Prologue
俺が好きなおとぎ話。
母さんがいつもナイトシアターの空を見ながらこのお話をしてくれる。
今までの人生の中で1番大好きな時間だった。
・・・ミルクと王子様・・・
とある大きなお城にはいつも笑顔の王子様と王様、女王様、たくさんの召使いが住んでいます。
女王様が作る朝・晩のごはんを召使いたちが食べると元気100倍。とても賑やかになります。
その様子を見て、1人ごはんを食べていた王子様は羨ましく感じました。
ある日、王子様は召使いと一緒に町の様子を見に行きました。
すると新しいお店が出来ていたので入ってみることにしました。
そのお店にはたくさんの美味しそうな飲みものがたくさん売っていました。
王子様は昔から大好きなミルク、召使いは好きなオレンジジュースを飲むことにしました。
そのミルクは今までに飲んだことのないミルクで、甘くてとろとろ。
とても美味しくて王子様はそのミルクがお気に入りになりました。
しばらくするとそのお店はたくさんのお客さんで大にぎわい。
王子様は王様たちの目を盗んで何度もお店を楽しみに来ていました。
そんなある日、お店に王様の監視の目がやってきてしまいます。
王子様は見つからないよう、とっさにそばにいたお店の女の子の後ろに隠れます。
すると女の子が、
「裏口から逃げよう。」
と言って、王子様の手を引いて外に連れ出してくれます。
そのまま女の子は王子様をお気に入りの古い小屋に連れて行きました。
その中はとてもきらびやかで、王子様が住むお城にも負けないくらいでしたが何かが違います。
王子様はその何かには気づけませんでした。
けれど、その小屋は心地が良くて何回も遊びに行きます。
そこには王子様が大好きなミルクと女の子がいて、毎晩のように遊びに行きます。
その毎日が楽しくて晩から朝までいるようになってしまいます。
そんなことをしているとある朝、お城に帰った王子様を王様がお城の一番高い塔の部屋に閉じ込めてしまいました。
王子様はその部屋に1つだけある小さい窓から町を眺めてはミルクのお店と小さな小屋の前を通る人の流れを眺めます。
その中には前に遊んだ女の子たちが他の子と遊んでいるのを見て、王子様はちょっぴり寂しい気持ちになりました。
お月様とお星様が真っ黒な天上に上がるのを数え忘れる頃、王様がやってきて、
「お前がやる事はこれだ。」
と言って、えんぴつとノートと薬学の本をトビラ越しに渡してきました。
「国の民のためにお前が出来る事だ。」
と言って、王様はどこかに行ってしまいました。
王子様はえんぴつとノートを手にとって、窓に向かいます。
王子様は考える事が嫌いです。
だから、目の前に見える景色を描くことにしました。
けれど、目に移るカラフルな景色を描きたいのに黒色しか描けないえんぴつしか、自分のいる部屋にはありません。
王子様は頭を悩ませていると、ミルクのお店の女の子が自分の大好きなミルクを持ちながら手を振ってくれていることに王子様は気がつきます。
王子様はまたあの女の子に手を引いてもらいたいと思ってたくさん手を伸ばしていると、どんどん女の子の手が近づいてきてぎゅっと優しく握ってくれました。
王子様が塔の上からさいごに見た真っ赤な夕陽と白波の海が町の石畳に大きく描かれていきます。
王子様と女の子の持っていたミルクが町にずっと残る綺麗な夕陽と海を描きました。
王子様はそれを見てまた笑顔になりました。