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美少女な俺様が世界を救う!  作者: 青咲りん
ミッション1:草原グールを討伐してみよう!
5/70

美少女な俺様がファムファタる!

メタファーネタぶっ込んでみました。

 異世界俺TU(ryモノといえば、定番おきまり展開ネタというものがいくつかある。


 たとえば、『初めての街(村)で悲鳴を聞いたら美少女が襲われていたので助けたらハーレムに入っちゃいました』や、『オレ、なんかやっちゃいました?』ネタ。

 王道を行く作品ならば──こと、な(ピー)う系列では多くみられるたぐい展開ネタ


 そんな、上二つと並ぶほど超絶有名な展開ネタが、もう一つ──数えればキリがないので、あえてここではそこから一つ抜擢ばってきして──『いかにも自分が発明しました!と見せかけて実際は異世界からの輸入です』ネタがある。


 このネタは──もうわざわざ展開にルビ振るのもやめた。めんどくさい──意図してその様にしているパターンと、そうでない、偶然の提案がその様な事態になってしまうパターンの二つに大別される。


 ……なので、先に断っておきたい。

 このパターンは、ずばり後者である、と。


「「ジャンケン……?」」


 いがみ合う2人が、口を揃えて首を傾げた。

 そんな様子を見て、え、マジかよジャンケン知らないってあり得るのかよ。と一瞬驚いた様に体をのけぞらせる。


「あー、えっと、ジャンケンっていうのは──」


 ──子供の遊びの一種で。

 そう言いかけた時、はたと自分の設定を思い出す。


(そういえば俺、今記憶喪失の設定だったんだーっ!?)


 笑顔でセリフを言いかけたまま、停止するミカネの様子を、2人は黙って見つめる。


 記憶喪失だという設定なのに、ここで『子供の遊びの一種で〜』などと言ってしまえば、自身が記憶喪失というのは嘘だと白状してしまうのと同義になってしまう。


 ということは。


(言うのか、言ってしまうのか、あの禁断のセリフをーッ!?)


 ダラダラ、と汗が背中を流れていくのを感じる。


(──いや、そもそも、だ)


 首を振って──あくまで心の中でだが──考えを改める。


(そもそもそんなこと言ったって、誰に遠慮してるって言うんだ。

 多分ジャンケン作ったのって、まぁこれただの予想だけど古代中国にあった数拳ってのがモデルなんだろ、どうせ。

 なら、この世界じゃ『俺様が作ったんだぜ!』なんて嘯いたって誰も疑いやしねぇ!)


 いろいろ、誰に対しての言い訳なのかさっぱりわからなかったが、おそらくこの場面を外の世界から見ているだろう読者に対して、一応の説明責任は果たした。

 ……と言うことにして、固まっていた顔でそのまま続きのセリフを口にした。


「あー、ジャンケンっていうのは、俺様が考えた平和的な問題解決法なんだぜ!」


 ビシッ!と、親指を突き立て、芝居がかった仕草でヤケクソ気味に言ってのける。


(言いきったぁーーーーッ!

 これでもう後戻りは出来ねぇぜこんちくしょぉぉおおお!!!!)


 後戻りとはいったいなんなのか。

 自分でもよくわからないことを心の中で叫んで、胸の内側で拳を天に突き上げた。


 そんなことはさておき、そんなミカネの心の内側のことなどつゆとも知らない2人は、『ほぅ、そんな方法が』などと、興味深そうな反応を示して続きを促せた。


「それで、どんな方法なんだ?」


 ミカネはジャンケンのルールを説明した。

 グーと、チョキと、パーの三種類の手の形があって──うんぬんかんぬん。


「はぁ、なるほど、三竦さんすくみの原理をこんな方法で応用したのか」


 説明を聞き終えた後、アビが感心したようにそんな感想を漏らす。


 三竦みの原理、というのは、まぁなんとなく意味がわかったが──これ、そんな名前なんだな。と、ほへぇ、と呆けた顔でとりあえず頷いておく。


「んじゃあ、せっかく嬢ちゃんが提案してくれたんだし、これでどっちが嬢ちゃんをハンス中隊長のところに連れていくか、勝負しようじゃねぇか」


 ニヒ、と口角を上げて、バトスが拳を振り上げた。


 しかし、そんな様子の彼を見たアビはといえば、少しだけ顔を青く染めて両掌をこちらに向け、顔を逸らした。


「あー、いや、俺は遠慮しとこうかなぁ……なんて」


 心なしか、すこし声が震えているような?


 不審に思い、小首を傾げて見せる。


 ──が、なんてことはない。

 その理由はすぐにわかった。


「おい、バトス。

 お前何仕事サボって遊んでんだ、あぁ?」


 低い、唸るような声が頭上から降ってくるのが聞こえて、そのまま頭上を見上げた。


 するとそこには、分厚い筋肉に覆われた、金髪の巨漢がこちらを見下ろしていた。


「は、ハンス中隊長ッ!?」


「おう、バトス。

 今日の昼飯にゴブリンの腰布をぶち込まれたくなきゃ、早く弁明してみろ」


(うわ、なんだこの人めちゃこわ)


 筋肉隆々ってだけでも怖いのに、その上巨漢で、声も低くて、おまけに口も悪い。

 よくこの2人、俺のためにこんな怖い人のもとに行こうとしてたな。

 ていうか俺こんな人のところに連れて行かれそうになってたのか、マジかよこっわ。


 ハンス中隊長と呼ばれた彼の態度を見て、どんな人だろう、優しい人なのかな、とか想像していたのが一変。

 どちらかといえば不良っぽい出で立ちの人が現れて、ちょっとおしっこが漏れそうになった。


「ハッ!

 実は、記憶喪失で森に迷い込んでいたという少女を保護いたしまして!

 どちらが彼女をハンス中隊長のもとへお連れするかを、彼女が考案したジャンケンという方法で決めようとしていたところでありますッ!」


 そんなバトスの弁明を聞き、ハンスは視線をこちらへと移した。


 濁った青い瞳が、こちらを見据える。

 俺はといえば、蛇に睨まれたカエルのように動けなくなっていた。

 たぶん、涙くらい流していたかもしれない。


 しばしの沈黙。

 その後、ようやくして開かれた唇からはじき出されたのは、どこかで聞いたことのあるセリフだった。


「……結婚してくれ」


「……ふぇ?」


 どこかで聞いたようなセリフに、一瞬デジャヴに陥る。


 しかし、そんな面食らった表情のミカネの肩をガシッと鷲掴みすると、静かに、そして真剣な顔で続きを口にした。

 ちなみに、この時バトスが吹き飛ばされて壁に刺さっていたのはまた別の話。


「バテリアの東に、俺の別荘がある。

 田舎だが、ゆったりとした時間の流れと空気の美味い農村だ。

 そこで2人で暮らそう。

 子供は、そうだな、12人くらいどうだ?

 家族だけでブロウンボールができるぞ。

 俺の夢だ、どうだ、いいだろう?

 きっと楽しいはずだ。

 休日には子供たちと遊んで、食事時はわいわいと騒ぎ、夜はみんな同じ布団に入ってその日のことを話し合いながら眠りにつく。

 鶏の鳴き声と共に目覚め、くわを持ち、畑仕事に出る俺を君は笑って子供たちと見送るんだ。

 まさに理想的な生活だ、どうだ?」


「いや、どうって言われても!?」


 積極的なアプローチ。

 早口に提案されたそのセリフは、いつかどこかで聞いたようなセリフで、あ、こんなセリフを生で聞ける日が来るなんて、人生何があるかわかんないなぁ、アハハーwとか思いながら聞き流していたら、最後の『どうだ?』で一気に現実まで引き戻された。


「そ、そうだな。

 いきなり結婚というのも、君に失礼か」


 彼のセリフに引いていると、シュン、と落ち込んだように、肩を掴んでいた手の力を緩めた。


「わ、わかってくれて何より……」


 苦笑いを浮かべて、彼が理性を取り戻して引いてくれたことにほっと安堵の息を着く。


(人の理性を一瞬にして蒸発させるこのかわいさ。

 わりとマジで凶器だわ)


 ──が、しかし安心したのも束の間。

 続いて紡がれた彼の言葉に、ミカネは思わず顔を強張らせなければならなかった。


「まずはお互いを知るところから始めないといけないな。

 というわけで、俺の恋人になってくれ!

 そして世界中を旅しよう!

 世界の綺麗なところを見て渡って、そしてお互いのことを知っていくんだ!

 そしてやがて気を許した2人は結婚──」


「ちょっと待った!

 俺様が宇宙一かわいいのは神に誓ってその通りだが、そもそも俺様はどっちか選べと言われれば女の子の方が好みなんでそんな未来は永劫やってこないのですみませんお断りさせていただきますごめんなさいッ!!」


 自分の理想を意気揚々と押し付けてくるハンスに、いやもうこれ絶対ここで止めないと止まらなくなって最終的に犯罪紛いな方法で教会で愛を誓わさられかねないと悟ったミカネは、話を途中でぶった切ってごめんなさいのセリフを勢いに任せて吐き出した。


「「「なっ、なんだってぇ!?!?!?!?」」」


 驚愕の事実──あくまで彼らにとってだが──に声を揃え、この世の終わりだとでも言わんばかりに絶望的な表情で撃沈する3人。


(レンとかいう冒険者の一件で、男を掌で操るのは楽しいと感じていたが……)


 ミカネは、打ちひしがれて四つん這いに項垂れる3人を見て、背筋をゾクゾクとしたものが駆け上ってくるのを感じ、両腕で体を抱き寄せた。


(──確信した!

 やっぱり楽しい……ッ!!!!!!)


 そこには、変な性癖に完璧に目覚めた銀髪碧眼の絶世の美幼女と、失恋した3人の男という構図が出来上がっていた。

 ここまでお読みいただき、誠にありがとうございますm(_ _)m

 もしよろしければ、ここまで読んだついでに感想、いえ、評価だけでもしてくれたら嬉しく思います。

 そして、また続きが読みたい!とお思いであれば、是非ともブックマークへの登録をよろしくお願いしますm(_ _)m

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