第十幕 流那な春斗の放課後――1
流那目線です。
みなさんどーも、流那です。
あたしは今、本日からクラスメイトになった、暁君(春斗の事)に話しかけようとしています。
私が今立っている位置からは、机の上に突っ伏している彼の姿がよく見えます。
自己紹介が終わってから、ずっとこの状態の彼に、私は声をかけます。
「あの、大丈夫・・・・・?」
と。
すると、彼はこちらを向き、やや間をおいて、言いました。
「えーと、流那、だっけ?」
「えっ!?は、はい・・・・・」
呼び捨てで呼ばれて、あたしの心臓は高鳴ります。
ああ・・そうだ・・・・・
あたし、この人の事が好きなんだ・・・・・
彼は覚えてないであろう、
・・・・・二年前、初めて会ったあの日から・・・・・。
―――二年前。
中学三年生になったあたしは、始業式とその他の予定を終え、家に帰ろうとしていた。
が、しかし・・・・・
ザァァァァ・・・・・
突然の雨により、傘を忘れたあたしは、学校の玄関から一向に止む気配を見せない雨を見つめる事しか出来ませんでした。
『・・・・・どーしたんだィ?』
雨を見つめるあたしの後ろから一人の男子生徒が話しかけてきました。その手には一本の折りたたみ傘が。
『えーと、傘を忘れてしまって・・・・・』
戸惑いつつも、彼の問いに答えるあたし。
そんなあたしに彼が・・・・・
『ん』
そう言って、折りたたみ傘を差し出してきました。
『そ、そんな!!!悪いですよ!会ったばかりのあなたに傘を借りるなんて!』
『そー?じゃーさ、』
そう言って、彼は続ける。
『家どこ?送ってくよ』
『えっ!?なんでそーなるんですか!!?』
『だってよー、すげー雨だぜ?』
そう言って、彼は空を見上げた。
しばらく言い合いを続けた結果、あたしは駅まで彼の傘に入れてもらう事になった。
・・・・・彼の、傘に?
『相合い傘ぁ!?』
『ほれ、濡れるぞ』
『ひゃあ!!!』
声をあげるあたしに構わず、彼はあたしの肩を抱いた。
緊張しすぎて、駅まで送ってもらうまでの記憶がない。
駅に着く頃、雨は止んでいた。
『すいません、わざわざ送ってもらっちゃって・・・・・』
『いーって、ちょうどこの辺にある本屋に用事があったとこだし・・・・・』
謝るあたしに、首を横に振りながらそう言う彼。
『じゃ、俺はこれで・・・・・』
『あっ!ちょっと待っ・・・・・・』
あたしの声に構わず走り去る彼。
そして、彼と相合い傘をしていた事を思い出し、ドキドキするあたし。
これが、あたし、夜月流那が、彼、暁春斗に恋に落ちた日の出来事・・・・・




