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ポルックス  作者: リア
ポルックス
30/212

29話 調査

「見たら分かるだろ。」



 銀色に煌めく刃物。少し赤みを帯びた刃。それだけ聞くとサスペンスのような感じがするのだが、怖がることなんてない。



「わかんないから聞いてるんだよ!」

「あれはどう見ても包丁だろう。赤黒くなってるのは錆だな。長い間使われていないのがよくわかる。」

「なんだ、殺人現場じゃないんだね。」

「王様は病死だぞ。そんなのある訳ないだろう。」



 まったく、片付けがなっていない屋敷だ。包丁なんて真っ先に片付けておいておくべきだろう。誰かが怪我をしたらどうする。



「ここは食堂とキッチンみたいだな。」

「そうだね。殺人現場でもないみたいだし、ちょっと調べてみようよ。」



 食堂、というかダイニングには特にこれといった物もなく、テーブルと椅子が並んでいるだけ。

 キッチンだが、片付けがされていないのは包丁だけではない。鍋のようなものや、菜箸まで出しっぱなしだった。まるでこれから料理を始めようとしているかのように。



「なんでこんなに出しっぱなしなんだろ?めんどくさがりさんだったのかな?」

「錆びてはいるが、汚れているわけじゃない。片付けをしなかったというより、きっと出した途端にここを離れざるを得なかったんだろう。」

「そっか。じゃあなんで出してすぐどこかへ行っちゃったのかな?」

「それはわからない。でも、3年前に亡くなった前王の、後に住んでいた人も、包丁の錆からしてここは使っていなかったみたいだな。使っていたならここまで錆びてはいないだろう。」

「まあ、考えても仕方ないや。」



 僕の簡単な予想だが、前王はこれらの器具を出してすぐ、病で倒れたりでもしたのではないだろうか。亡くなったのはこの屋敷でのことらしいからな。まあ、四包の言う通り考えても無駄なのだが。



「先に進もう、お兄ちゃん。」



 四包も慣れてきたのか、震えが止まっている。キッチンの横にある扉を開くと、目の前に扉。さすがにもう驚かない。



「あれ?お兄ちゃん、なんだか臭くない?」

「え?ああ、一昨日から風呂に入ってないしな。」

「いや、そうじゃなくって。この臭いは...生臭い?」

「そう言われるとたしかにそうだ。」

「というかこれって血の匂いだよ!きっとこの扉の先には血塗れの死体がゴロゴロと...」



 自分で言って自分で怯えるのがマイブームなのか?さっき殺人などある訳がないと言ったばかりなのに。

 新手の自傷行為をする四包をよそに、ドアノブに手をかける。そのまま押した途端、ゴミ処理場を彷彿とさせるほどの臭いが漂ってくる。服に臭いが付きそうだな。



「なにほれ。くしゃいー!」



 鼻を摘んで四包が苦悶の声を上げる。部屋の中をサラリと確認して、悪いものに蓋をするように扉を閉めた。



「どうやら食料庫だったみたいだな。なんで生ものが置いてあるんだよ。」

「ここ使えるの?」

「掃除したらどうにかなるだろう。多分。」



 屋敷1階向かって左側はこれで探索終了のようだ。ひとまず玄関ホールへ戻ろう。



「あれ?稔君は?」

「どこに行ったんだ?」

「まさか!お屋敷の幽霊さんに食べられてしまったんじゃ!」

「いや、だから...」



 また自分で自分を追い詰める。もはや阿呆としか言いようがない。



「し、四包殿?海胴殿?」

「あっ、稔君!無事だったんだ。何してるの?そんなところで。」



 玄関の隅で蹲っている稔君。いったいどうしたのだろう。まさか本当に幽霊でも出たというのか?



「で、出たのでござる。幽霊が。」

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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