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♯05



 私、清瀬彩葉自室の部屋で今日の事を思い返していた。


「うーん……少し不自然だったかな? まぁでもいっか……連絡先手に入れたし」


 まさか、湊斗君が別れてたなんて、ラッキーだったなぁ……。

 でも、私の事覚えてなかったなぁ……。

 

「まぁ、昔の事だし仕方ないか……さて、次の計画を始めますか」


 私はめがねを掛けて、ノートにペンを走らせる。


「このチャンス……絶対に逃さない……」





 翌日、俺は学校に到着するなり、熱い視線を感じていた。

 その視線の主がなぜ俺の事をこんなに凝視しているのか、俺は皆目見当も付かない。

 まぁ、その視線の主は藍原なのだが……。


「ねぇ……」


「なんだよ……」


「藍原ずっと見てるけど……何かあった?」


「いや……何かはあったが……何も無いと言えば無い……」


「いや……なんか凄い、恨みを込めた視線が湊斗に向けられてるけど……」


 あいつはなんで俺の事を凝視してるんだ?

 もう別れたんだし、あいつから私と関わるなって言ったくせに……。

 

「ま、まぁいいや……それより相談があるんだが……」


「相談? どうかしたの?」


 俺は直晄に昨日の事を相談しようと、場所を階段の踊り場に移して話を始める。


「実はな……俺にモテ期が来たらしい……」


「は? 一体何があったの?」


「昨日の帰りの事だ……」


 俺は昨日の帰り道に起こった出来事を直晄に話した。

 

「へぇ……清瀬彩葉さんねぇ……確か隣のクラスだったと思うけど?」


「隣のクラスなのか?」


「それも知らなかったの?」


「あぁ、この前話したのが初めてだから……」


「ふーん……でも、確かに上手く行き過ぎてる気がするね……」


「だろ? 俺は絶対何か有ると思うんだが……」


「本音は?」


「メッチャ嬉しい」


「あっそ……はぁ……すぐに他の女に行くなんて……」


「なんだよその言い方。諦めが悪いよりも良いだろ?」


「はぁ……藍原さんと寄りを戻そうとか思わないの?」


「思わない」


「即答……」


 そりゃあ即答もする。

 藍原みたいな暴力女より、清瀬さんみたいな優しくて大人っぽい子の方が何倍も良い。


「なんだかなぁ……まぁでも、清瀬さんの事も気になるね……」


「あぁ、このままホイホイ付いて行って良いものか……」


「湊斗は可愛い子に弱いからね……まぁ、騙されないようにだけ気を付けてね」


 騙されないようにか……。

 確かにこんな上手い話しは無いだろうし……絶対に裏があると思うんだが……。

 そしてあっという間に放課後、俺は早く帰ろうと帰宅の準備をしていた。


「湊斗、たまにはどこかに遊びに行かないか? 今日バイト休みなんだ」


「お、いいな! じゃあゲーセンにでも……」


「春山君」


 俺と直晄が話しをしていると、後ろから誰かが話し掛けてきた。

 後ろを振り向くと、そこには鞄を持った清瀬さんが居た。


「き、清瀬さん? ど、どうしたの?」


「ん? いやぁ、一緒に帰れないかなぁーって思って。あ、それとも先約があったかな?」


 直晄を見て、清瀬さんはそう言う。

 直晄は何かを察し、清瀬さんの方を向いて不自然な笑顔で尋ねる。


「えっと、二組の清瀬さんだよね? 湊斗から少し話を聞いたけど、湊斗のどこが良くてあんな事を言ったの?」


「お、おい直晄! いきなりそんな事を聞くのは失礼だろ!」


 俺が直晄にそう言って注意すると、清瀬さんは直晄に向かって話し始める。

 クラスの視線も集まってきて、なんだかいたたまれない空気になってきた。

 その中にはもちろん藍原もいた。


「あぁ、私の事を疑ってるのかな? 大丈夫大丈夫、春山君の事を騙そうなんて思ってないから」


「そう言われてもねぇ……湊斗は女の子に弱いから」


「うん知ってる」


「しかも美少女にはめっぽう弱いし」


「胸の大きな子が好きだよね?」


「あぁ、おまけにロングヘアーの子に弱い!」


「大学生物のエッチなDVDとか持ってそうだよね」


「いや、湊斗のパソコンの中は以外と女子高生物が多……」


「さっきから何を言ってんだよ!! クラスの連中に俺の性癖が暴露されてんだろ!!」


 話しの趣旨が段々ズレていき、何故か俺の性癖暴露大会になってしまった。

 てか、こいつら一体何がしたいんだよ!!

 クラスの女子の俺を見る目がどんどんキツくなっていくだろうが!!

 てか、なんで清瀬さんは俺のそんな情報を知ってんだよ!!


「も、もう良いから……場所移そうぜ……周囲の目が痛い……」


 周りのクラスの女子は俺の方を見てコソコソ話しをしていた。


「やーねぇ……女子高生物だって……」


「私たちをどんな目で見てるんだか」


「ほんとやーねぇー」


 ヤバイ……死にたい。

 男共は男共で別な話題でコソコソしてるし……。


「春山の野郎……別れたばっかで早速次の女かよ!」


「くぅーなんであいつがあんなモテるんだよ!」


「今度あいつの靴に画鋲でも入れといてやるか」


 なんでだろう……このクラスが嫌いになりそうだ。

 俺がそんな事を思っていると、今度は遠目で見ていた藍原がこちらにやってきた。

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