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#51




「ありがとうございましたぁ!」


 俺と由羽はアパレルショップで買い物を済ませ、ショッピングモールの喫茶店に来ていた。


「良いのがあって良かったな」


「うん」


 喫茶店に入り、俺と由羽は飲み物を注文して話しをしていた。


「混んでたな」


「そうね、やっぱり休日だしね」


「家族連れが多かったけど、なんか見るからにお父さんの方が大変そうだったな」


「赤ちゃん抱いて、買い物袋持って、奧さんは洋服見るのに夢中だったね」


「たまの家族サービスなんだろうけど、大変そうだよな」


「お店から出た後、お父さんベンチで座ってたわよ、凄く疲れてたみたい」


「大変だよなぁ……平日は会社、休日は家族の為に時間を使うなんて……」


 他愛も無い話しをしながら、俺と由羽は二人の時間を過ごした。


「………ねぇ……」


「ん? どうした?」


「なんで……一年前、私に告白したの?」


「え……」


 俺は思わず持っていたコップを落としそうになってしまった。

 思いも掛けない質問に俺は驚きつつ、由羽に向かって話す。


「いや……それは……お、お前を……可愛いと思ったからだよ……」


「そっか……」


「な、なんだよ……急に」


「ん? いや……なんか気になってさ……」


 由羽はそう言いながら、窓の外を見る。

 俺はそんな由羽を見ながら、絶対にそれだけでは無いのだろうなと思っていた。

 意図は分からないが、この質問には何か由羽なりに意味があるのかもしれない。


「お前は、なんで俺の告白をOKしたんだよ」


「ん? そんなの私も好きだったからに決まってるじゃない」


「そ、そうか……」


 笑顔でそう言う由羽。

 そう言えば、前にも同じような質問をした気がするな。

 付き合ってまだ間もない頃だったか、確かデートの途中でそんな話しになったのを覚えている。


「でも……私は多分……独占欲が強すぎたのね……湊戸を段々独り占めしたくなって……湊斗が他の女の子と仲良くしてるの見てると……イライラするようになってたんだよね」


「そ、そうなのか?」


「うん、それに……」


「それに?」


「湊斗が全然関係を進展させようとしなかった事にも腹が立ってたかもね」


「うっ……そ、それを言うなよ……」


 由羽の言っている事はきっと、手を繋いだりとかキスをしたりとかだろう。

 てか、由羽だって手を繋ぐの恥ずかしいって言ってただろうが!!


「ま、私も強がっちゃったけど……手を繋ごうって言ってくれた時は嬉しかったよ」


「あの時は結構ショックだったんだぞ?」


「ごめんって、でも今日は繋げたじゃない?」


「そういう問題かよ」


「うふふ……今思えば……なんで私はあんなにイライラしてたんだろうなぁー」


「俺に聞くなよ、今はしないのか?」


「ん? ヤキモチは焼くよ? でも……そこまでイライラはしなくなったかな?」


 それはどう言う心境の変化なのだろうか?

 俺に対する興味が薄れたのか?

 それはそれで悲しいような……。

 いや、でもそれならなんで俺にまた告白したんだ?


「ねぇ……あのさ……」


「ん? なんだ?」


「湊斗は……私に彼氏が出来たら嫌?」


「え……そ、それは……」


 正直言うと嫌だ。

 元とは言え彼女だったし……なんか寂しい気持ちになる。

 もちろんこの気持ちが俺の身勝手な願望だと言うことは分かってる。

 だが、由羽の問いに対して俺はなんと応えたら良いのだろうか……。


「……分からないけど……多分嫌……だろうな……」


「フフ、何あからさまに困ってるのよ」


「そりゃ困るだろ! そんな難しい質問しやがって!」


「そうよね………ねぇ……あのさ……」


「ん?」


「清瀬さんを選んであげてよ」


「え………」


 由羽のその言葉に俺はまたしてもコップを落としそうになった。

 

「な、なんだよ……急に」


「……清瀬さん……可愛いし、湊斗の事本気で好きみたいだし……独占欲ばっかりだった私と違って、湊斗の事をしっかり考えてる……正直、私の完敗よ……」


「だ、だからってなんでそんな……」


「清瀬さんと湊斗がお似合いだから」


「え……」


「理由はそれだけ……それに……私は一回湊斗を振ったんだよ? そんな女とまた付き合いたい?」


 普通だったら、そんな調子のいい話は無いと思うのだろうが……今の俺とこいつの関係なら上手く行く気がする自分が居る。


「そ、それはを決めるのは俺だろ……」


「……でも、決まってるんでしょ? もう答えは……」


「決まってなんて……」


「じゃあ、気がついてないだけ」


 そうなのだろうか?

 もう俺の中では答えが決まってるのだろうか?

 だが、俺にそんな自覚は一切無い。


「私は最後に湊斗とデート出来て良かったよ」


「最後って……お前……」


「これからも友達として仲良くしてよ」


 笑顔でそう言う由羽の顔は、どこか不自然で、なんだか無理をしている感じがした。

 俺はそんな由羽の顔を見た瞬間、胸がチクりと痛むのを感じた。

 俺はどうしたら良いのだろうか……。

 考えてもまったく分からない。

 由羽の事を考えると彩葉の顔が頭に浮かぶ。 彩葉の事を考えると由羽の顔が頭に浮かぶ。 本当に俺は……どうすれば良いのだろうか……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何と言うか・・・ 藍原さんの自分に彼氏ができたら云々を言った後、清瀬さんと付き合ってあげては、言い方が嫌らしいと言うか、身勝手と言うかずるいかな。 主人公に対して自分の事を引きずらせたいと…
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