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王子とヒロインと妹

 今日は始業式の次の日に行われたテストの結果が出る日だ。

 学園はテスト成績を全て張り出して公開する。

 この情報は貴族社会に広く伝わる。貴族社会は狭い、一種の村社会みたいなところもあって、誰が学園でどういう分野が苦手か得意かなどまで知れ渡ってしまうのだ。

 成績の良い生徒は将来の就職活動で有利になることもあり、テストは皆真剣に受けている。


 いつもより多少早めに登校した俺は、張り出された結果を確認した。

 自分の成績も気になるが、他の奴の点数を把握しておくことも大事だ。


「1年は……、ヒロインが1位か。いきなりすごいな。」


 実際に会って喋った時はただのぶりっ子だと思ったが、やはりチートである。

 貴族と違って家庭教師なども今までつけられていなかっただろうに。どうやって勉強してきたのやら。


「魔法とかもぶっとんで優秀設定だしなぁ。うーん、うちの妹は3位だな。」


 妹もライバルキャラとしてヒロインに近い能力がある。


「2年は、王子とアルマンが同点で1位、ヒューゴが3位、……ちょっと下がって俺は10位か。」


 Bクラスだった去年よりは上がったが、妹と同じくらいは取っておきたいな。兄の威厳を取り戻すのだ!



「おはようございます、ラヴェンナ様。先日はありがとうございました。」


 テスト結果は1階のエントランスに張り出されているから、各学年が混ざり合って見ている。その中で俺はヒロインに声を掛けられた。


「マリアちゃん、おはよう。テストすごいね、1位。」

「わあ、ありがとうございます。」


 俺が褒めるとヒロインは素直に喜んで見せた。こういうところも嫌味がない。


「あ、カルロス様だ! カルロス様、おはようございます。」


 そして、ヒロインは登校してきた王子を発見し、声をかけた。って、もう知り合ってるのかよ。色んな意味で流石ヒロインだな。


「マリアか。テスト結果、やるな。」


 王子も気さくにマリアと話している。王子、能力のある者は正当に評価してくれるタイプだからな。マリアは気に入られたかもしれない。


「カルロス様も1位じゃないですか、やりますね。」


 にこっと笑って、ヒロインはおよそ貴族では言えない言い回しを使った。


「そうだ。俺もやるだろう。」


 王子は楽しそうに笑っている。平民が面白いんだろうな。ヒロインもツボを心得てそうだし。



「カルロス様、おはようございます。成績1位なんて、流石ですわ。」


 今度は妹がやってきた。王子、ヒロイン、妹の鉢合わせか。まずいな。


「あら、そこの平民、その方は貴方の近付いて良いお方ではありません。控えなさい。」


 先日の俺の忠告など全く無視して、妹はヒロインに冷たく言い放った。


「エリカ、学園内で身分は言わなくていい。マリアは優秀だ。俺はマリアのことを評価している。」


 王子がエリカにそう言うと、周囲が静かにざわつく気配がした。

 ぽっと出の平民がいきなりテストで学年1位、その上王子に評価されたんだからな。


「王子、だまされてはいけません。平民があのような成績をとるなど有り得ません。何らかの不正が……」

「エリカ!」


 このまま妹に喋らせておくのはまずそうだ。そう判断した俺はすぐに妹の傍に駆け寄った。


「妹が失礼を申しました。王子、申し訳ございません。」


 俺は妹の頭を持って無理やり王子に向けて頭を下げさせた。


「ちょっと、お兄様、何をなさいますの!?」


 学園の校舎内では魔法の使用が禁止されている。暴れる妹を男の腕力で抑えながら王子を窺うと、


「俺は気にしていない。謝罪の相手は俺ではなくマリアだろう。」


 王子はさらっと正論だけど難度の高いことをのたまった。


「ごもっともです。マリア嬢、すまなかった。」


 そう言って、ヒロインに向けて妹の頭を下げさせようとした瞬間、


 ブワン……!


 風の魔力を腹の辺りに感じで、俺は吹き飛ばされた。

 そうだな。あの妹が魔法禁止の校則なんて気にするわけがない。


「ラヴェンナ様……!」

「ラヴェンナ!」


 倒れた俺にヒロインが駆け寄るよりも速く、王子が飛び出して俺の上半身を抱えた。


「無事か?」

「……突き飛ばされただけです。どこも怪我はしていません。」

「念のため、医務室に行こう。」


 そう言うと、王子は俺を抱えあげた。姫 抱 っ こ で ! ! !


 周囲がギョッとしてる。ぶりっ子ヒロインの顔まで素に戻っている。勘弁してくれ。


「カルロス様、何をなさっているのですか。兄の介抱なんて、貴方のなさることではありません!」


 慌てて妹が言い募るが、それを王子はひと睨みで黙らせた。


「エリカ、反省が必要だな。暫く話しかけるな。」


 王子に睨まれた妹は真っ青になり、彼が背を向けて歩き出しても追ってくることはなかった。




「……ラヴェンナ、お前、軽いな! ちゃんと飯を食ってるのか?」


 王子が俺の髪を撫でながら微笑んだ。

 もう、本当、そういうの、やめてください……。


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