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叩き上げ天使が神様に成り上がるまで。発  作者: IS提督
第0章 プロローグ 天界まで
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第6話 天界の天使

「ハァ‥‥‥」


第五級三等天使で在る天使が部屋を出ると同時に、アノンは深いため息を吐き、先程まで天使が寝ていたベッドに腰を掛けた。


 私とした事が、自分自身の世界に没頭してしまい、目の前に入る患者への仕事を疎かにしてしまうなんて‥‥‥。


 今さっきまで居た男に対する対応の非を感じながら、アノンは自身の思考を更に奥へ巡らした。


 やはり彼はアイツに似ている‥‥‥。懐かしい雰囲気だった‥‥‥。


 ふと天井を見上げ、アノンは目を閉じ瞼の裏に焼き付いている光景を思い出す。




 当時の天界の階級分けは、今の様な天使の階級分けではなく、『中位三隊』や『下位三隊』といった分けられ方がされ、現在の様な(天使としての力、『使力』の量が全てで在り、実践経験等で培ってきた技術は一切考慮しない)資質主義では無く、実践経験等の技術あっての使力の量での階級分けがされていた為、個体的にも全体的にも階級相応の天使の質が良かった。


 その当時の私の階級は『力天使』ヴァ―チュース。中位三隊の中で人数が最も少なく、中位三隊の中では二番目権力を有している天使で、奇跡を起こす力を行使すると言われている天使であった。と言っても、私の場合は有している力の量は他の天使と比べると断然少なく、使力と神力を使った『奇跡』を起こして治療をする事は不得意分野ではあったが、本などで得た知識を活用して傷の治療を行っていた。


  アノンの方法では奇跡を他の力天使と比べて不得意であった為に時間はかかるが、治療の間のソコソコある膨大な時間を使って、他の天使の話を聞き、外傷では無い心の傷のケアを行い、過激な激務で傷ついた天使たちの悩みを聞き、一緒になって辛さを感じ、苦しみを共に感じ、そして共に任務で在った喜びを共に感じた。アノンが担当した天使たちは傷が癒えると同時に治療が非常に困難な心の傷まで癒える為、他の力天使よりも任務に戻れる天使が多く居た。


 その精神を癒す力は、『神は癒す』の二つ名を持っている大天使ラファエルの目に留まることが在り、度々ラファエルから「傷ついた天使の心を、ほとんど完全に癒す事の出来る唯一の天使」と称賛を受ける事があったほど、アノンが力を入れていた精神治療は過酷な状況での任務に就いている天使を現場復帰させるという重要な役割を果たしていた。

 アノン曰く、全ての時間軸の世界で在ろうが、天界が認識していない世界でも同じであるとは思うが、癒す者が戦う者に対して治療をする者が一番力を入れなければならない部分は、肉体の回復だけでなく心的外傷を癒す事にも力を入れなければならない。


 我々が守るべき対象である人間で在ろうが、人間を守護するべき天使(特に人間に近い心を持っている低級の天使達)で在ろうが、心は傷つきやすく壊れやすい。

 特に、当時の魔の存在(魔物)である者たちと戦う天使たちは、その厳しい任務に耐える為の厳しい訓練を積む為に己の心を壊し、常日頃から過度ともいえるほどの警戒心を持つことが強要される為こういった天使の気配は殺気立っている。常日頃から殺気立っている天使は些細な事で暴力的になり、また訓練課程を修了し、魔物と交戦し心に傷を負った天使の多くは、物事に興味を示さなくなる者や、過剰に反応してしまう者、突然として交戦時に感じていた恐怖や不安などが天使を襲い、手が付けられない事が多々あった。


 アノンはそういった天使や、今後その様になってしまいそうな天使、そして戦いには全く関係の無いようなしかし、悩みを抱えている天使を見つけると、少しの短い時間だけでも‥‥‥と治療室に呼び出してはカウンセリングを積極的に行った。そうすることによって、魔物と戦う天使やその他の天使の士気を向上させ、天界に多くの貢献をしてきた。




 そんな事が治療の場で行われていた時、魔物と天使の戦闘が膠着状態だった事を受け、すべての神々の頂点に君臨する『創造主』が天界の戦力を増強すべく、新たな生命を想像した。土の塵で人型を作り、鼻から命の息を吹き込まれた裸の男。その男のあばら骨の一部から作り出された裸の女。彼らは、創造主に『人間』という種族名を与えられた。


人間は聖なる存在になり切れず


 本来の人間の役割は、天界を守護する為や天使よりも先に魔物と戦闘を開始する為の言うなれば『雑用』で在った。

 しかし、創造主は自身が作り出した人間の出来があまりにも良かった為に、本来の任務から解放し、何かにつけて人間を可愛がり優遇をする様になった。


 一番下の階級で創造された人間が、創造主の愛を惜しむこと無く受けていた事に不満を感じている天使は多く居た。

 初めの間は、人間達は己の階級や想像されてからの時の短さを自覚していた為、天使達に対して謙虚な姿勢で教えを受け、何事に対しても礼を述べ感謝を忘れる事はなかった。


 しかし、あまりにも創造主が人間達にありとあらゆる面で必要以上に優遇‥‥‥愛する余り、人間達は大きな勘違いを起こしてしまった。


『自分達人間は、他の存在よりも愛され優れている』


 そんな考えを持ってしまった人間達の行動は今までの謙虚さは何処へ消えてしまったのだろうか、自分自身を神の愛の形と発言するようになり、天使達を見下すようになった。


 『(自分たちは愛されている)愛されていない存在である天使達は、我々人間達を祀りたて懇願し服従しろ。そうすれば主に頼んで、お前達も愛して下さる様に言っといてやろう』


人間達の勘違いは止まる事を知らずに、時間が経てば経つほど日に日に勢いを増していった。その様な考えを持っている人間を、天使が憎み嫌うまでには幾らかの時間も掛からなかった。


 人間達は天界で色々な事を行った。中々人間である自分達に懇願しない天使達を貶め人間達の笑いの種にする為に天界の外にいる魔物達に天界の果実を与えたり、その果実を与えた魔物を天界に連れ込み、天使達を襲わせる等の自分達が良ければ自分たちが楽しめれば良いという目的に変わり、私利私欲の行動を行っていた。


 いくら人間達が創造主のお気に入りであり、程度の行き過ぎた行為が容認されていたとしても、大事な展開を破壊に導いている人間達の行動を天使達は、タダ黙って指をくわえて見てるわけではなかった。

 

「いい加減にせよ、人間共。貴様達は己の優越感等の欲求を満たす為だけに天使を傷つけ、我々の天界を破滅に導くつもりか」


 ある時、一人の熾天使であり創造主の右に唯一立つ事を許されていた天使が大勢の天使達を引き連れて、輪を作って集まっていた人間達に向かって言葉を発した。


同時に熾天使はその時初めて、己の中に何とも言えない感情を心に抱いた。

心の奥でグツグツと煮えるような何か‥‥‥。


自分達よりも後に創生されたのにも関わらず、創造主の愛を最大限に注がれ、また自分と古くから付き合いのある天使を不意打ち‥‥‥卑怯とも言える方法で奇襲された事等。人間に対して上げるなら、まだまだ出てくる不愉快な感情。


「貴様ら天使達の訓練が不足しているせいじゃないか? ん? と言うか、あれくらいの攻撃すら対処することが出来ないって、相当弱い天使だったってわけか! あぁ、そうだよな、弱い天使だからあの程度の魔物に後れを取るんだよな! これは失敬、失敬」


 天使達を愚弄し、馬鹿にしている口調や声色で人間達は言葉を紡ぐ。


「我々が魔物に対して行っている慈悲を否定するつもりか?」


「慈悲だと?」


 熾天使ではない別の天使が、人間の放った言葉に怒りで震えた声で反応する。


「我々は主に愛されている! その愛を、魔物と呼ばれ蔑まれている存在にも愛を分けてやらなければならないからな! まさか、それすらも理解する事が出来ないのか? 小さい器の持ち主だから、主にその器分の愛を貰う事が出来ないんだよ!」


 そんな事も分からないのか。と言い放つ人間達は狂気を孕んだ顔で在った。


「敵である魔物に対しての餌付けをした理由は善意だと? ‥‥‥例え、その行動が善だとしたら何故、神聖なる天界に魔物を連れ込み、天使達を襲わせた?」


 慈悲という言葉を免罪符として、一向に自分たちがした事の重大さに反省の色を見せない人間達に、熾天使は怒りで体を震わせながらも、穏やかに創造主のお気に入りである人間達に問いを投げかけた。

また、怒りに支配されていたのは熾天使だけではなかった。先ほど人間に対して反応した天使以外のその他の天使達も、怒りにより握り固めた拳が震える等と、怒りを堪えている天使達が多くいた。


「魔物を招き入れたのは、魔物を天界に取り込み敵という存在そのモノを無くし全てを統一すると考えた結果だ! 天使達を襲った原因は‥‥‥」


 そこから先は、熾天使もその他の天使達も、人間が放った言葉を全て覚えている者は居なかった。‥‥‥と言うよりかは、人間達が放った言葉が余りにも身勝手で、自分本位な言葉だった為、ショックで人間が発した言葉の原文が理解できなかったといったほうがいいかもしれない‥‥‥。実際には聞こえていたが、内容が内容だった為に天使達は唖然として人間の言葉を理解するのに幾らかの時間がかかった。


ある程度理解するのに時間を要したが、人間の放った言葉の要約としては、‥‥‥『人間は悪くはない』『問題は魔物が逃げたことではなく、魔物に後れを取った天使が悪い』『魔物に後れを取る様な天使が、何の為に存在し天界を諸語しているのか意味が分からない』『そもそもその様な天使には存在価値はない』『その様な能力の低い天子を我々人間が炙り出してやった。感謝しろ』‥‥‥等の、人間に落ち度があった処か、人間が天使の落ち度を見つけ出してやった。人間達は役立たずの天使を見つけ出す事に貢献し、感謝されることは在れ、天使達に批判される筋合いは無い‥‥‥との内容で在った。


 ふざけるな!? 


その場に居た天使が全員、その様な感想を自身に目の前で偉そうに語る人間に対して抱いた。


 例え、もし、その様な事を本当に願っていたとして、その様な行動を行ったとしても、全ての魔物に対してソレを行わなければ、敵という存在を無くすことはできない。一部の存在にしか行わないのであれば、それは只の『捕虜』である。

 それに加え、魔物の管理を怠り魔物を一時的に取り逃がした。その事について人間達は一切触れずに天使達の練度が低いからだ、とすべての責任を天使達に押し付けた。


「もし、貴様らの思う『慈悲』に沿ってそれらの行動を行っていたとするならば、それは全くもって意味のない行動で在る。どのみち天界に連れ込んできた魔物が天界内で暴れてしまっていては、全ての敵という存在を無くし、全てを統一するどころか、貴様たちの行った行為で天界に不利益をもたらしたのだ!」


 熾天使が声を荒げ、人間達の行ってきた行動を批判した。熾天使は怒りを浮かべながらも、人間が行った行動を説明し、人間にその行為がどれほど危険なもので在り、浅はかな考えであったかを理解してほしかった。

元々自身は、特別な存在であると疑わない人間達にこの様な事を言っても、『愛されている自分達は特別。特別な者に指図するな』と反論してくる人間達に効果はないとわかっていながらも、人間達と天使達は互いを頼って天界を守護しなければならない。互いに足を引っ張り合っている状況(一方的に人間達が勝手な事をして足を引っ張っている)で任務を遂行する事は天界にとって不利益である為、熾天使は何としても人間の勝手な行動を慎んでもらいたかった。


しかし、熾天使の願いは人間の行った行動により、あっけなく崩れてしまった。


「ッ!?」


唐突に熾天使に襲い掛かる『痛み』。

熾天使が痛みのある個所を見ると、そこには一本の剣が人間によって投げられ突き刺さっていた。


「なんだぁ? 熾天使でもこのくらいの攻撃も十分に対処出来ないと? 上の立場の天使が弱いのであれば、下の立場である天使が弱いのは納得の行く理由だな!」


 輪の中に居た人間の一人が熾天使の言葉に対し、熾天使に更に言葉を投げつける。


「無様だな! 格下として創造された人間にすら後れを取るという事は!」


 そう言うと、言葉を発していた人間は自身の懐の中を探り紙で包まれた物を取り出すと同時にペッ! 紙包みに唾を吐きかけた後、ニヤニヤとした顔つきで熾天使に投げつけた。

投げつけられた紙包みは熾天使に当たり、ボトリと地面に落ちた。一体何を‥‥‥。と思いながらも熾天使は紙包みを拾う。紙包みはそれなりの大きさと重量を有していた為、何を自分に投げつけたのであろうかと不思議に思いながらも中身を確認する為に丁寧に紙包みを開いた。


 ‥‥‥右手‥‥‥、五本の指が付いてある、手首より下の右手が二つ紙包みに包まれていた。一つの右手には神からの約束が秘められた指輪が中指にはめられており、もう一つの右手には今現在人間達の前に居る熾天使からの約束が込められた指輪が小指にはめられていた。熾天使はこの右手二つが誰のモノかを瞬時に理解した。

‥‥‥主から与えられたと言って銀色に光る指輪を誇らしげに見せつけるように自慢していた天使。‥‥‥これからは更に危険な任務に就くことが多くなるからと、熾天使がお守りの意味を込めて渡した銀色の指輪を指にはめ、花が咲いたような笑顔を見せ、礼を述べた天使。


やはり‥‥‥コイツ等!?


 熾天使がハッとした時には既に遅かった。


 普段であれば最愛なる創造主が創造した者に対して怒り、傷をつけるという失態は絶対に在り得ないであろうが、しかし、この時ばかりは後先を考える事をせずに神術を行使する為の『神術円』を空中に出現させ、右手二つを放り投げた人間を神術により焼き殺してしまった。


 一瞬の出来事であった。しかし、その一瞬の出来事で、人間は死に、周りの人間達は恐怖に支配された。

 

泣き出す人間が居た。恐怖に怯え腰を抜かす人間が居た。焼け死んだ人間の死体を見て、更に怯え泣き叫ぶ人間が居た。それと同時に熾天使も恐怖に囚われていた。


「主のお気に入りである、人間を殺めてしまった‥‥‥。何たる失態‥‥‥これでは主に愛想を尽かされてしまう‥‥‥」


 しかし‥‥‥と、熾天使は己の中にある恐怖や罪悪感に何とか押し潰されない様にと思考を張り巡らせた。


 そうだ! これは人間共が蒔いた種で在る。私はこの天界に不利益を被る存在に罰を下しただけだ! 主の寵愛を受けているからといい気になって、魔物を展開に連れ込み優秀な天使を卑怯な方法で襲った人間共に事の重大性を知らしめる為の行為である。


 私は悪くない! 悪いのは全て人間の蒔いた種だ! ‥‥‥私は、‥‥‥私は、悪くない‥‥‥。


「おい! 貴様ら何をしている!」


 すべての創造をした創造主から見て、位の下の神が飛ぶような勢いで熾天使と人間達の間に割って入った。神は天使達、そして人間達の順でその場に居た者を見渡す。神の目線が人間達に向かった時、黒く炭化したモノが目に入った。


「貴様! ‥‥‥この熾天使を今から拘束する!」




 それから少しと時が経たず間に、人間達と天使達が行った罪が創造主の元に伝わり、天界を守護する役割についている天使達と人間達を集め、原因を突き止め再発防止と、その行為に携わっていた責任者を探し出し厳重な罰則を与える事を目的とした集会が執り行われた。


 人間達が犯していた罪は天使達にとっても下劣で迷惑極まりない事であったため、天使達はこの機会に人間達の罪を告発する予定でいたと同時に、天使達は今回人間を殺してしまった熾天使に対する罪の擁護を行う事を目的としてこの会議に挑んだ。

 ‥‥‥今、この場には天使達を率先して如何なる時でもともに居た熾天使はこの場には居ない。今回は熾天使無しで問題を解決し、熾天使の行った事や天使が受けてきた屈辱を晴らさなければならない。その様なプレッシャーが天使達に重く圧し掛かる。


 集会は滞りなく粛々と進んでいった。‥‥‥創造主が話をしている最中に限り‥‥‥詰まる所、今現在までという訳で在るが。


「‥‥‥さて、ここまでの事を淡々と報告書にまとめられた事柄を話したわけで在るが、人間達は今回の件はどう考えている? この件の当事者として言葉を聞かせてくれないか?」


 創造主がそう言うと、間髪入れずに人間達の内の一人がニヤリと笑い、集会の最中に取っていた臣下の礼の形を、更に上半身を前のめりに倒し口を開き種に発言する旨を伝え、創造主から発言の許可を貰った後に、改めて口を開いた。


「主よ、今回の件の原因を探るとするならば全て、天使側に問題があったからなのです」

「何!? それは本当か? 天使よ! 詳しく話すのだ!」


 全ての原因は、天使に有る。人間達からそう聞くと創造主は、怒りに満ちた顔になりその詳細を天使に確認すべく、声を荒げながら天使自身に詳細を話すように命令をする。


「主よ! 今回の原因は、人間が神聖な天界に魔物を連れ込んだ事が発端なのです! そもそもの話、人間が天界に魔物を連れ込みさえしなければ、任務中だった天使二人が犠牲になることも無く、この様な事態になりませんでした!」


 全ての原因を天使側に擦り付けられては不味い。このままでは人間達の思い通りに事が進んでしまう!

 天使は早口で、今回の件での直接的な原因になっている事を話す。天使は感情に身を任せ、怒鳴り声にも近い声色で話していた為か、肩揺らし息をしながら人間達が行っていた事を報告する。


 しかし、創造主は天使の放った言葉を聞くと、怒りによって強張っていた顔が更に強張り、こちらも天使と同じように声色ではないが怒りの表情、侮辱を受けたかの様に歪めていった。


「黙れ! 馬鹿者! その様な野蛮な嘘を吐くな! 丹精込めて創造した人間がその様な事をする筈がなかろう! それにその魔物は人間の擬態で在ろう! 儂の元にはそう報告が上がっておるぞ!」


 創造主は懐から一枚の上質な巻かれた紙を取り出すと、その紙を天使に向かって投げた。神は放物線を描いて天使に当たり地面へと落ちる。天使は落ちた紙を拾い上げ、それを広げる。


「なッ!? これは‥‥‥!?」


 紙を開き、中に書かれている文章を読んだ天使は驚きの声を上げる。そんな天使のようすを見た天使たちが、一人、二人と紙をのぞき込んだ。

 その紙に書かれていた事は、人間達が行った事を正当化し全ての罪を天使‥‥‥熾天使が行ったものとする文章。要約すると人間が起こしてきた、天界に対して不利益を被った出来事のすべての責任は熾天使が行ったものであるとの事が書かれていた。即ち、冤罪である。


「主よ! ここに書かれている事は全て偽りで在ります! ここに書かれている熾天使様の罪は、全て人間達が犯した罪で在り、熾天使様は一切の罪を犯してはおりません!」

「何度も言っているであろう! 人間は儂が創造した中でも最も理想に近い出来であり、忠実である! そんな人間達が創造主で在る儂に嘘を吐くわけが無かろう!」


天使の話を聞き、創造主は大きな声で発言した天使を怒鳴りつけた後、すぐさま人間達の方に意識を向け、更なる詳しい話を聞くために人間達に耳を傾けた。


「話が少し途切れてしまいましたが、我々人間は天界の守護強度を更に一段階、引き上げる意味を込めて天使達に対して抜き打ちの試験を行ったのです。その際は、より試験に現実味が出るように、我々人間は魔物に擬態し、試験を行ったのです」

「主よ! お待ちください! その様な話は!‥‥‥」

「黙らんか! 今は人間達が話している最中だぞ!」

「‥‥‥しかし! ‥‥‥申し訳ありません」


 話の始まりから、大事な根本的な事が抜かされ、良い様に改ざんされた話を話そうとする人間に、天使の一人は『待った』の声を掛けようと声を発したが、創造主に怒鳴られ遮られ為、これ以上創造主の意志に反した事を行ってしまったら、今まで以上に怒り天使の話を今以上に聞かなくなってしまうのではないか? と思った為、謝罪の言葉を発する。

 ほんの一瞬のことで在ったが、天使によって話を遮られた人間は、ニヤニヤと不適な表情を浮かべながら創造主に怒鳴られている天使を眺めていた。


 「さぁ、話を続けてはくれないか」


 創造主はそう言いながら人間達の方を向くと、話の続きを話す様に催促した。人間も又、自身よりも先に創造された存在の先任の存在である天使よりも、人間で在る自分達を優先して話を聞こうとしている。天使なんかよりも自分達がやはり愛されており、優れているのだ!

 人間は一通りの話を終え創造主の反応を窺う。


「‥‥‥問題の熾天使をこの場に連れて来い!」



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