美少女な俺様がリザードマンを仲間にする!
右目だけめっちゃ充血して写輪眼みたいになっちったよ……。
RPGの強敵の定番といえば、まず何を思いつくだろう。
強靭な筋力ステータス?
それとも異常なまでの素早さか?
いやいや、忘れてもらっちゃ困るものが一つだけある。
それは──不死身かって思うくらいの増殖能力さ。
「けーっ、半分は持っていったと思ったんだけどなぁ」
リザードマンの男を全員後ろに下がらせた俺は、切り離した筈のオレンジ色のスライムが、2体に分裂して襲ってくるのを跳躍して回避しながら愚痴をこぼした。
斬れば斬るほど分裂して増殖していく。
全くキリがないったりゃありゃしない。
……けどまぁ、こういうやつの対処法っていうのには、ちゃんとセオリーってものがあるわけで。
「メア──」
呼びかけて、思い出す。
そういえば今は姉妹の設定なんだった。
「──お姉ちゃん!」
「わかってるよ、ファムちゃん!」
俺の呼びかけに反応して、少し離れた位置で待機していたメアリーが、空中に巨大な火の玉を作り出した。
そしてそれは、俺がその場から急いで離れたのとほとんど同じタイミングで、そこから小さな炎の玉を分裂させて、雨のように、2匹になったスライムたちの頭上に降り注いだ。
文字通りの炎の雨である。
スライムは炎に当たる寸前で分裂し、生き残るを繰り返す。
しかしその分裂速度が追いつかないのか、すぐにすべてが蒸発し尽くした。
いやぁ、凶悪凶悪。
こうして、俺たちは謎のオレンジ色のスライムを討伐することができたのだった。
⚪⚫○●⚪⚫○●
オレンジ色のスライム──アシッドブロブを退治し、その場から少し離れたところに移動した俺たちは、リザードマンの一行からお礼の言葉を受け取っていた──のだが。
「いやー、死ぬかと思ったっス!
この御恩は一生かけても返しきれるかわかんねっスから、どうっスか?
オレっチを伴侶にでも──イデデデデデ!?
ちょ、ゴール!?
シッポを踏まないでくれっスよ!?」
「すまぬ、恩人殿。
こやつの言葉は無視して頂いて構わぬ。
しかしこの命、一生かけても返せぬことはソレガシも同じ考えである。
ついてはソレガシを、主君の奴隷として──あだっ!?
ば、バーラ!
急に背後から頭を殴るとは卑怯ぞ!?
やるならこう、もっと柔らかいところをだな──むぐ!?」
「はぁ、すまねぇ。
どうやらまだこいつらはさっきのブロブのせいで混乱しているみたいだ。
だが2人の言う通り、君は俺たちの命の恩人。
お礼にと言ってはなんだが、サウスポーティアまでと言わず、雑用係なり何なり、好きに使ってくれ!」
「む、バーラ。
それはつまり貴殿もソレガシと同じく彼女の奴隷になりたいと、そう言うことか!?」
「そうは言ってねぇよ!?」
ギャーギャーと騒ぎ立てるリザードマン3人組に、俺は苦笑いを浮かべる。
まったく、騒がしい3人組だ。
しかし、種族も見た目も全然違うのに、こいつら人間に欲情できるんだな。
そういえば某ネット掲示板の都市伝説で、地球人はアクァッホとかいうリザードマンっぽい姿の宇宙人が遺伝子操作されてできたとかなんか、そういうのあったな……。
まぁ、それはそれとして。
「伴侶とか奴隷とかどうこうは却下だけど、旅についてきて雑用してくれるって言うのは正直ありがたいんだよなぁ。
……ねぇ、みんなはどう思う?」
一応、自己紹介の際に冒険者証を確認して、3人なら身元は確認が取れている。
スッススッス言ってるリザードマンの名前はダットン。
下から3つ目の階級であるCランクの冒険者で、クラスは錬金術師。
後衛補助職で、錬金術で生成したアイテム、例えば毒ポーションなんかを投げつけて、戦闘をサポートするほか、ちょっとした魔術を扱うことができる。
奴隷になりたがってる、黒いレザー装備に身を包んでいるリザードマンの名前はゴール。
ダットンと同じくCランクで、クラスは槍術師。
前衛火力職で、槍を使って敵を攻撃するメイン火力。
そして1番まともそうに見える、革鎧に身を包んだ、赤い鱗のリザードマンの名前はバーラ。
彼はレンと同じく冒険者ランクがBで、2人よりも強い。
クラスは赤拳闘士で、魔術と体術を同時に行使する前衛火力職。
パーティではバーラが攻撃、ゴールが後衛を守りつつ、ダットンは敵にデバフを仕掛けるスタイルで戦っているようだ。
この3人を旅の仲間に加えてもいいかどうか。
後ろの3人に意見を求めると、少しだけ考えてそれぞれの意見を口にした。
メアリーは、雑用をしてくれると言うのならば、夜の見張りや情報収集の面で役に立ちそうだという見解を示す一方、どうも俺のことを性的な目で見てきていることからあまり信用できないから一緒には行動したくないようだ。
ステラも同じ理由で却下。
レンはといえば、彼らの持っていた竜車を好きに使わせてくれるならば、予定より少し早く国境を越えられる上、雑用を押しつけられるし、男女比的に女所帯で肩身が狭い思いを抜けられると好評。
俺のことを性的な目で見てくる云々は、『俺がなんとかするから安心してくれ』と言うが……。
お前がいた番俺のことをそう言う対象で見てるということを、俺はよく知っている。
(一体どうするつもりなのだか)
とまぁ、最終的にレンが、メアリーとステラが不安な部分をなんとかするというので、まぁ、ちゃんと面倒見るなら、と、まるで犬を拾ってきた子供に折れるように、リザードマンズを仲間に加える運びとなった。
しかし、7人か。
勇者パーティも大所帯になったものだ。
でも、これでできることも増えた。
ダットンは素材さえ持っていけばいろんな薬品を作ってくれると言うしね。
ポーションを作るのも、市販のものを買うよりも、素材を集めて作ってもらった方が安くつくってものだ。
それに、移動も楽になった。
竜車は二頭引きなので、ラプトルも四頭に増えた。
サウスポーティアで専用のリード(っていうんだっけ?)を買って竜車につければ四頭引きになって、進行速度も上がる。
俺たちは荷台でゴロゴロしながら楽ができるし、これまでより多くの荷物が運べるようになるだろう。
荷台部分を改造して、キャンピングカーみたいな感じにするのもまたロマンがあっていい。
夜になってそんな話を6人にしてみると、『荷台部分を居住用に改造すると重くなってラプトルが疲れやすくなるからおすすめできないな』とバーラに却下された。
「ちぇー。
いけると思ったのに」
「まぁ確かに、ロマンではあるよな」
唇を尖らせる俺に、俺の隣に腰を下ろして焚き火を囲っていたレンが、苦笑いを浮かべた。
「やるなら、そうだな。
六頭引きくらいになれば、そこそこいけるんじゃないか?」
バーラがスープを口にしながら、代替案を提示する。
しかし、それだと泊まれる宿が限定される、最悪泊まれなくなるとゴールが却下。
「魔術で荷台を軽量化しつつ、空間を引き延ばせることってできないの?」
諦めきれず、俺はレンとは逆隣に腰を下ろしていたメアリーに尋ねることにした。
彼女は少し考えて
「魔力が維持できなくて潰れるのがオチだよ。
やるなら、どこかに別荘を買って、転移の魔術で繋げておく……みたいな感じにするのが現実的だと、お姉ちゃんは思うな」
「転移って、そう簡単に使えるようなものなの?」
「術式自体は簡単だよ。
だけど距離があるとその分魔力の消費も大きくなるから、ある程度の大きさの魔石を転移門にあらかじめセットしておく必要があるわ」
「そうなんだ……」
ゲームとかだと、転移とか瞬間移動って結構難しい魔術みたいに分類されてたりするから、てっきりこっちでも、使える人は少ないとか、現実的じゃねぇよ、みたいなものなのかと思ってたけど。
術式自体は簡単なのか……。
となると、問題になってくるのは転移門の燃料と別荘か。
各地に別荘があれば、一瞬でいろんなところを移動できるだろう。
そうなれば、何かあった時に便利だろう。
例えば急遽別の国に行かないといけない時とか……あれ?
その辺の法整備どうなってるんだ?
「なぁ、転移魔術で勝手に海外に行ったりするのって、やっぱり密入国になったりするのか?」
疑問に思ったので、今のうちに聞いておく。
「んーん。
そもそもそんなことはできないよ。
転移の魔術はたくさん研究されてるから、妨害する術式もあるんだ。
国境にはその妨害魔術が結界みたいに張り巡らされてるから、もし抜けたとしても警報が鳴ってわかるようになってるよ」
「へー、よくできたもんだな」
初耳なのか、感心した表情でバーラが反応した。
それから俺たちは食事が終わると、テントを張って明日に備えることになった。
冒険者ランク
冒険者のランクは、新入りのEランクから順に上がっていって、最高Sランクまであって、依頼の達成率と戦闘能力の度合い、個人の保有魔力量から決定されます。
Eランクまではある程度の依頼をこなすだけで上がることができますが、Cランク以降になるとランクアップのための試験をクリアしなければ、上のランクに上がりたくても上がれません。
ちなみに試験の内容は筆記と実戦。
筆記テストの内容は、冒険者ギルドの規定についての理解度を測るものと、どこでどんな素材が取れるかについての知識を試すものになっています。
⚪⚫○●⚪⚫○●
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