表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

武道会2

 気がつくと俺は医務室のベッドで寝ていた。

 武道会は終わっていた。俺は、決勝でカルロス王子に敗れた。


 準決勝のヒロインとは、何とか接戦を制すことができた。ヒロインは魔力量、コントロールともに妹の上位互換みたいだったが、戦闘慣れしていなかった。戦う者の思考が出来てない。俺が負けそうになる場面は何度もあったが、彼女は俺に大きなダメージを与えるのを恐れ、どこか控えめに戦っていた。


「マリアは意外とまともだよなぁ……。」


 前世で聞いた話、普通の人間にとって、特殊な訓練をしなければ、人に向けて銃の引き金を引くのはかなりキツイらしい。平気で人殺しできる奴も中にはいるが、そうでないほうが大半だ。

 貴族の家であれば入学前から家庭教師などについていて、魔法を人に向けるのにも慣れている。だが、平民だったヒロインは、勉強とかは読書で補えたみたいだけど、戦闘思考は身についていなかった。


「今回のマリアの戦い方で、周囲も気づいただろうし、対策はされるだろうな。」


 マリアが躊躇いを捨ててしまったら、もう勝てないかもしれない。



 続く決勝。カルロス王子はマリアとは正反対だった。


 戦闘開始と同時に、ゾワリと全身に鳥肌が立った。

 次の瞬間には巨大な炎の壁が俺に迫っていた。回避しようにもでかすぎるし、スピードも速い。


 多分、死ぬ直前の興奮で思考加速みたいにな状態になった。

 高速で迫る炎をゆっくりと眺めることが出来る。けれど、身体は全く動かない。

 炎の奥にいる王子を観察すると、魔力量が9割以上減っていた。それにギョッとした瞬間、俺の意識は刈り取られていた。


 俺は教会一の神聖術師の手で蘇生されたらしい。

 思い出すと身体がガタガタ震えてきた。

 何あの王子、こえーよ。一撃に全魔力乗せて、俺を殺す気できたよ。あんなの、死ぬよ、死んじゃうよっ!!!!



 意識が戻って暫くして、妹が見舞い?にやってきた。


「お兄様、死んでなかったのですね。」

「ああ、死んだかと思ったが、無事生きていたよ。」


 身内が大怪我したというのに、妹は無表情だ。

 まあ、傷は全て神聖術で直してもらったから、ピンピンしてるんだけど。


「小賢しい技で勝ち上がるからです。 お兄様、公爵家の嫡子として、カルロス様に必要とされていないのかもしれませんね。王子は貴方を殺す気でしたよ。」

「お前じゃ理解出来ないのかもしれないけど、王子は俺が死なないと計算して攻撃してたよ。事実、俺は生きている。あの方に限って仕留め損ねるわけがないだろ。」


 多分、王子は俺が死なないだろうと考えていたとは思う。およそであって100%ではないから、死んだら死んだときだったとも思うが……。


「王子の狙いは俺を仕留めることじゃない。周囲の心を奪うことだ。苛烈な決断が出来ることは支配者に必須。今回ので王子に畏敬の念を抱いた者も多いだろう。」


「そうですね。お兄様なんて、王子にとって生きてても死んでてもどうでもいい存在です。カルロス様の婚約者は私、カルロス様の特別は私ですから!」


……妹よ、何を言ってるんだ? 俺と張り合ってどうするよ。確かに最近俺、王子に「可愛い、可愛い」言われてたけども。


「実力も無いのに小賢しい手で勝ち上がるから痛い目をみるのです。正々堂々と戦いなさい。」

「俺は正々堂々とやったよ。それでお前は負けたんだろう?」

「あんなの! 私が今までに何度お兄様に勝ってきたかご存知でしょ? 一回勝ったくらいでいい気にならないで下さい!」

「今のままのお前じゃ、学園の上位勢には勝てない。俺にすら負けたんだ。素直に反省してみろ。魔力の大きな動きは事前に相手に次の攻撃を読まれてしまう。大技を放つだけじゃ勝てないんだ。頭を使え。」

「私が考えてないみたいに言わないで下さい! 私のほうが頭だってお兄様より良いのですから。」


 妹は怒って部屋から出て行ってしまった。


「何しに来たんだ? あいつ……。」


 嫌味言いに来ただけかよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ