第二幕 てぐしでも割と整えられる
今回は春斗目線です。というより基本そうなるかも。
「・・・・ぜェ、ぜェ・・・・・」
「ギリギリセーフだ、やるな、ナツミカン」
「やはり、人間死ぬ気になれば不可能はないと言う事ですね」
「・・・・・同感」
顔を真っ赤にし、わざわざ朝からセットしたであろうショートボブの髪を乱し、額から汗をダラダラと流しながらも、なんとか学校に間に合ったナツミカンに、俺、千秋、冬輝の順に言葉を贈った。「うるさい!大体、一言ぐらいなんか言ってくれてもいいでしょ!?『遅刻するよ』とか、せめて『遅れるから先いくね』とかさァ!!!黙って行くってどうなのよ!?今までずっと一緒に通学してきたのに!おかげで進級初日から遅刻するとこだったじゃない!」
そう、春休みも昨日で終わり、今日から俺達は高等部の二年生だ。ちなみに、この安芸波学園は、初等部から高等部までがあり、今日の始業式はその全員が参加する事になっている。俺が解説をしている間にナツミカンはある程度回復したらしく、手鏡で自分をうつし、てぐしで髪を整えている。
が、そこへ
「はい、みんなそろそろ体育館に移動しなさい。始業式が始まるわよ。」 一年の時担任だった白羽 御鳥先生の声が響いた。白羽先生は二年程前にこの学校に来た若い先生だ。優しく、顔が可愛く、生徒の悩みも親身に聞いてくれるいい先生なので、男女問わず生徒の人気が高い。
「うぁ、センセちょっと待って!」
髪のセットが終わっていないナツミカンがうろたえる。諦めろ。大体髪をセットした所でたかが知れていたいいたいいたいいたいいたいいたい
「てめ、ナツミカン!なぜ俺の耳を引っ張る!?」
「今失礼な事考えてたでしょ?」
「なんでンな事分かるんだよ!?」
「分かるに決まってるでしょ!?何年幼なじみやってると思ってるの!?」
スゲーな、幼なじみ。
てゆーか、助けて、残り二人の幼なじみ。千秋、・・・・・はニコニコ笑ってこっちを見ている。可愛い笑顔なのに、この状況ではイラっとしかしない。冬輝!お前だけが頼りだ!っていねーし!・・・・・つーか、俺達三人しかいなくね?
と、その時!
ガラッ!
何者かが教室の扉を開けた。そこにいたのは!
・・・・・白羽先生だった
白羽先生は苦笑いをしつつ、言った。
「何してるの、あなた達?もう始業式終わったわよ。早く自分のクラス確認しに行きなさい」
「「「・・・あ・・・」」」
俺達三人の声がハモり、教室の中に響いた。




