくれた。


どうやら音己ねぇが払ってくれたらしい。


自分から奢れと言っておいて忘れてしまったのかと、困惑していると音己ねぇが俺を呼び、みんなのアイスを奢らせた。


一「俺、うどん奢るんだと思ってた。」


音己「主食と嗜好品は別だ。」


音己ねぇは自分の好きな抹茶に練乳とあんみつをかけたアイスを見つめ、目を輝かせながら言った。


やっぱり音己ねぇの考えてることは分からないなと思いつつ、俺はミルクアイスを食べながら車に戻り、軽くドライブをしてから別荘に帰った。





→ 高嶺の花子さん

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