♯09
駅までやってきた僕たちは、物陰に隠れて湊斗達の様子を見ていた。
見ていて思ったが、湊斗は終始笑顔だった。 きっと楽しいのだろうが、ここまで嬉しそうなのは珍しい。
「なんかずっと笑ってるな」
「そうね、なんか楽しそう」
「なんなのよあいつ! ニヤニヤして! もう!!」
こっちは終始怒ってる……。
はぁ……なんかもう帰りたいなぁ……。
「ねぇ、藍原さん。もう見ない方が良いんじゃ……イライラするだけだよ?」
「イライラなんてしてないわよ!」
いや、絶対にしてる。
僕は白戸さんと目を合わせ、ため息を吐いて藍原さんの腕をそれぞれ掴む。
「え? な、何よ!!」
「もうこれ以上は見ない方が良いと思うよ」
「イライラするのって体に悪いっていうしね……」
「な、何するのよ! 離して! 離しなさいよ!!」
僕と白戸さんは、藍原さんを引っ張って駅を後にした。
このまま湊斗と清瀬さんの様子を見せ続けたら、藍原さん何するかわからないしな……。 僕と白戸さんは、そうして藍原さんを駅から連れ出した。
「湊斗のやつぅ……随分楽しそうに……」
「はいはい、じゃあ明日何をすれば良いかわかる?」
「湊斗を殴る」
「違うわよ」
藍原さんの物騒な物言いに、白戸さんは肩を落としてそう言う。
なんでこんな事になってるんだか……。
「そんなに気になるなら、よりを戻そうって明日でも言えば良いじゃん」
「なんで私が! あんな奴もうどうでも良いのよ!」
「じゃあなんで後を追ったのよ……」
藍原さんは本当に何がしたいのだろうか……。
僕はそんな事を思いながら、白戸さんに耳打ちをする。
「ねぇ、藍原さんってこんなに面倒臭い人だっけ?」
「違うわよ、春山君が絡むと面倒になるの……」
「あぁ、そういう事……」
僕はなんでこの二人は別れたのだろうかと疑問に思いながら、怒り狂う藍原さんを白戸さんと抑えて、帰宅した。
*
「ただいま」
「あら、おかえり。遅かったわねデート?」
家に帰ってきて、母に最初に言われたのがこの言葉だった。
俺は清瀬さんを送った後、そのまま真っ直ぐ自分に自宅に帰宅した。
「ち、ちげーよ! ちょっと寄り道して帰って来ただけだ……」
「嘘ね、女の匂いが制服からプンプンしてくるわよ」
「え!? 嘘!」
「嘘よ」
「おいコラ! ハメたな!!」
「その反応……本当にデートだったのね……今日はお赤飯が良いかしら?」
「やめろ……別にデートじゃ……付き合ってねぇし……」
「あら、じゃあ何彼女になる予定でもあるの?」
「そ、それは……てか、そんなの母さんに関係無いだろ!」
「まったく……青いわね……」
俺は母さんにそう言って、自分の部屋に逃げて行った。
「はぁ……なんでうちの母さんは全部わかるんだよ……」
俺はそんな事を考えながら、ベッドに寝っ転がった。