美少女な俺様がユーリアの街を出る!
ラプトルを二頭買い、雨具としてのレザーローブも買い揃え、全ての準備が整った俺たちは、早速ボルダリアへ向かうことにした。
と言っても、ボルダリアまでは馬車で2ヶ月ある。
ラプトルの足で行けば1ヶ月で到着するらしいが、これは距離と速度から割り出した数字らしい。
ラプトルも途中で休ませてやらないといけないことを考えると、大体1ヶ月半の旅程になる計算だった。
それにしても、ラプトルの厩舎に案内されたときはびっくりしたなぁ。
みんな一斉に俺の方を向いて突進してきたんだもん、何か悪いことしたかと思った。
ドワーフの人が言うには、これは彼らなりの求愛行動らしいが。
ラプトル、恐ろしい。
思わず《武気》で威嚇してしまってからは大人しくなったけど。
そんなわけで今俺たちはユーリア砦の外を、ラプトルに乗って走っていた。
乗り分けはレンが操作するラプトルに俺が、ステラが操作するラプトルにメアリーが座ることになった。
背中に感じるレンの硬い筋肉の体がなんか安心する。
乗るのはステラの方でも良かったのだが、そうするとレンの前に座ることになるのはメアリーになる。
メアリー、なんか魔物との戦闘の時、妙に距離が近いからな……。
ちょっと牽制しないと。
(そんなはずはないとは思うけど……)
勘違いであってくれ、なんて思うのは、きっと──。
ユーリア砦を抜けて数時間が過ぎた。
日が傾き始めたので、ここで野宿することになる。
レンの話によれば、次の街まではあと2日かかららしい。
一般的なルートを辿っていれば、今晩中には着くらしいが、今通っているルートはボルダリアまでの最短ルート。
いくつか森を抜けたりするので、街や村に着くまで日数がかかるようで、今日の野宿場所は、細い木が広い間隔で生えている森の中だった。
木にラプトルの手綱をくくりつけて場所を確保する。
「今日はここで野宿だな。
先に夜の晩をする順番を決めておくか」
沢のほとりに荷物を広げて、キャンプを設営し始める中、レンがそう提案してきた。
「じゃあ、じゃんけんで決めよう。
負けた人から順に番をするっていうのはどうかな?」
というわけで、4人でジャンケンをすることになった。
その結果、ステラ→メアリー→ファム→レンの順番で見張りをすることが決定した。
(ふむ、この順番なら2人にバレずにレンを襲えるな!)
レンは別のテントだし、多少声が出てもバレないはず。
早速今晩が楽しみだ!
⚪⚫○●⚪⚫○●
「ふぁ……っ。
さすがに、外でヤるのは体が痛いな……」
異世界生活10日目。
俺は痛む体をほぐしながら、レンの寝袋の中から身を起こした。
中は汗で蒸れており、むわっとしたイカくさい臭いに包まれている。
見張りは1人約1時間半で組んでいたため、俺とレンの番は3時間あったのだが、その間に3回勝負したお陰で、テントの中はひどい臭いだった。
ちなみにレンは起きた時にはすでにテントからは姿を消していた。
今回は時間が時間だけに、短めだったからな。
ナニがとは言わないけど。
メアリーとステラの気配を探ってみる。
するとどうやら2人とも今目を覚ましたところらしく、俺の姿が見えないことにちょっとだけ戸惑っているようだった。
(早く外出ないとバレるな……。
でも臭いがついてるし……)
俺は、レンのカバンから携帯用のリッカー・スライムの小瓶を引っ張り出して蓋を開けた。
手早く体を洗って、2人が外に出る前に俺も外に出ないとまずいことになる。
……けど、あえて臭いを残したままにするというのも、それはそれで一興……。
(いやいやいや、何を考えてるんだ俺は)
急いでスライムを取り出し、全身に塗りつけていく。
ぬちぬちとした感触が気持ちよく、思わず声が出そうになるのを我慢する。
しかし、持ち運び用途だけあって量が少ない。
これじゃ間に合わないかもしれない。
というわけで、俺は特に臭いのきつそうなところだけで済ませて、服を着替えてテントを後にした──のとほとんど同時に、メアリーとステラが顔を出す。
「「あ」」
思いっきり、2人と視線がかち合った。
「……」
スライムに汗とか汚れとか諸々食べてもらった後だというのに、背中が一瞬で冷や汗でずぶ濡れになる。
(どうする、俺!?
どう言い訳する!?)
高速で頭をフル回転させる。
時間的猶予は残されていない。
さぁ、考えろ!
考えるんだ、俺!
「あー、えっとこれは……そ、そう!
昨日ちょっと見張り番で眠くなっちゃってさー!
レン呼びに行ったついでにテントで寝かせてもらってたんだー!」
嘘というものは、いくつか真実を混ぜることでバレにくくなると何かのテレビ番組か本だったかで聞いたことがあった。
見張りで眠くなって、というのは嘘だが、レンを呼びに行くついでにヤってそのまま寝たことは事実だ。
……ヤったのは外だけどまぁそれは置いといて、半分くらいは事実である。
これならきっとバレないに違いない……だろう……。
「「……」」
じー、と見つめてくる2人の視線が痛くて、思わず視線を逸らす。
大丈夫、これ?
バレてない?
晒した視線の先には、朝食のスープを作って一足先に飲んでいるレンの姿が見えたが、少しだけ動きがぎこちない。
……ふむ、これはこれでかわいくていいな。
今晩のおもちゃにしよう。
そんなことを考えていたせいか、少しだけ頬が緩んでしまうのを自覚して、思わずさっと口元を隠す。
「……今回はそういうことにしておいてあげる」
一拍して届いてきたメアリーの赦し(?)に、ホッと胸を撫で下ろした。
旅の途中でヤるのは、やっぱり難しいか。
そう思う朝だった。
⚪⚫○●⚪⚫○●
予定によれば、今晩次の街にたどり着くはずなので、ラプトルには少し速度を上げて進んでもらうことになった。
とはいえ、彼らも動物だ。
肉を食わなければ体力も衰えるので、昼間に河のほとりに停めて、魚を獲ることになった。
「テムゼボン河だ。
この河は流れが緩く底が深いが、岸に近いところは比較的に底が浅い。
ここなら手掴みでも何らかの魚が獲れるはずだ」
目の前に広がるこの河は、見た感じかなり幅の広い河川だ。
幅が広すぎて向こう岸がほとんど見えないから、河というより海と言ってくれた方が信じるかもしれない。
レンは銛を作り出すと──おそらく彼の精霊術だ──靴を脱いでズブズブと河の中へ入っていった。
そして、真剣そうな眼差しで水面を睨むと、狙いを定めてそれを突いた。
なかなか様になっている。
経験者なのだろうか?
じわじわと水面が赤く染まって、ゆるやかに流れに呑まれて消えていく。
彼が銛を引き上げると、そこには1匹の魚が刺さっていた。
背中が黒くて、緑のラインが入っている魚だ。
「ラムズだな。
塩焼きにすると美味いが、ヒレに毒があるんだ。
まぁ、焼いて食えば解毒されるが、食わないに越したことはないな」
彼の解説に、へぇ、と頷きながら魚を受け取って、ステラに渡す。
彼女は既にできていた簡易的な調理台の上にラムズを置くと、大きなカバンから包丁を取り出して手早く捌いていく。
「ステラ、魚捌けるんだ」
あまりにも手際良く捌いていくその姿を見て、俺は感心して呟いた。
「えへへ。
砦での実習で習ったんだー♪
だから、ある程度の動物とか魚なら簡単に捌けるよ♪」
意外な特技を発見した。
持ってきた材料を使ってスープとか作ってるところは何度か見たけど、まさかこんなことまでできるなんて。
これが俗にいう、女子力が高いというやつだろうか?
「す、すごい……。
こんど俺にも教えてよ」
前世じゃ魚なんて捌いたことがなかった。
既に捌かれてる切り身をたまに買って楽しむくらいしかしなかったし。
「いいよ!
じゃあ今度からは私はファムちゃん師匠の料理の先生だね♪」
言って、彼女はニコリと笑みを浮かべた。
うっ、かわいい……!
俺の次にかわいい……!
閑話休題。
「それにしてもレン、魚にも詳しいんだ?」
また1匹、魚を獲ろうと銛を突く彼に、俺は声をかけた。
「色々詳しくなきゃ、冒険者なんてできねぇからな。
こういうのは、ギルドの図書館とかに行けばちゃんと学べるから、お前も暇があったら観に行くといいぞ」
へぇ、ギルドに図書館なんてついてるのか。
知らなかった。
今度ギルドに行ったら確かめてみよう。
そんなことを考えていると、後ろから抱きついてくる感触があった。
「ファムちゃん、ファムちゃん!
せっかく河に来たんだし、ご飯食べたらちょっと遊ばない?」
次回、水着回!(水着は持ってない)
⚪⚫○●⚪⚫○●
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