美少女な俺様が空を飛ぶ!
おいしいタルタルソース作りの研究にハマっちゃって更新遅くなりました(?)
や、そも不定期なんですけどネ?
ちなみに前回の話を簡単にサラッとおさらいすると、ファムちゃんとステラちゃんが戦いました。
結果から言うと、メアリーの技量は砦で戦った剣術指南役のユーゴーより遥かに弱かった。
というか、足元にも及ばない、といったところか。
攻撃は脇が閉まってない、重心が高い、体幹がブレてる……と、初心者に毛が生えた程度のもので、なるほど確かに嗜む程度にはできていた。
だけど逆に防御の面では、どうやら勘がいいのか、よく攻撃を防いだ。
……ちなみに、彼女には《二拍子》をつかっての攻撃はしていない。
ただ、戦闘のセンスはなかなかのもので、所々見せる動きは才能のかけらを感じさせてくれた。
潜在能力は、まぁ、そこそこ高いものを秘めていそうではある。
「普段の戦闘は、魔術を使うのが基本だったりするのか?」
テントを片付けて荷物を整理しながら、メアリーに尋ねる。
「普段の……って言われても、私が戦うことってほとんどないしね。
あっ、でも魔術で援護することはよくあるよ。
剣の強度をあげたりとか、防御魔術を使ったりとか、傷を治したりとか、いろいろね」
得意げに言って見せる彼女に、へぇ、と相槌を打つ。
(基本的に後衛でバックアップが担当ってところか)
前衛に守ってもらいながら、前衛の士気をあげたり、ステータスを補正したり。
そういうスタンスなら、この戦闘能力も頷ける。
「攻撃系の魔術とかは?」
「使えはするけど、大体ステラの邪魔になっちゃうから。
ほら、白兵戦ってずっと相手とつきっきりでしょ?
だから無駄に攻撃しちゃうと被弾しそうで」
なるほど。
確かにそれはあるかもしれない。
東南アジアで戦争を経験した師匠が言っていた。
戦場では敵味方が入り混じって、仲間が背後から背中を撃つことも良くあったのだとか。
魔術も飛び道具、きっとそういうこともあるのだろうな。
⚪⚫○●⚪⚫○●
準備を終えて、俺たちは探索を再開した。
今度は魔力を抑えることを意識したので、とりあえず数の少なそうな群れに向かって歩くことにする。
視界は緑の海に囲まれて見通しが悪く、草を踏む音だけが聞こえてくる。
「……妙だな」
呟いて、足を止める。
「うん、そうだね」
同じく気がついたのか、ステラが同感の言葉を返す。
その理由に気がつかないのか、メアリーは頭に疑問符を浮かべたまま首を傾げていた。
「何、どうしたの2人とも?」
「虫が1匹もいない」
虫嫌いな俺としては好都合なのだが、こんな自然な森の中でそれは、どう考えてもおかしい。
昨日は、まぁ、ラッキーだな、くらいに思ってたんだけど、その理由を知った今となると、不審になるのも仕方ないだろう。
「昨日はファムちゃん師匠の魔力に怯えたせいで、虫が1匹もやってこなかった。
それはわかるんだけど──」
「《魔力の呼吸》を覚えた今もそれが続くのはおかしい。
つまり、この静寂さは俺以外の存在が原因の可能性が高い」
ステラの言葉を引き継ぐようにして、続きを喋る。
この世界では、生物の持つ魔力量が、そのままその生き物の身体能力──つまるところ、脅威度と比例する。
昨日の静けさはきっと俺のせいだったのだろうと思っていたのだが、しかし魔力の発散を止めた今、俺からその脅威度を感知できる生き物はほぼいないだろう。
なら、なぜ魔力に怯えて虫が出ないのか。
虫だけじゃない。
他の動物も、魔物だって見当たらない。
それどころか、ある気配の集団が、こちらに向かってゆっくりと包囲してきている。
(いったい、いつの間に──)
気配を消す魔術でもあるのだろうか。
そんなことを考える。
俺もまだ、《気取り》──要するに気配探知──の技術はそこまで高い方じゃない。
兄弟子たちほど敏感でもなければ、彼らほどずっと探知し続けるなんてできないし、意識を向けた場所しか調べられないくらいには練度が低い。
十中八九、その合間を縫って接近されたのだろう。
(ステラの技量なら切り抜けられるか)
先の模擬戦での彼女の反応を鑑みてそう判断すると、俺は2人に状況を伝えた。
「なんか大量の魔物に包囲されてるっぽいんだけど、どうする?」
「そうだね……。
メアリー、なんか使えそうな魔術ない?」
話を受けたステラが、メアリーに尋ねる。
「お姉ちゃんを誰だと思ってるの?
剣術は苦手でも、魔術の知恵なら宮廷魔術師に引けを取らないんだから!」
言って、ポーチから杖を引っ張り出す。
「数は?あと接敵までどのくらいありそう?」
「そうだな、数は100くらいか?
正直、個体のサイズ感がバラバラでわからんが、奥にでっかいやつが1匹いる。
接敵までの時間は、この距離なら……5分後には視認できる距離まで近づかれる」
既に計算しておいた敵の行軍速度の平均値から、最も早い値を引っ張り出して伝える。
慣れていない人間であれば、木の根などに足を取られてうまく進目なさそうな地形だが、どうやら魔物と思われるこの気配の接近速度は、全く速度を緩めず、かなり素早い速度で接近してきている。
走っているのか歩いているのかと聞かれれば、早歩きくらいの速度だ。
「それだけあれば十分かな。
ガーディアンを作るよ。それの背中に乗って、空を飛んで一旦砦まで逃げよう」
魔術っていうのはそんなこともできるのか。
結構万能なんだな……。
「たしかに、準備のできていない状態で挑むのは危険すぎるしな。
一旦砦に帰って、事情を説明して協力を仰ぐか」
流石にこの数を3人で捌くのは難しい。
俺はメアリーの提案に従うことを決めると、満場一致、すぐにメアリーは杖を振るって空中にルーンを走らせた。
すると、大気中の空間が、土や木などが蠢いて、ぐるぐると回って、一頭のドラゴンを形作った。
「ドラゴンのゴーレム……!?」
土で構成された筋肉、樹木でできた骨組み。
その造形はそこまでリアルなものではなく、簡単なものではあったが、それでも今にも火を吐き出しそうな迫力が、そこにはあった。
「ゴーレムとはちょっと違うんだけど……原についての授業はまたとして」
言って、メアリーとステラが急いでガーディアン・ドラゴンの背中に乗り込む。
「早く乗って、もうすぐそこまで見えてる!」
ステラが差し出す手を握り、ドラゴンの背中に引っ張り上げてもらう。
鼓膜にはもう、ゴブリンと思しき魔物の鳴き声が『ギャギャギャ!』と聞こえてきていた。
──バサッ。
ドラゴンがその木製の翼をはためかせる。
首の上ではメアリーが杖を振っているのが、ステラの背中越しに見えた。
「それじゃ、飛ぶよ!」
わずかな浮遊感。
続いて、振動。
ドラゴンがその足に力を込め、地面を蹴る。
視界が上がる──。
「おおっ!?」
みるみる間に、眼下に森の緑が引き離されるのが映った。
悔しそうなゴブリンたちの鳴き声が聞こえる。
その中に、わずかな魔術の気配が混ざっていることには、気がつかなかった。
──ドォン!
眼下から打ち上げられたのは、炎の弾丸。
バレーボールほどもある巨大な火球が、ドラゴンの翼を撃ち抜く。
しかし、魔術によって空を飛んでいるガーディアンには関係がないのか。
バランスを崩すことなくそのまま飛翔を続け──やがて、俺たちは森を脱出することに成功した。
ᚨ
メールやコミュニケーション、専門知識を意味するルーンです。
コアイメージは『ある問題に対する結果や答え』が近いかもしれません。
鑑定系の基礎ルーン。
ᚱ と組み合わせることで《念話》の魔術が使えます。
漢字一文字に変えると『知』。
⚪⚫○●⚪⚫○●
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