美少女な俺様が気絶する!
「秘剣──《千鳥返し》!」
──次の瞬間、俺の姿はその場から掻き消えていた。
かと思えば次の瞬間には雷のような音が森中に響き渡り、石の葉は地面に落ちて、デミトレント・ゴーレムの幹は粉々に砕け散っていた。
「──ッ!?」
俺たちは、奴との勝負に勝つことができたのだ。
それだけは見間違いようもなく、その場にいた全員がたった一つ理解できたことだった。
遅れてやってくる衝撃波と轟音は、かろうじて《障壁》が耐え抜いた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
ぶっつけ本番だったけど、なんとかなるもんなんだな……。
俺はその場に崩れ落ちながら、剣を地面に落とす。
見れば刃はボロボロで、ほとんど炭化してしまって使い物にならなくなっている。
「ファムちゃん師匠!」
初めに駆け寄ってきてくれたのはステラだった。
地面に仰向けに倒れ伏した俺を抱え込んで、意識の有無を確かめるように目の前で手を振る。
「はぁ、はぁ、はぁ……大丈夫……ちょっと……思ったより……体力……持ってかれた、だけ……だから……」
もうほとんど力が入らない。
全身の皮膚が痺れて、体の中が熱くなって、頭がぼぅとする。
「魔力が荒れてる……。
多分、一気に魔力を取り込みすぎて暴走を起こしてるんだ」
そう解説してくれたのは、後からやってきたメアリーだった。
「魔力が、暴走……?」
「今の状態を例えるなら、深い湖に大量の雨が降って氾濫してる状態だね。
しばらくすれば湖も広くなって、氾濫も収まるけど──今日1日は、もう無理しないほうがいいよ」
言われて、そういうことかと納得する。
どうやらさっきのゴーレムは、なかなかいい経験値を持っていたらしい。
その大量の経験値を俺が一気に獲得したせいで、体内の魔力がびっくりしてこんな症状が出ているのだろう。
(いくら経験値がもらえたかとかレベルが上がったとかわからないから、まったく実感がわかないけど……)
俺は心の中で呟きながら、目を閉じた。
瞼が重い。
「ごめん、みんな……。
俺、もう動けないから、撤収とか……後諸々……よろしく頼む……」
俺はそう呟くと、そのまま無責任に意識を手放した。
⚪⚫○●⚪⚫○●
気がつくと、俺はベッドの上に寝転がっていた。
嗅ぎ覚えのある甘い匂いに鼻をひくつかせながら体を起こしてみると、掛けてくれていたのだろうピンク色のブランケットがずり落ちて、パジャマ姿に着替えさせられた俺の体が現れた。
どうやら俺は、メアリーのベッドに寝かせられていたらしい。
「……どれくらい寝てたんだろ?」
全身の筋肉痛に顔を顰めながら、ベッドから降りる。
リビングには誰もおらず、窓の外を見るとちょうど昼時だということがわかった。
クタの大森林に行った時より太陽が高い。
もしかして俺、丸一日寝てたのか?
そんなことを考えていると、扉が空いてステラと、続いて彼女と扉の隙間から縫うようにして、メアリーが飛び出してきた。
「ファムちゃーぁんっ!」
「うわっ!?」
思わず後ろに仰反るものの、しっかりと彼女の体を抱きとめる。
「心配したよ〜っ!
だって丸一日起きてこなかったからさぁ!」
(丸一日……)
やっぱり、それくらい時間が過ぎていたようだ。
俺はメアリーの頭を撫でながら、心配をかけた仲間に少し申し訳ない気持ちになって、苦笑いを浮かべた。
「心配かけてごめんね、3人とも」
視界には映らないものの、部屋の外で待機しているらしいレンも含めて言葉を吐き出す。
『ごめんね』とは言っているが、謝罪よりも感謝の感情の方が大きかった。
嬉しかったのだ。
俺のことを心配してくれる仲間がいたことが。
心配をかけたこと自体は申し訳ないとは思うが、それで3人を守れたのなら本望。
俺はステラも一緒に両腕に抱き抱えると、そこからしばらく動かなかった。
⚪⚫○●⚪⚫○●
異世界生活7日目は、体を安静にするために何もしない休息をとって終了した。
その日の晩は、メアリーとステラの3人でお風呂に入って、ちょっといちゃいちゃしてから寝ることになった。
たとえば、お互いにスライムを塗りつけあったり、おっぱいを揉みあったり。
そうそう。
これはメアリーが見つけてくれたことなんだけど、俺のおっぱい、少しだけサイズが大きくなってたんだ。
まだブラをしていて苦しい感じはないから買い替えなくても良いかな、なんて話をステラにしたんだけど、そしたら『形崩れちゃうし、将来垂れちゃうよ?』と忠告をもらったので、素直に明日買いに行くことを告げた。
あーぁ、せっかくレンに選ばせて買ったのに、勿体ない。
──と思っていると、どうやら自分が使ってるものを持っていけば、サイズが合うように作り直してくれるのだという。
新しく買うよりちょっと安くつくのでオススメなのだとか。
というわけで、明日は3人でデートに行くことになった。
というのも、ステラの方もちょうど胸がまた大きくなっていたらしく、調整しにいかなければならなかったようだ。
メアリーはといえば、ちょっと羨ましかったのか、ムカっ腹ついでにステラのおっぱいを揉みしだいて、きゃーきゃーと騒いでいた。
……そういえば、メアリーからこの前もらった下着、というかショーツ。
女の子ものだったけど、彼女はどうやって履いていたのだろう?
いや、だってほら。
彼女にはタマはなくても象の鼻のごとく立派なものがあるから。
そのサイズはレンのものとほとんど変わらないし……まぁ、長さはそうだけど細い……って、俺は何を見てるんだ……。
完全に思考が女子のそれに堕ちてやがる……。
胸が大きくなったというのも、何か関係してるのか?
ホルモンバランスとかいうやつか?
このままいけば、俺、もしかして女の子の日、体験しちゃう日も近いのではないか……!?
自分の股間から赤い液体が流れてくるのを想像して、背筋がゾワゾワってなる。
あー、なんかちょっと怖いかも。
目に見える外傷ならともかく、体内から血が流れるのは正直怖すぎる。
(生理痛、筋肉痛に紛れてくれたら良いんだけど……)
生前の噂を聞く限り、たぶん無理だろうなぁ。
そんなことを考えると、少し胃のあたりがキリキリしてくるのだった。
──ちなみに、その日は念のためバスタオルを股に敷いて寝たが、翌日起きた時には何も変化はなくてめちゃくちゃホッとしたのは、また別の話。
レンジャー
冒険者のクラスの1つ。
主に弓を使った遠距離射撃による援護を担当するが、剣やナイフと言った近距離の攻撃手段も併せ持ったバランスタイプ。
パーティではサブアタッカー(副火力職、第二火力職)を担当して、メインアタッカー(主火力職、第一火力職)に加わるヘイトを分散させる役割がある。
勇者パーティではレンが担当している。
基本的に弓での遠距離攻撃がメインのため、弓を用いたスキルが数多くあり、中でも《ミサイルショット》と呼ばれるスキルは矢が命中するまで追いかけ続けるスキルとして有名である。
⚪⚫○●⚪⚫○●
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございますm(_ _)m
もしよろしければ、ここまで読んだついでに感想、いえ、評価だけでもしてくれたら嬉しく思います。
そして、また続きが読みたい!とお思いであれば、是非ともブックマークへの登録をよろしくお願いしますm(_ _)m




