美少女な俺様がレンの冥福を祈る!
「第2回、勇者パーティ女子会を開催する!(小声)」
その夜。
さてそろそろ明日に向けて寝ようかと寝袋に体を半分収めた時だった。
「どうしたんだ、メアリー。
そんな真剣そうな顔をして」
俺は、唐突に始まった女子会──なのだろうか?雰囲気が違う気もするが──に首を傾げながら尋ねる。
しかしステラはこれがどういう目的なのか察しているようで、寝袋には入らず、真剣な表情でその場に座っていた。
ステラが口を開く。
「わからないの、ファムちゃん師匠?」
「ごめん、全然わからない」
ステラの追及に、申し訳ない顔で応対する。
と、2人は肩をすくめた。
「今日、リザードマンの3人が新しくパーティに加わったでしょ?
だから、私たちのことをどこまで話してあげるべきか、話し合っておこうと思って」
言われて、そういえばと思い至る。
メアリーはイタリカ王国の第七位王位継承権を、自分の死を偽装したことで放棄した王女だ。
しかし生きていることがバレて、今は彼女を玉座に座らせようとしている第七王子派から逃げている最中でもある。
これまでそれらしいイベントがなかったから、つい忘れていたが……。
「俺たちのことって……あ、メアリーの出自の話とか?」
もし旅の途中で彼女が誘拐されるとか、王権争いに巻き込まれるようなことがあれば、バーラたちに迷惑がかかる。
だから、今のうちに話しておくべきかどうかとか、そういう話をしたいのだろう。
最初の夜も、きっとこうやってステラと話したのかもしれないな。
そんなことを思いながら尋ねたのだが、しかし彼女は首を横に振ってそれを否定した。
「んーん、それは別に話さなくてもいいの。
問題はファムちゃん。
私のかわいい妹についての話だよ!」
言って、ぐいっと俺の方に顔を寄せてくる。
あぁ、髪の毛から彼女の柑橘系の甘い匂いがふわりと漂ってくる。
マテヤの街で香油を付け直したせいだろう、以前より少しだけ匂いが強いが、鬱陶しさのない上品な香りである。
そんな彼女の圧に負けて少したじろぎながら、俺は『あぁ、そういえばそんな問題もあったか』と呟いた。
「そうだよ、ファムちゃん師匠。
今師匠が変装してる理由、忘れちゃダメなんだからね?」
ステラが『メ、だよ!』と最後に付け足しながら、人差し指を俺の唇に押し付けてくるのを、その指先を咥えることで誤魔化した。
「わはっへうお、ほへふはい」
じゅぽじゅぽ、レンにする様にステラの指を咥え、舐め回してやると、それで少し欲がえっちな方に傾いたのか、『もぅ、師匠ったら……』と顔を赤くさせながら指を戻した。
「んっ……。
まぁでも、良いんじゃないの。
俺が勇者だって伝えても。
今のところ、隠す理由も思いつかないし」
口元を拭って、そんな結論を2人に伝えた。
「俺が変装してるのは、ボルダリアで俺が勇者の偽物だって疑われて、アガレティアの剣術大会に間に合わないなんてことにならないようにするためだろ?
だったら別に、俺自身がホンモノの勇者とバレる分には、何も損がないわけだし」
それに、わざわざ自分が金髪に染めて、わざわざ俺のコスプレをするような奴から逃げようとしてるんだ。
俺が本物という信憑性も上がるし、そうなればもっとよく協力してくれる可能性だってある。
なんたって俺はかわいいからな。
そう説明するが、しかしどうやらまだ納得できてない様子の2人の表情を見て、『まぁ』とセリフを続ける。
「2人が納得しないんなら、別に今話す理由もないし、然るべき時まで黙ってても良いんだけどさ。
本心としては、どっちでも良い感じだし、その辺りは2人にタイミングは任せるよ」
今の容姿でも、十分あの3人は働いてくれそうだしな。
そう伝えると、どうやらそれには納得したらしく、2人はうんと頷いて話はまとまったのだった。
⚪⚫○●⚪⚫○●
異世界生活14日目。
早いもので、もう俺がこの世界に来て2週間が経った。
今ではもう前世の世界のことが昔のようで懐かしい。
昨晩の女子会で、俺たちの情報の解禁についてどうか話し合った後は、どうやら俺の指舐めテクでえっちな気分になってしまったらしいステラを発端にして、3人でゆりっゆりなあーんなことやこーんなことをして過ごした。
2人に俺が処女じゃなくなってしまったことがバレて、レンとの今の関係まで全部バレちゃったけど、まぁ、今更だし諦めることにした。
バレた時、ちょっとだけステラの表情が凶悪な感じに豹変したことには、正直ちょっとだけびびったけど……レン、大丈夫かな。
そういえば彼を紹介した時、なんかステラがあいつの耳に何か囁いて顔を真っ青にさせてた事があったけど……うん。
ステラのあの顔は、とりあえず見なかったことにしよう。
(しっかし、やっぱ男とのえっちと女の子とのえっちって、随分質が違うもんなんだなぁ。
片っぽは同性だし、今回は3人でだったからそれもあるんだろうけど……新たな発見だった……)
レンより断然気持ちよかったし、これからの処理はあいつとじゃなくても良いかもしれない。
そんなことを思いながらテントを出ると、バーラ、ゴール、ダットンのリザードマンズが朝食の準備をしてくれていた。
メアリーはまだ寝てたけどステラの姿がなかったし、もう起きてると思ったんだけど……。
「おはよう、みんな。
ステラは?」
簡易的に作られた竈門を囲んでいる3人に声をかけると、ビクッ!と大きく肩を震わせて、勢いよくこちらを振り向き、整列した。
「「おはようございます、姐さん!!」」
しかも、ビシッと敬礼までしている。
……いったい、何があったんだ?
「姐さんて……。
で、ステラはどこに?」
「ハッ!
ステラの姉御からは、どこにいるかは口蓋を感じられております故!」
ゴールが、汗……なのかな。
何かを垂らしながら、早口にそんな風に応えた。
うぅむ、なんか、嫌な予感がする。
そう思って、レンのテントの中の気配を探ってみれば──案の定、そこには誰もいなかった。
昨日の彼女の顔から鑑みるに、多分……。
(南無)
俺は、彼の冥福を祈るだけにすませて、とりあえず見なかったことにしたのだった。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございますm(_ _)m
もしよろしければ、ここまで読んだついでに感想、いえ、評価だけでもしてくれたら嬉しく思います。
そして、また続きが読みたい!とお思いであれば、是非ともブックマークへの登録をよろしくお願いしますm(_ _)m




