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#24

「ねぇ、後でちょっと屋上来てくれない」


「え? あぁ藍原か、おはよ。別に良いけど、昨日の話しか? まだ少し時間あるし、ここでダメか?」


「ん……ちょっと他に聞かれるのは……ホームルームが終わってからで良いわよ」


「ん? そうか? わかった」


 藍原は俺にそう言うと、自分の席に戻って行った。

 話しってなんだろう?

 あいつが俺に頼み事なんて珍しいな……。

 てか、俺らってこの前まですげー仲悪かったよな?

 なんか、あの事件があってから、喧嘩も無くなったし……付き合ってた頃よりも関係良いんじゃないだろうか?

 そんな事を考えながら俺は朝のホームルームを受ける。

 ホームルームが終わると、俺はすぐに屋上に向かった。

 先に到着したのは俺だったようで、藍原はまだ来ていなかった。

 

「頼みねぇ……」


 付き合って居たころも俺に頼み事なんてしてきた事無かったが、一体なんだろうか?

 俺がそんな事を考えていると、すぐに藍原がやってきた。


「ごめん、お待たせ」


「いや、そんな待ってねぇから良いよ。それで頼みって?」


「うん……あのさ、アンタって料理出来るわよね?」


「ん? まぁ、普通に食える物は作れるけど?」


 俺はこう見えても料理が少し得意だ。

 母さんから「今の時代は料理が出来る方がモテる」と言われ、中学の頃から色々と料理を教わってきた。

 今では晩飯をたまに俺が作ることもある程だ。


「それがどうした?」


「いや……あのさ……私の家がパン屋やってるの知ってるわよね?」


「あぁ、確かお前の家のマンションから歩いて五分くらいのところにある店だろ? それがどうかしたのか?」


「実は明後日なんだけど、放課後少しだけ手伝ってくれない? いつも入ってるバイトの人が居るんだけど用事で入れなくなっちゃって……」


「そうなのか? それなら藍原が手伝えば良いんじゃ……」


「いや……私はその……料理が……」


「あ……悪い、これは聞いた俺が間違いだった」


 藍原は絶望的な程に料理が下手なのだ。

 砂糖と塩を間違えるのはもちろん、目玉焼きを真っ黒にしたり、ゆで卵を真っ黒にしたりしている。

 ゆで卵は茹でてただけなのに、なぜ真っ黒になったのか、その謎はいまだに解明されていない。


「そ、そういうわけだから、お母さんに頼まれたのよ、学校で料理が得意な子居ないかって……もちろん給料も出るけど……」


 これは願っても無い話しだ!

 来週のゴールデンウイーク初日の清瀬さんとの映画代をどうしようか考える必要が無くなる!

 

「別に良いけど、お前は良いのか? 俺で……」


「別に良いわよ、それにそんなに気にする必要もないでしょ? 私、お父さんとお母さんにアンタと付き合ってた事も言ってないし」


「そうか……まぁ、藍原が良いなら良いけど……」


「じゃあ明後日、学校が終わったらすぐお店に来て、時間は多分夜の21時くらいまでだから」


「お、おう、わかった」


 藍原はそう言うと、すぐに屋上を後にした。 しかし、藍原のところでバイトか……。

 時給いくら位貰えんだろ……。

 ん? てか俺……藍原の両親と会うの……始めてじゃね?

 まさか別れてから会うことになるとわ……。

「はぁ……なんでだろう……気が重くなってきた……」


 俺はそんな事を考えながら、肩をがっくりと落として教室に戻っていった。

 戻る途中、俺は廊下でニヤニヤと笑いながらこちらを見ている直晄に遭遇した。


「……なんだよ、なんか言いたげだね」


「別にぃ~モテる男は違うなって、思ってないよ~」


「はぁ? 誰がいつモテたよ」


「さぁ~ね~」


「学年一のモテ男にそう言われると腹立つな、ぶん殴って良い?」


「良いけど、そうしたら僕も湊斗を殴るよ?」


「仕方ない、痛いの嫌だからやめとく」


 俺は直晄と平和的な交渉の末、お互い何もしないという結論を導きだし、教室に帰って行った。


「え? 藍原さんのところでバイト?」


「あぁ、さっきの話しはそう言う話しだ」


 教室に戻る途中、直晄が藍原と何を話していたのかしつこく聞いてきたので、俺は先程の藍原の会話の内容を直晄に話した。


「まぁ、俺も金が欲しかったし、丁度良くてさ」


「ふぅ~ん……ねぇ、もうより戻したら?」


「は? なんでそうなるんだよ?」


「いや、だって……もうなんか……お互いに仲直りしたみたいだし……」


「別に喧嘩してないだけだろ? それに……仲が良いのは別れたからかもしれないだろ?」


「そうかなぁ?」


「そうだっての……ほら早くしないと授業始まるぞ?」


「え? あぁ、そうだね……」


 俺と直晄は教室に急いで戻った。





 昨日の夜の事だった。

 私はお母さんに、誰か料理の上手な友人は居ないかと聞かれた。

 料理が上手いで真っ先に思い出したのは、湊斗の顔だった。

 意外にも湊斗は料理が出来る。

 付き合って居た頃は良く、クッキーなんか作って私にくれたりしたことがあった。

 だから、私は湊斗にバイトのお願いをした。


「あいつなら、接客も出来るし一番適任よね?」


 決して昨日湊斗と一緒に居たのが楽しかったからと言うわけでは無い。

 ただ、能力がある人物を探した結果、湊斗が適任だっただけ。 

 決して、私的理由なんかじゃない!

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― 新着の感想 ―
[一言] うーん、なんだろうこのイラッと感(苦笑)
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