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#19

「いや、だって清瀬さんって絶対に男とは仲良くならないって有名だぜ?」


「はぁ? どう言う事だよ?」


「俺が聞いた話だと、女子としか遊びに行ったりとかしないらしいぞ? それどころから、あんまり男子と会話もしないらしい」


「そうなのか? そんな風には見えないけど……」


 清瀬さんは最初に会ったときから俺に話し掛けてきたし、教室まで俺を迎えにくるから、クラスでも男子と仲良くやってるんだろうと思っていたが……。


「そうなんのか……」


「で? どうやって仲良くなったんだ?」


「え? いや、清瀬さんから話し掛けてきたけど……」


「はぁ? 嘘つくなよ」


「本当だって、図書室で清瀬さんが俺に話し掛けてきたんだよ」


「はいはい、もうそう言う嘘は良いから、どんな催眠術を使ったのか教えろ」


「は?」


「もしくは、どうやって洗脳したのか教えろ」


「アホか」


 もうダメだこいつらは……早くなんとかしなきゃ……。

 しかし、清瀬さんの意外な話しを聞いてしまった。

 そう言えば……俺は清瀬さんの事をまだ全然知らないなぁ……。

 自分の事を好いてくれているからこそだろうか?

 俺は清瀬さんの事をもっと知りたいと思った。





 放課後。


「……ん」


「おう……帰るか……」


 俺が帰る準備を終えて自分の机で待っていると、藍原が鞄を持って俺の方にやってきた。 俺と藍原は並んで歩く。

 お互いに会話は無く、気まずい空気が流れる。

 ヤバいなぁ……俺こう言うの苦手なんだよなぁ……。

 何か話さないとと思っていると、俺が口を開く前に藍原が口を開いた。


「昨日は……本当にありがとう……アンタが居なかったら、私どうなってたかわからない……」


「え? あぁ、いや気にすんなよ。お前も一応女の子だろ?」


「一応って何よ! でも……アンタが走ってきてくれて……本当に安心したわ」


「な、なんだよ……今日はやけに素直だな……」


「私をなんだと思ってるのよ、私は毎日素直よ……」


「そうか? 毎日怒ってるイメージしかねぇ……」


「そんな事無いわよ」


 俺は毎日怒られてたような気がするが……気のせいだろうか?

 

「それより……アンタ良いの? 私と一緒に帰ってて」


「お前が頼んできたんだろ?」


「そうだけど……清瀬さん、怒ってるんじゃない? 他の女と帰るって聞いて」


「別に怒ってねぇよ……それに状況も状況だ。お前が誰かと一緒に帰りたいって気持ちもわかるよ」


「そ、そう? あ、ありがと……」


「気にすんな、怖かったろ?」


「こ、怖くなんて無かったわよ!」


「強がるなよ、泣いてたくせに」


「うるさい!」


「イテっ! すぐに手を出すなよ……」


 俺は藍原に足を蹴られた。

 こいつはすぐに手を出す……変わってねぇなぁ……。

 

「なぁ……」


「なによ?」


「なんで俺たちって……なんで仲悪くなったんだけ?」


「……知らないわよ……お互いに合わなかったからでしょ?」


「そうか……なんで合わなかったんだろうな……」


「……もう……終わったことでしょ?」


「そうだよな……悪い……変な事を聞いた」


「良いわよ、気にしてないわ」


 変な事聞いちまったな……。

 そんな事、俺だってわからないのに、藍原がわかるはずないか……。

 そんな事を考えていると、もう藍原の住んでいるマンションに到着していた。


「ん……ここで良いか?」


「うん……ありがと」


「じゃあ、俺はもう帰るな、機種変行かないとだし……」


 俺はそう言い残して、藍原の前から立ち去ろうとした。

 しかし……。


「ん?」


「あ……いや……」


 藍原が俺の制服の袖を急に掴んできた。

 




 放課後、私は藍原由羽は元彼の湊斗と一緒に下校していた。

 会話がまったく無かったので、私はとりあえず改めて昨日のお礼を湊斗に言うことにした。


「昨日は……本当にありがとう……アンタが居なかったら、私どうなってたかわからない……」


「え? あぁ、いや気にすんなよ。お前も一応女の子だろ?」


「一応って何よ! でも……アンタが走ってきてくれて……本当に安心したわ」


「な、なんだよ……今日はやけに素直だな……」


 いつも素直よ!


「私をなんだと思ってるのよ、私は毎日素直よ……」


「そうか? 毎日怒ってるイメージしかねぇ……」


「そんな事無いわよ」


 私にどんなイメージを抱いているのよこいつは!

 まぁでも……確かに付き合ってた頃は私……怒ってばっかりだったかも……。

 だって……湊斗が悪いんじゃない……時間に遅れたり、他の女の子と仲良くしたり……。 てか、湊斗は清瀬さんと一緒に帰らなくてよかったのかな?

 私なんかより、今良い感じの清瀬さんとの関係の方が大事なんじゃ……。


「それより……アンタ良いの? 私と一緒に帰ってて」


「お前が頼んできたんだろ?」


「そうだけど……清瀬さん、怒ってるんじゃない? 他の女と帰るって聞いて」


 私だったら多分怒ってる。

 てか、なんかそんな事前に無かったかしら?

 

「別に怒ってねぇよ……それに状況も状況だ。お前が誰かと一緒に帰りたいって気持ちもわかるよ」


「そ、そう? あ、ありがと……」


 何よ……なんでそんなに優しいのよ……。

 もう私の事なんて……なんとも思って無いくせに……。


「気にすんな、怖かったろ?」


「こ、怖くなんて無かったわよ!」


「強がるなよ、泣いてたくせに」


「うるさい!」


「イテっ! すぐに手を出すなよ……」

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