美少女な俺様が配達依頼を受ける!
ニンテンドーDS Lite の『世界樹の迷宮』にハマってて投稿遅れました。
あ、ちなみにシリーズの中でも一番最初のやつです。
楽しいですよね、あれ。
パーティの誰にどんな役割を果たさせるかちゃんと考えて行動しなきゃいけないし、レベルが上がると宿代上がったり治療代が上がったりするし、難易度が絶妙といいますか何といいますか。
面白いので一度ぜひ遊んでみてください(勧誘)。
今遊びなおしてわかったことは、ライトの頃の画面ってめっちゃちっちゃいなぁってこと。
びっくりするくらいちっちゃい。
かわいい。
DSに貼られてるイナイレのシールが懐かしい。
あとポケモンのタイプ別相性表。
なつい。
異世界生活9日目。
今日は珍しく自室で目を覚ました。
起きてすぐに股を確認したが、今日はおもらしをしていなかった。
(よし)
ほっと胸を撫で下ろす。
この歳になっておもらしを気にしなきゃいけないだなんて情けないとは思う。
しかしこれは仕方ないのだ。
息子がいない分貯められないから、膀胱の感覚も前世とは違う。
俺はそそくさと布団を畳むと、足早にトイレへと急いだ。
この世界のトイレは、水洗ではない。
ならばボットンかといえばそうでもない。
前世と同じような便器の形をしてはいるが、その奥にいるのは屎尿を餌とするスカトロジストなベージュ色のスライムで、排泄をするとそいつらが全部食って消臭殺菌までしてくれるのである。
つまり、ある意味この世界のトイレは前世よりも綺麗だ。
水を使わないから床がびちょびちょになることもないし、直接スライムが出たそばから食べていくので、拭くための紙もいらない。
したがってゴミが散乱することもなく、清潔な空間が保たれるという寸法である。
これを発明した人は素直にすごいとは思うが、その見た目が見た目だけに、最中はちょっと──いやかなりエロい見た目になるのは、仕方ないだろう。
股間を這い回るやや赤みのあるベージュ色のスライムによる舐めまわしに耐えれば、性欲も同時に収まって一石二鳥である。
ちなみに練金屋には携帯用トイレとして小型のスライムが瓶詰めにされて売られていたりもするが、それはまた別の話ということで。
「はぁ……はぁ……。
きょ、今日もちょっと激しかったな……スライム……」
自らスライムプレイをしに行ってるみたいだ、なんて思うと、こんなやつよりレンの方がずっと気持ちよかったことを思い出して顔を赤くする。
(あーもう、なんで!
考えないようにしてたのに!)
思い出す、肌に触れる感触。
あの日、好きだと自覚して、その日のうちにまぐわった。
少しこの行動は尻が軽いか、なんて今思えば感じるが、それでも他に取られないために先に手を打つには、自分にはこれしか思いつかなかった。
エロ本の読みすぎとは思うが、しかしあいつもたぶん童貞だ。
きっと心が揺らいで、俺のことを意識せずにはいられまい。
何より俺、超絶かわいいからな。
こんな子に迫られれば誰だって興奮するだろう……と、思っていたけど。
(あいつ、昨日もいつも通り平然としてたしっ)
まさか、気にしてるのって俺だけか?
かわいいから相手も喜ぶと思ったのは、単なる俺の勘違いか?
いや、そんなわけはない。
あいつは俺に一目惚れしてた。
だったらきっと動揺してるはず。
でも……でも……っ!
「なんか……反応が欲しいんだよ……」
俺は盛大にため息をついて、日課に向かうべくトイレを後にする。
一人称を変えてみるか?
いや、でもそれだとこの作品のタイトルが……。
などというふうに悩んでいると、下を向いて歩いていたせいか、俺は曲がり角を曲がったところで人にぶつかってしまった。
「わっ!?」
「うおっ!?」
バッ、と頭を上げて確認する。
そこに居たのは、背の高い茶髪の青年──レンだった。
「お、おはようレン!
きょ、今日は一段と暑いな!」
あっぶねぇ!
聞かれたか!?
俺は顔が赤くなるのを気温のせいにして、襟をパタパタしながら顔を逸らした。
「そうか?
今日は風があって涼しい方だと思うんだが……」
しまった!
俺としたことがこんなミスを……っ!
「そっ、そうだなっ!
今日は風があって涼し──」
俺は慌てて言い繕う。
が、顔を見れない。
さっきまで意識しすぎたせいだ。
そんな俺の行動を変に思ったのか。
俺が言葉を言い終わるかどうかのタイミングで、こちらの顔を覗き込んだ。
「──ミカネ、お前もしかして熱中症じゃねぇのか?
ちゃんと水分補給しろよ、ほら、俺の水分けてやるから」
言って、手に持っていた水筒──というか水袋を俺に押し付けた。
「あ、ありがとう」
受け取って、栓を抜いて一気にごくごくと呷る──が。
「俺の飲みさしだけど、すまんな」
思い出したように告げられたそのセリフに、思わず口の中にあった水を吹き出してしまった。
「ぶふっ!?
そ、それを先に言えバカッ!」
「いやっ、すまん!
まさか嫌がるとは思わなかったんだ!」
「い、嫌とかそんなんじゃなくて……っ!」
あーもうこいつは……っ!
(不意打ちは、流石にずるい……)
俺は濡れた口元を袖で拭いながら、彼を睨みつけた。
「ほ、ほらっ!
朝の鍛錬に行くぞ、レン!」
ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょう!
こんなんじゃ、まともに顔見れないじゃないか……!
俺は誤魔化すようにレンの膝裏を蹴りつけると、そのままスタスタといつもの訓練場へと急ぐのだった。
ちなみに、レンはその痛みでしばらく動けず、そのまま廊下に放置されて遅刻した。
⚪⚫○●⚪⚫○●
アガレト皇国までは、ここから北西に馬車で2か月のところにある。
そのため俺たちはその日の午後は、皇国へ向かうための準備として、まずは国境付近にある街へ行く予定の護衛依頼を受けようということになった。
冒険者という職業の人には、2種類のタイプがいる。
一方は一つの街を拠点として活動するタイプの冒険者。
そしてもう一方はさまざまな場所を移動しながら活動するタイプの冒険者。
そんな中で後者の冒険者たちにとって常識とされている街から街への移動手段は何なのか。
それが護衛依頼。
むしろこの依頼は、そのためにあると言っても過言ではない。
まぁそもそも、レンの話によれば冒険者という職業自体、この護衛依頼を遂行する人たちがより集まってできたものらしいが。
「アガレト国境までの護衛依頼は……あった、これだ。
あ、これもそうだ」
冒険者ギルドの依頼掲示板前。
俺は、そこに貼られた依頼書を見ながら指摘する。
アガレト皇国との国境にある街はボルダリアというのだが、そこに向けての配達依頼や護衛依頼がかなりの数貼られているのだ。
「ボルダリアはアガレトとの交易で栄えているからな」
「行ったことあるんだ?」
依頼書の一つを吟味しながら答える彼に、俺は確かめるように尋ねる。
「俺はもっと北の方──連邦の北部出身だからな。
ここはまだ結構田舎の方だぞ?」
その言葉に、俺はメアリーとステラの方を見る。
すると2人ともうんうんと同意するように頷いた。
マジか……。
この街大きいから、てっきり都会だと思ってた……。
「メアリーたちが住んでたところはどんなだったの?」
気になって、2人に尋ねる。
「ここよりもっと高い建物がいっぱい並んでたね。
魔導列車って言って、おっきい乗り物が走ってたり、魔導車っていって、馬を使わない馬車がたくさん走ってるの」
「へ……へぇ……」
メアリーがニコニコしながらそんなふうに説明してくれるのを聞いて、俺は顔をこわばらせた。
魔導列車……って、何だ?
電車か?
もしかしてこの世界って中世じゃなくて近代?
馬を使わない馬車って表現は思いっきり車だよな!?
自動車だよな!?
俺はバッとレンの方を振り返ると、その耳を引っ張って顔を近づけた。
「いだだだだ!?
何、なんだよ!?」
「な、なぁレン。
ここってもしかしてよくある中世世界じゃないのか?
もしかして近代か!?
近代なのか!?」
「なんだ、そんな事か……」
俺の指摘にため息を吐きながら、耳を引っ張る手を引き剥がして、ペラペラと応え始めた。
「そうだな。
この世界は前の世界と違って魔術文明が発達しているから、正直参考にはならんが、科学単体の技術レベルや知識レベルだけを鑑みるなら中世って認識でほぼ正解だ。
しかしさっきも言った通り魔術文明を加えるとそうもいかないな。
ある側面から見ればこの魔術文明というのは地球での現代科学技術を大きく凌駕するからだ。
文明的なあり方を見れば中世というよりお前のいう通り近代に近いし──」
しかし、俺には彼が何を言ってるかさっぱり理解できなかった。
それは結局近代なのか中世なのか、はたまた未来なのかもさっぱりわからない。
一方でメアリーやステラも彼が何のことをペラペラ喋っているのかわからないようで、何言ってんだこいつ?みたいな顔で見ていた。
「──そういう側面で見ればカルダシェフ・スケールでいうところのタイプIIに届きそうなタイプIと見ることもできる。しかしそう見るにはまだ──」
次第、俺の頭は真っ白になっていったので、とりあえず元の世界と比べても参考にはならないのだろうな、というところだけを理解して聞き流した。
「──というわけだ」
「お前って時々、頭いいのか悪いのかわかんないよな」
聞いて損したかもしれない。
そんな風に思いながら、俺たちは依頼選びを再開したのだった。
⚪⚫○●⚪⚫○●
結局捕まえた依頼は、護衛依頼ではなく配達依頼だった。
ボルダリアにあるトルソン魔具工房というところまで、魚眼石を配達して欲しいという内容だった。
魚眼石は、メアリーの話によると魔術義眼と呼ばれる魔具の基礎材料らしく、火山地帯でしか取れない鉱石らしい。
『石灰岩のヒビにマグマが流れ込んで、その表面にできたりするんだ』というのはレンの言葉だ。
実に物知りだ。
知識の伝達の仕方は下手だが。
というわけで依頼を受けた俺たちは、依頼主の待つ商業ギルドまで向かった。
ちなみにアポとかは冒険者ギルドが通信用の魔具を使ってとってくれているらしい。
電話……あるんだよなぁ、この世界……。
電話じゃないけど。
冒険者ギルドが提携している商業ギルド、その待合室に通されると、金髪翠眼のキツネの獣人少年と、同じくキツネの獣人の青年が待っていた。
2人とも緑を基調とした衣装に身を包み、ポーカーフェイスの笑みを貼り付けている。
確かに2人とも風貌は商人っぽいが、青年の方はソファの後ろで控えていて、どちらかといえば小間使いのように見えた。
「お待ちしておりました、レンウォード殿御一行様。
お話は伺っております、魚眼石の件を受けてくださると」
一応、一番歴が長いレンがパーティリーダーということもあり、向かいのソファにはレンが腰を下ろし、俺たちはその両隣に腰を下ろした。
「はい。それで、量はいかほどに?」
「今回は小口の注文なので、30キロ程ですね。
これを、ボルダリアにあるトルソン魔具工房まで配達して欲しい、というのが今回の依頼となります」
「なるほど」
頷いて、メアリーの方へ視線を向ける。
すると彼女はその視線の意味が何かわかったのか、コクリと小さく頷いて返した。
「そのくらいの量であれば問題ありません。
うちには優秀な運び屋が居ますから、万が一盗難の恐れもありません」
「そうですか、羨ましいですね」
2人の会話──というか、面接?──の間、俺は暇なのでとりあえず周囲の気配を確認することにしていた。
漫画の見過ぎかもしれないが、だいたい商談の席には、商人を護衛する人がいるものだ。
冒険者というものは荒くれ者なイメージがあるから当然だろう。
部屋に入った時に、隅に防犯用のガーゴイルが設置されていたことからも明らかだ。
(彼が護衛を伴ってないのは、ガーゴイルがいるからかと思ったけど)
気配を探れば、こちらからは死角となっているソファの陰に、1人分の気配を感じ取ることができた。
おそらく万が一の時のための護衛だろう。
天井裏にも1人控えているし、なかなか用心深い男のようだ。
(今の身体能力なら……そうだな、10秒あれば制圧できるかな)
暇つぶしにそんなことを考えているうちに、いつの間にか面接は終わっていたらしい。
青年の方が少年にこそこそと耳打ちすると、彼は少し驚いたように目を見開いてから、ニコリと笑顔をこちらに向けた。
「合格です。
それでは荷を停めてあるところへ案内いたします。
スイセン、あとは頼んだ」
「承りました。
それでは御一行様、こちらへ」
少年に一礼し、スイセンと呼ばれた青年に従って裏口へと移動する。
裏口まで案内される最中、幾度となくスイセンからさりげない視線を貰った気がしたが……もしかして、惚れられたのだろうか?
だがすまない。
俺にはもうレンという男がいるからそれは無理な相談だ、諦めてくれ。
俺は苦笑いを浮かべると、わざとらしく、見せつけるようにレンの腕にくっついて歩こうとするのだった。
メイジ
冒険者のクラスの一つ。
杖を装備して魔術を操り、パーティの戦闘のサポートをしたり、あるいはメインアタッカーとして攻撃を担当する万能職。
その中でも役割によって、補助を担当するホワイトメイジ、火力を担当するブラックメイジ、火力を担当する中でも、魔術だけでなく武器で攻撃したりもするレッドメイジなどの役割がある。
補助、回復、防御、火力と全てを担うことができるため、パーティの要とされる。
冒険者の戦闘は、いかにメイジの力を引き出せるかにかかっていると言ってもいいくらい重要な役割を果たしている。
勇者パーティではメアリーが担当するが、彼女の場合はメイジの中でもホワイトメイジに分類される。
⚪⚫○●⚪⚫○●
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