美少女な俺様が弟子に稽古をつける!
一部戦後の教科書みたいになっていますが気にしないでください。
異世界生活5日目の鳥の鳴き声が、俺の耳朶を優しく叩いた。
俺はゆっくりとその銀色の睫毛を開くと、蒼い瞳に1人の男の寝顔を映した。
ゆっくりと寝息を立てるその顔は、昨日のアレを経た後ではかわいらしい。
意外と柔らかい茶色の髪に腕を回して抱え込むようにしながら、俺は彼の頭を撫でた。
(勢いでこんな事になっちゃったけど……うん。
後悔はない、かな)
素肌の上から感じる、彼の硬い筋肉の感触が心地いい。
メアリーやステラのやわらかい肌も良かったけど、これもこれでなかなか。
胸に当たる寝息がくすぐったくて、思わず笑みを浮かべた。
いやぁ、激しかったなぁ。
激しかったけど、痛くは無かった。
激しさの中に優しさがあって、彼らしくてかわいかった。
男に対してこんな風に思えるだなんて、生前は想像した事なかったけど……この体になったおかげ、なのかな。
そんなことを考えていると、モゾモゾと腕の中でレンが目を覚ました。
腕を緩めて、顔の見える場所に移動する。
「……なんで、ミカネがここに?」
寝ぼけているのか、虚ろな視線をこちらに向けながら問いかけてくる彼に、俺はニヤニヤと笑いながら答えた。
「酷いなぁ。
昨晩あんなに愛し合ったじゃないか。
何回も何回も激しく腰を振ってさ」
言いながら、布団の中の手を、彼の下腹に添える。
「……あんなにしたのに、まだ足りないか、新卒くん?」
その言葉に、だんだんと昨日のことを思い出してきたのだろう。
彼は顔を赤らめるどころか青ざめさせると、エビみたいに勢いよく跳ね上がってその場に土下座した。
「すっ、すまんミカネ!
お、俺お前に、なんてこと……あぁ、せ、責任を取らせてくれ!」
「ちょっ、落ち着けって!
大丈夫、大丈夫だから!ちゃんと██はできてるから!」
俺は、慌てふためく彼にそう告げる。
昨日練金屋で買ってきたのは、███████だけではない。
そう、████████ももちろん用意していた。
とはいえ、まだこの体になってから女の子の日を経験したわけじゃないし、█でやっても大丈夫だった可能性はあったが、万が一ということもあるからな、うん。
しかし、『元からそのつもりだったのか?』と聞かれるとそうではなく、俺は彼が『自分の体を大切にしろ!』と言ってくれる方に賭けていたから、かるーいハニトラ的な展開で終わらせるつもりだった。
だがこいつ、実はそこそこ肉食系だった。
男はみんな狼。
誰が言い始めたかは知らないが、彼もまたそうだった。
まぁ、見た目からして童貞らしくはなかったからな、童貞だったけど。
それでも、ヤるときはガッツリ攻めるタイプだったのだろう。
おかげで、念の為と用意していたそれが役に立ったというわけである。
俺は、床に落ちている███████を指差しながら、彼を説得したのだった。
「まったく。
いい感じのピロートーク?とかできると思ってたのに、台無しだぜ、ホント?」
俺は、背中合わせにして着替えているレンに愚痴りながら、着替えを済ませる。
手とか色々嗅いでみると、まだ少しえっちな臭いが染み付いていた。
これじゃあ2人との朝稽古は無理だ。
俺はそう判断すると、彼と一緒に風呂に浸かる事になったのだが、それはまた別の話。
⚪⚫○●⚪⚫○●
朝稽古のために砦の訓練場にやってくると、そこには既に訓練服を着た2人の姿があった。
「あれ?
今日なんかファムちゃんお肌ツヤツヤしてない?」
メアリーのその指摘に、思わず2人揃ってギクリと肩を震わせる。
バレたか?
もしかして昨日のことバレたか!?
「そ、そうかなぁ?」
いざそういうことを気づかれて指摘されると、なんかちょっと恥ずかしい。
あれば誤魔化すように、ポニーテールにした髪を触りながら目を逸らす。
一昨日の女子会であんなにレンとの関係を否定してきたのに、次の日になってまさかこんな事になってたことがバレたりしたら……。
確実に、第2回の勇者パーティ女子会でおもちゃにされるに決まっている。
……あるかは知らないけど。
そんな風にしていると、ステラの方まで近づいてきて、スンスンと鼻を鳴らし始めた。
「それに髪も、なんかはちみつみたいな匂い……。
あっ、もしかして香油買った!?」
「そっ、そーなんだ!
クインビーハニーっていう匂いのやつ!」
よ、よかったぁ!
気づかれなくて良かったぁ!
やっぱり朝風呂入って正解だったわ!
俺は内心ホッと胸を撫で下ろしながら話を方向転換させた。
閑話休題。
軽い雑談を済ませた俺は、早速戦力を強化するために剣の修練を始める事にした。
まず初めに軽く俺が前世から学んできた護身術──特に名前がなかったので、ステラの提案でユーリア流白兵戦術と命名された──の基礎理念を話した。
前にも話したが、このユーリア流白兵戦術のモットーは『臨機応変』と『素早い制圧』だ。
さまざまな状況に瞬時に対応し、そして対象を的確に素早く制圧するのである。
その説明が終わると、ユーリア流の基本的な身体操作である《心眼》、《関節駆動》、《重心移動》、《体振動》、それから《歩法》の訓練。
次に套路を教えながら体の扱い方、部下の扱い方など、技をいくつか覚えさせた。
今回俺が教えた套路は、ユーリア流の中でも最も基本となる《波壺》という套路だ。
足の裏の力を使って全身をでんでん太鼓のように揺らし、その遠心力と深層筋の働きを使って、突きや蹴り、払い受け、回避などを行うのである。
「ほら、腕に力入りすぎ。
コツは筋力で動かそうとしないことだよ。
肩からロープが生えてるようなイメージで、それを振り回す感じで動くの」
元から筋肉に頼った動き方をしているせいか、戦闘で一番重要な基礎以前の問題である《脱力》を覚えさせる指導が一番難しかった。
若い人間はなんでも筋肉に頼りがちになる。
しかし、筋肉に頼った動きをすると、瞬発力が低くなり、攻撃速度が遅くなるのだ。
無論、それをカバーするための新体操方もあるにはあるが……一番初めにこれはきつかったかなぁ。
人間の本能を利用した体の動きの中に、幾つかの技術を盛り込む事で、早期体得を目指すというのが目的だったのだが。
こうしてこの日の午前は、俺主導による基本的な体の動かし方講座に費えるのだった。
夜に何があったかは近いうちにノクターンの方で書こうと思います。
⚪⚫○●⚪⚫○●
ᛜ
豊穣を意味するルーンです。
コアイメージは『何かが生まれてくる』。
ᛃ がプログラムを構築するためのルーンならば、このルーンはそのプログラムを終了させる、あるいは完成させるためのルーンです。
例えば ᛃᚲᛃᛚᛃ というように ᛃ のルーンで囲むと、『火が出た次に水が出る』と言ったようなプログラムを組むことができますが、これだけでは実は発動せず、プログラムの実行のために、最後に ᛜ のルーンを配置しなければ、プログラムが機能せず、発動しません。
漢字一文字に変えると『決』。
⚪⚫○●⚪⚫○●
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